「あきらめない」を原動力に 最強のチームと最強の自分に。
2017シーズン、全日本総合選手権大会で優勝、日本女子1部リーグでは総合順位3位の強豪・トヨタ自動車レッドテリアーズ。間もなく開幕するリーグ戦を前に、レッドテリアーズ打線を引っ張る若き天才スラッガー長﨑望未外野手と、力強いピッチングで打者を翻弄する期待のサウスポー田内愛絵里投手に「リーグ王者奪還」への決意、そして、日本代表への思いを聞いた。
※平成30年3月1日発行のaispo!記事を再掲しています。
「1つのプレーが結果につながることを肝に銘じ、走攻守のレベルを高めたい」
類い稀なるバッティングセンスを持った努力の天才 ―― 長﨑望未外野手
学生時代は目標に向かい ひたすら自分を追い込む
本塁打王、打点王、ベストナイン、新人賞など社会人1年目から数々のタイトルをものにし、「天才打者」と呼ばれる長﨑望未選手。ソフトボールを始めたきっかけは、小学校3年生の時に弟が所属していたソフトボールチームに参加したこと。打撃で上手く打てた時に面白いと感じ、男子に負けないように練習をしたという。持ち前の運動神経も手伝って頭角を現し、中学校では県大会で優勝、高校時代は1年生からレギュラーで出場し、インターハイ優勝に貢献した。「試合に勝つこと以外は苦しいことばかりだった」と高校時代を振り返る。「でも、ソフトボールの強豪校で実力をつけようと覚悟を決めて入学したので、3年間、頑張ることができたのだと思います」。長﨑選手を支えたのは、実業団に入るという夢だ。「中学生の頃から将来は実業団のソフトボール選手になりたいと思っていました」。だからこそ、どんなに辛い練習でも自分を追い込みながらバットを振り続けてきたのだ。
結果を出すために 選手として質を上げる
昨シーズンは首位打者のタイトルを取れなかったのが心残りだと、長﨑選手は話す。「残り3試合で、あと少し多めに打てたらよかったのですが、意識しすぎて焦る気持ちが空回りしてしまいました」。日本リーグでのチーム戦績も決勝トーナメントで敗れ、総合順位は3位に終わった。「粘り強さがなく、最後の1本が出なかった。今シーズンは、チームの強みである“あきらめない気持ち”をもっと出していけたらと思います」。
個人ではベストナインと20打点以上が目標だ。「とにかく個人タイトルを獲得して結果を残したい。そのためには自分自身の選手としての質を上げることが大切だと思っています」。
東京五輪を目指してブレずに努力する
2014年からは日本代表として活躍、昨年8月に行われたジャパンカップ2017では持ち前の積極的なプレーで日本の優勝に一役買った。そんな長﨑選手が見据えるのは、2年後の東京五輪だ。チームの中心選手としての活躍も期待される。「五輪の代表選手に残れるように、自分自身ブレない心で2年間頑張るつもりです」と意気込みを見せる。
「誰もが常に絶好調でプレーができるわけではありません。でも、上手くいかない時にも意味はあると思います。先の目標を信じて、常に自分を客観的に振り返りながら頑張っていくことが大切です」と強い気持ちで前を向き続ける長﨑選手。
「どんなに辛くても決してあきらめず、続けていくことが、目標への一番の近道だと信じています」と夢の大舞台での快打を目標に、ひたむきな姿勢で練習に励み続けている。
「チームを牽引するピッチャーとして自分を高めていきたい」
豪快な速球で打者を圧倒する辣腕サウスポー ―― 田内愛絵里投手
プレッシャーの中で 前向きな気持ちに
日本代表の投手の中でも数少ないサウスポーとして注目を集める田内愛絵里選手。投手としては小柄ながら、ダイナミックなフォームから生まれるキレのいい速球で、並みいる強打者を打ち取り、2016年に新人賞を獲得。日本代表にも選ばれた期待の投手だ。ソフトボールを始めたきっかけは、小学校1年で入ったソフトボールチーム。「強いチームで頑張りたい」と、地元・広島県の強豪中学校へと進学し、全国中学校体育大会でエースとして奮闘。高校は、岡山県にあるソフトボールの強豪校の創志学園高校に入学した。1年生でインターハイ優勝を経験。「先輩たちが積み重ねてきた成果に自分も力を添えることができて、嬉し涙が出るくらい感動しました」と振り返る。反対に2年生の春の選抜大会では、先輩がいなくなったプレッシャーに押し潰されそうになったことも。「全責任を背負う苦しさと、そうした精神状態で勝つことの難しさを改めて感じました。でも、仲間たちに助けられ、前を向いてこれまで頑張ってこられたのだと実感しています」。
さらなるレベルアップを図り チームの顔となる投手に
田内選手は昨シーズンを、自分自身あまり成長ができなかった1年だったと振り返る。「新人だった1年目と気持ちの面でも技術の面でも何ら変わることがなく、そのままシーズンに入ってしまった。チームの戦力になることができなかったと反省しています」。決勝トーナメントでは試合に出場できなかったが、その分チーム全体を盛り上げようと声を出した。「相手に押されていても最後まであきらめずに戦う姿勢を見せる、それがこのチームの強みだと思います。私も決してあきらめずに最後まで投げられるピッチャーになりたいです」。
今シーズンは自分が中心となってチームを引っ張っていかなくてはいけない。もう今までのような甘えは通用しないと自分に言い聞かせる。「チームの顔となるピッチャーとして、自分がみんなを引っ張っていけるようになりたい。これまで以上にトレーニングメニューを増やして体づくりに励み、レベルアップを図りたいと思います」。
マウンドに立つだけで オーラを放つ投手に
田内選手が目標にする人は、ソフトボールの投手なら誰もが憧れる上野由岐子選手(ビックカメラ高崎)。アテネ五輪では銅メダル、北京五輪では金メダルに輝いた女子ソフトボール日本代表のエースだ。「小学校4年の時に北京五輪で投げる上野選手の姿を見て、自分も絶対、オリンピックに出たいと思いました」と田内選手。その上野選手と、昨シーズンは同じ日本代表のチームメイトとして海外のチームと対戦。一緒にプレーをして、改めてその存在感に圧倒されたという。「私もマウンドに立つだけでオーラを放つ、上野選手のような投手になることが目標です」。可能性が無限大の田内選手に大いに期待したい。
取材・文=小山芳恵
撮影=江崎浩司
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