世界最高峰での経験を名古屋、そして日本の強さに/吉川智貴(フットサル)
Column
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世界最高峰での経験を名古屋、そして日本の強さに

吉川 智貴(名古屋オーシャンズ)
2018.05.07

スペインリーグでの2年間で、その名を世界に知らしめた「YOSHIKAWA」が、オーシャンズに帰ってきた。失われた王座、そしてプライドを取り戻すために。世界最高峰の舞台で鍛えられ、輝きを増したトラバハドールは、オーシャンズを、日本を、更なる高みへと導いていく。
※トラバハドールとは、スペイン語で「働き者」を意味する。フットサルでは、チームのために攻守で走りまわる選手のこと。

※平成29年12月1日発行のaispo!記事を再掲しています。

強いオーシャンズを取り戻すために
帰ってきた〝精神的支柱〟

Fリーグ創設から9年間、頂点に君臨し続けてきた絶対王者は、10連覇が懸かった昨季、ついにその座を譲った。「Fリーグ唯一のプロクラブとして、これ以上、優勝を逃すことがあってはならない。オーシャンズはフットサル人生で最も自分を成長させてくれたチーム。そのチームが勝てない姿を見るのは本当に辛かった。『自分がやらなきゃ、誰がやるんだ』という強い思いで戻ってきました」。世界最高峰のスペインリーグで充実の2シーズンを過ごした吉川智貴選手は、オーシャンズ復帰の理由をそう説明した。

ベテラン選手の引退などにより、世代交代を図った昨季のオーシャンズは、拮抗した試合で勝ちきれない“自信のなさ”が目立った。黄金時代を知る吉川選手に期待されるのは、プレーでの貢献だけでなく、チームの精神的支柱となり、“王者の真髄”を若手に伝える役割だ。

「今年は自分も含め、経験のある選手が増えたので、昨年、若手が担わなければならなかった責任が分散されて、比較的楽にプレーができていると思います。チームとしても良い成長段階にあり、皆が自信を持ってプレーできています」。

勝者のメンタリティを取り戻しつつあるチームに頼もしさを感じながらも、「まだまだ以前のようなオーシャンズの強さはない。もっともっと成長しなければならない」と満足することはない。吉川選手が目指すのは、王座奪還の先にある、最強のオーシャンズを作り上げることだ。

ワールドカップに向かって走り続ける

スペインが強い理由を体感した2年間

吉川選手は2015年7月、スペイン1部リーグのマグナ・グルペア(パンプローナ)にレンタル移籍。日本代表としてスペインリーグのクラブと試合をした経験から、「『ある程度は通用するだろう』という感覚はあったが、対戦するのと実際にチームに入ってやるのでは全く違った」。プレーの強度やスピード感の違いに当初は圧倒されたが、高いインテリジェンスでほどなく適応。1シーズン目から、ディフェンスと運動量で、チームの躍進に大きく貢献した。2016-17シーズンには、クラブ史上初となる国王杯の決勝の舞台にもチームを導いた。

「国王杯の決勝は、車で3時間位の中立地で行われたのですが、それでも2000人くらいのホームサポーターが駆けつけてくれました。半分が僕たちのチームカラーの緑、もう半分が相手チームの赤で染まった観客席を見て、選手として初めて鳥肌が立ちました」と記憶を呼び覚ましながら目を輝かせる。

スペインでの2シーズンを振り返り、「スペインが強い理由がよく分かりました」と語る吉川選手。「ホームゲームでも、ダメなプレーをしたら野次が飛んでくる。逆に良いプレーをしたらめちゃくちゃ褒めてくれるので、やりがいがありますね。本当の意味で厳しい世界だと感じました。観客も、チームメイトも、『お前はここがダメだ』とはっきり言います。周りが選手を育てる環境が整っていると感じました」。スペインに根付くフットサル文化は強く心に刻まれた。

ワールドカップに向かって走り続ける

フットサルワールドカップ2020を
地元・愛知でできることは選手としてこの上ない幸せ

取材の翌日(10月25日)、「AFCフットサル選手権2018 東地区予選」に出場するフットサル日本代表メンバーが発表され、吉川選手もリストに名を連ねた。「日の丸を背負って戦える幸せや充実感を身にしみて分かっているからこそ、代表でいることにこだわりたい。どんな合宿も大会も、自分がそこにいたいという気持ちを、強く持っています」。

昨年、コロンビアで開催されたワールドカップへの出場権を逃し、ブルーノ・ガルシア監督のもと、2020年に向けてスタートを切ったフットサル日本代表。吉川選手がブルーノ・ジャパンに選出されるのは今回で3度目だ。新たなスペイン人指揮官について、「日本人に合っている、本当にいい監督。求めることがとてもはっきりしているので、選手が迷うことがない。規律のある、とても良いチームになると思います」と信頼を寄せる。

愛知県が2020年の招致を目指すフットサルワールドカップの開催が決まれば、移動などによる選手への負担が軽減されるだけでなく、日本のフットサル文化を育む大きな一歩となるはずだ。「地元の愛知でW杯を開催できることになれば、選手としてはこの上ない幸せ。ぜひ愛知で開催してほしいですね」と吉川選手も吉報が届くのを心待ちにしている。

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Tomoki Yoshikawa

名古屋オーシャンズ

姫野和樹
1989年2月3日生まれ、滋賀県出身。ポジションはアラ。フットサル日本代表。2009年にバサジィ大分よりFリーグデビューし、2012年から名古屋オーシャンズに加入。2013、2014年と2シーズンの間、キャプテンを務め、数々のタイトル獲得に貢献。2015年から、2シーズンをスペイン1部リーグのマグナ・グルペアでプレーし、日本人で初めて国王杯決勝の舞台を経験した。今季より名古屋オーシャンズに復帰。

取材・文=山田智子
撮影=中垣聡(branch)
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