もう一つの日本一…根尾昂の知られざる『スーパースキーヤー伝説』あなたはこの努力ができるか
「うーんと…これだな」
そう言いながら、倉庫から競技用のスキー板を取り出した男性…。
「これが本当に、昂(あきら)の板です。一度も公開したことないです。こっちは小学校の時のかな…。ちゃんと名前入りです。これは本当に貴重と言うか、見ると思い出すって感じですよね」
“AKIRA.N”と書かれたスキー板の持ち主。それこそが、岐阜県飛騨市出身の根尾昂選手。打って投げて守って、大車輪の活躍で、春のセンバツでは史上初の2年連続胴上げ投手に。
最後の夏も制し、3年間で3度の「日本一」を手に入れました。そんな彼と“赤い糸”で結ばれていたのが、中日ドラゴンズ!
根尾選手:
「チームを勝利に導ける選手になるのが一番の目標なので、どのポジションを守ってもどの打席に立ってもチームの勝利に貢献できる選手になりたいと思います」
ドラフト会議で、地元・ドラゴンズから1位で指名され、「日本一」の原動力になることを期待されています。そして実は、根尾選手には過去にもう一つ「日本一」を目指したものが…。
根尾選手:
「スキーは体幹や走るトレーニングが多かったので、そこは土台になっているかなと思います」
そう、「スキー」。
幼少期から雪国・飛騨で始め、根尾選手の礎となった「スキー時代」。恩師を取材してみると、決して本人が語ることのない、根尾選手の“本当の凄さ”が見えてきました。
岐阜県郡上市。小学5年生からスキーを指導し、日本一への道をともに歩んだのが、鷲見佳祐さん。
鷲見さん:
「これは、昂が全国大会で優勝した時の写真です。根尾さん(根尾選手の父親)からのプレゼントです」
根尾選手はスキーの全国中学校大会で岐阜県初の優勝者に(アルペン回転競技)。しかもこの時、まだ中学2年生!そんな“スキー選手・根尾”の秘蔵映像が!
全国制覇を果たす直前、2015年1月に撮影された映像を見ると、素人目にもわかる、やわらかい身のこなし。赤と青の棒の間を見事にすり抜けていきます…。スキー選手としてのスタイルを聞いてみると?
鷲見さん:
「いやーもうガツガツですよ。勝負師的な。でもそうじゃなきゃ全国は勝てないです。勝負師は勝負師ですね」
そして、スキーでの経験が、ここ一番で力を発揮する“勝負強さ”を育んだと話します。
鷲見さん:
「僕はやっぱりスキーの方がプレッシャーは強いかなと。スキーっていうのは1本目1位でも2本目転んだら結局成績なし。だから1本目1位で2本目1位をとろうと思うと、凄く緊張する競技なんですね。例えば野球のピッチャーで『ここを抑えれば』というのと、スキーの『あと1本揃えれば優勝だ』っていうのは似ているのかな」
野球でみるみる頭角を現す一方、スキー界では「全くの無名」
当時は、野球とスキーの「二刀流」。
その分、他の選手よりも練習期間と練習時間が短かったという根尾選手。となるとやはり、根尾選手は「天才」なのでしょうか。しかしここで鷲見コーチから、意外な言葉が…。
鷲見さん:
「青森に全国大会行った時も、名の知られていない選手なんですね。ダークホース的な存在で『誰あれ?』みたいな感じ」
実は根尾選手、小学生時代にジュニアドラゴンズに選ばれるなど野球でみるみる頭角を現す一方、スキー界では「全くの無名」!
小学生の時はパッとせず、他の子どもたちと変わらない印象だったと鷲見コーチは話します。しかしある時、根尾選手は周りも驚くような目標を立てました。
鷲見さん:
『全国中学校スキー大会で優勝して、(スキーを)辞めるって』
スキーで全国制覇をして野球一本に絞る…。
鷲見さん:
「当時それを決めた時は“夢物語”ではないけど、『できればいいな…』ってくらいの目標だったんですけど、その目標に向かって彼は相当努力しました」
すると、練習に取り組む姿勢に、ある変化が…。
当時の根尾選手のホームゲレンデ、岐阜県郡上市にある「ひるがの高原スキー場」。
鷲見さん:
「このリフトでお父さんや僕が撮ったビデオを常に見ていた。ビデオを見ながらリフトを上がって来たんです。(Q.リフトに乗っている間も休憩とかではなく?)練習ということですよね」
さらに、当時食堂だった場所でも…。
鷲見さん:
「ごはんを食べて、ビデオを見てるっていう印象ですね。練習時間前に滑りに行ったりだとか、休憩の時間も利用していました」
もちろん根尾選手の貪欲さは、当時のチームメイトも鮮明に覚えていました。
1歳年上のチームメイト・川嶋さん:
「周りは普通にロッジのご飯を食べている中で、昂は自分でヨーグルトとかバナナとか栄養や体調を管理して持ってきていて、みんなと違うところで、一人で食べていました。私たちがお菓子とかアイスとか食べていると、『僕はそんなのは食べないです』と言われました(笑)」
道具をメンテナンスしていたスポーツショップでも…。
メンテナンスをしていた池田さん:
「『ブーツの小指の5ミリ前を出してください」とかそういう感じでした。結構的確に言うので、こっちが『わかりました』っていう感じ」
目標へトコトン突き進んだ先で手に入れた栄光…。
この一途な姿勢は、プロ野球入りを心に決めて入学した大阪桐蔭高校でも変わりませんでした。
根尾選手が目指すのは、“超一流”
練習を取材にいくと、野球部員とともに激しいウエイトトレーニングをする根尾選手の姿が。そして束の間の休息をとったかと思いきや、周りの選手が休む中、一人黙々とトレーニング…。
Q.キツかったですか?
根尾選手:
「いや、いつもやってるんで大丈夫です」
さらに、昼ご飯の時も、誰とも話すことなく一気に頬張り、誰よりも早く食事を済ませグラウンドへ。この様子に、同じくプロ野球へ進む高校の仲間たちは…。
横川凱投手(巨人ドラフト4位):
「全てを野球につなげるというか、24時間野球のことばかり考えている」
藤原恭大選手(ロッテドラフト1位):
「夜中までストレッチしたり、本読んだり、野球につながることをずっとやっているので、“違うな”とは思いました。」
柿木蓮投手(日本ハムドラフト5位):
「意識の高さは普通じゃないなと感じていました」
根尾選手の父・浩さん:
「好奇心が何に対してもある子なので、我々がどうこう言わなくても、好きなことに対しては貪欲に知識を求めたり、色んなものを見て吸収していったりしたのではないかと思います」
貪欲という言葉だけでは表現しきれない、夢物語を現実にする、根尾昂選手の“本当の凄さ”…。
いよいよ進む、プロへの道。決して甘くはない世界で、どんな活躍を見せてくれるのでしょうか。
根尾選手が目指すのは、“超一流”です。
根尾選手:
「やっぱり、続けることというか、“継続は力なり”っていう言葉が好きなんですけど、積み重ねていくことで出来なかったことが出来るようになったり、自分のしたいことが出来るようになったりとか、そういうところが自分がここまで続けてきたことだと思ってますし、そこは変わらないと思います」
(11月4日(日)午後1時24分放送 CBCテレビ『スポーツLIVE High FIVE!!』より)