“風の申し子”がグランパスに新風を巻き起こす/相馬勇紀
Column
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“風の申し子”がグランパスに新風を巻き起こす

相馬勇紀
2019.03.01

昨年8月、特別指定選手として初出場した試合でアシストを記録し、 鮮烈なJ1リーグデビューを飾った相馬勇紀選手。
2019年、新加入選手としてピッチに立つ“風の申し子”に、試合・トレーニングに対する考え方やプロへの意識、サッカー選手としての夢を聞いた。

始動日からチーム合流 プロ生活が早くもスタート

昨季は特別指定選手としての“スポット参戦”だった相馬選手だが、今季は始動日からチーム練習に参加。チームメイト達と共に練習メニューをこなすだけでなく、前後に追加トレーニングを組み込むなど、キャリアの第一歩から精力的だ。大学の卒論があるため、3月までは愛知県と東京都を往復する、プロ生活と学業の二足のわらじを履く日々を送る。

目標は10得点10アシスト そこに表れる自信と意欲

新体制発表会で目標を聞かれた相馬選手は、「数字としては10得点10アシスト」と、ハードルの高い数値を設定。得点機の演出に自信を持ちつつも、それだけではプロとして物足りなくなるという気持ちから、昨季の大学リーグではゴールを強く意識してきた。まずは今季初ゴールに注目したい。

「プロの世界は結果がすべて。試合に出ても活躍できなければ意味がない」

得意のドリブルを活かしてグランパス加入を勝ち取る

風間八宏監督の就任以降、名古屋グランパスのサッカーにはその名字にちなんで、“風”という言葉が度々用いられるようになった。「名古屋 俺らの風を起こそう」という印象的な歌詞の応援歌はその最たるものだが、さらに新たな“風”が加わった。風の申し子?。昨季、早稲田大学在学中に特別指定選手としてJ1リーグ戦9試合に出場し、1得点3アシストの記録を残した相馬勇紀選手を示す言葉だ。「昔から“韋駄天”とは呼ばれていたのですが、そういった呼び名をもらえるのは嬉しいですね。“風”はグランパスの応援歌にも使われている言葉ですし。それに見合うプレーをしなければと思います」。
チーム加入のきっかけは昨年4月、練習に参加したことから。当初は風間監督の目指すスタイルとはタイプが違いすぎるので、選ばれないだろうと考えていた相馬選手。一方で、その違いが逆に武器になるとも感じていたという。「自分のドリブルが11人の中のアクセントになる」。その読みは確信に変わり、練習試合などで結果を残すと、瞬く間に翌年の加入内定を勝ち取った。大学が夏休みに入った8月には、継続的にチームに帯同してリーグ戦にも出場。デビューとなる鹿島アントラーズ戦で1アシストを記録するなど、どん底であえいでいたチームの巻き返しに貢献。彼が出場した9試合は8勝1分と無敗であったため、「相馬が出れば負けない」という不敗神話が生まれ、救世主と呼ばれることも。チームのスタイルをすぐに理解して順応するクレバーさと、“風の申し子”の名にふさわしいプレーで、サポーター達のハートを鷲掴みにした。
相馬選手を一言で表すなら、良い意味で“貪欲”という言葉が当てはまる。その優しい顔立ちからは想像もできないほど、サッカーに対しての想いが強いのだ。両親は共にテニス選手として活躍したアスリートで、母親はインターハイ、国体で優勝するほどの実力者。そのため息子であっても見る目はシビアで、日頃から「まだまだ」だと言われ続けてきた相馬選手は、「結果を出して絶対に見返してやる」と心に誓ったという。

「活躍して試合に勝つ」 結果にこだわるプロ意識

「スタメン争いに勝って試合に出ても、活躍できなければ意味がないです。僕は常に考え方を外に向けていたい。スタメンじゃなくても、途中出場で自分が得点して勝ったならば、自分がヒーローです。そうやって、試合でどう活躍できるかを考えて、目の前の練習をやっていけるか。風間監督が求めている“止める、蹴る”などの技術も、試合に出るためではなく、活躍するためになぜそれが必要なのかをしっかり考えていきたい」と語る相馬選手。このオフシーズンは、今後のプロ生活で何をすべきか、どう時間を使うかなどを書き出し、優先順位をつけて始動の日を迎えたという。元々ルーティンを作るタイプで、起床後30分間のヨガとストレッチを1日のスタートに、練習前後の2時間はレベルアップのためのトレーニングを行い、残った時間を英会話の勉強やリラックスのために充てている。英語を学ぶのは、「将来はプレミアリーグでプレーしたい」という夢のため。ヨガは身体の柔軟性を高め、プレーの質を向上させるために重要視している習慣だ。余談だが、彼は大学の卒業論文に、「昨季後半のグランパスの得点分析」というテーマで臨んでいる。すべてに目的意識を持ち、常に何かを得ようと模索しているのだ。「満足したら、それはサッカーを辞める時だと思っています」と語るものの、決して満足などしない性格のはず。その考え方こそ、プロアスリート向きの性分であるといえよう。
相馬選手にとって幸運だったのは、特別指定選手として参加したチームに、楢崎正剛、玉田圭司、佐藤寿人といった日本サッカー界を代表する“レジェンド”がいたことだ。昨季をもってそれぞれ引退や移籍をしてしまったが、その生き様に刺激を受けたと語る。「練習に対する姿勢だけでなく、プロとしての日常のあり方にも影響を受けました」。常に見られることを意識し、身だしなみを整える大先輩たちを見習い、寝間着のようなスウェットでの外出はしなくなったという。意気込みだけのプロ意識ではなく、社会人としての自覚も強い。他愛もない話に聞こえるが、神は細部に宿るもの。相馬選手のこうした姿勢は必ずやプレーにも良い傾向で表れるはずだ。
熱意と希望が溢れるプロ1年目についても冷静に分析する。「自分のプレーはすぐに相手に分析されてしまうはず」と考え、「フリーキック等、自分の武器により磨きをかけ、突き抜けたい」と、常に先を見据えた対策を練っている。また、今季の目標に10得点、10アシストを掲げた相馬選手だが、それは単なる目安にすぎない。「出場した試合では、必ず結果をひとつ出して帰ってこようと思っています。シーズン(全34節)で34個の“何か”をしたいですね。でも10ゴール10アシストも大変なことですし、大学でも結果を出せない試合はあったので、しっかり現実と向き合いたい」。そう話す一方で、「ここで5ゴール5アシストと堅実な目標なんて口にしてたら海外なんて遠いし、例えばオリンピックでブラジルやスペイン、フランスと戦うとなった時に絶対勝てないですよ」とも語る。
昨季のデビュー戦は、豊田スタジアムの過去最高観客動員数を記録した試合であった。「その時のサポーターの皆さんの歓声が忘れられない」と語る相馬選手は、「いいサッカーをして、あれを超える歓声を聞きたい」と意気込む。これから始まる愛知県での生活については、「車を買ったらどんどん出かけたい。味噌煮込みうどんを食べてみたいし、名古屋城にも行きたいです。毎年チームで熱田神宮へ必勝祈願に行くそうなので、それも楽しみ」と、プライベートについても積極的だ。背番号は好きなナンバーである7が入った「27」。風の申し子が新体制のグランパスにどんな風を吹き込むのか、この1年を見届けたい。

Jデビューは2018年8月11日、鹿島アントラーズ戦で途中出場。
試合終了間際に前田直輝選手へのアシストを決めた。

Yuki Soma

相馬勇紀
1997年生まれ。東京都調布市出身。三菱養和SCユースの育成組織で育ち、早稲田大学に進学。2年時から定位置を掴み、FKをはじめアシスト能力の高さを武器に活躍。4年時には関東大学のリーグ戦1部でアシスト王に輝き、チームを優勝へ導いた。昨年は名古屋グランパスの特別指定選手としてリーグ戦9試合に出場し、1得点をマーク。爆発的なスピードを活かしたサイドからの突破力で3アシストも記録している。

相馬勇紀選手のここに注目!

監督やジョー選手も称賛する理解力と身体能力 from FW/ジョー

FW/ジョー
風間監督に「彼は元々理解力のある選手」とその順応性を評価され、瞬く間に戦力となった相馬選手。昨季得点王に輝いたグランパスのエース、ジョー選手も「彼はすごく“速い”選手だ」と持ち前のスピードを高く評価している。頭の回転の速さと足の速さ。2つのスピードが相馬選手の武器である。

信頼で結ばれた先輩が相馬選手の持ち味を引き出す from DF/秋山陽介

DF/秋山陽介
相馬選手は早稲田大の1年先輩である秋山陽介選手に、ピッチの内外で様々なサポートを受けているという。「彼にはもっと自由に仕掛けさせてあげたい」という想いから、秋山選手はその持ち味を理解したプレーを心掛けている。2人の息の合った連携が得点のチャンスに繋がりそうだ。

実力派の新戦力が加入 目指すはACL出場権獲得

DF/秋山陽介
2019年の新体制発表会でチームは「ACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場権を狙う」と宣言。これはJ1リーグ戦3位以内に入ることを意味し、風間監督体制3年目にして初めて明確なシーズン目標を掲げたことになる。相馬選手のほか、米本拓司選手や吉田豊選手など、実力者を揃えた補強への自信の表れとも言えよう。

取材・文=今井雄一郎
撮影=中垣聡
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