島根県邑南町「天空の駅」が土木遺産に
朝日新聞などが報じたところによると、「天空の駅」として知られる島根県邑南町の旧JR三江線宇都井駅の高架橋が、公益社団法人土木学会の「選奨土木遺産」に認定されました。11月3日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、光山雄一朗アナウンサーがこのニュースについて、邑南町のNPO法人・江の川鐵道の森田一平さんに伺います。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く『天空の駅』とは?
邑南町は、中国地方の真ん中あたりに位置する人口1万人くらいの町で、近くには中国地方最大の川・江の川が流れています。
ここに「天空の駅」と呼ばれた、旧・宇都井駅があります。
森田さん「1975年(昭和50年)に開業した駅ですが、地上から高さ20mのところに、宇都井高架橋という橋の上にホームがあります。そのホームに行くのに、116段の階段を上らなくてはいけません。
両側が山で谷のような地形になっていて、その高架橋の両側はトンネルです。谷の真ん中に駅があるので、橋の真ん中に階段室が設置されていて、116段の階段を上ります」
かつては人気の秘境駅
なぜ地上20mという高い場所に駅が作られたのでしょうか?
森田さん「江の川という大きな川に沿って走っていますので、洪水の心配、がけ崩れの心配のないところに線路をつくろうとした結果、ここが一番安全となって駅が高くなったということです」
エレベーターはなく、「絶対に登らないといけない」と森田さん。
旧ということは、現在は駅として機能してないのでしょうか?
森田さん「そうです。島根県の江津市と広島県の三好市を結ぶ三江線というJRの路線がありましたが、2018年(平成30年)に廃線になりました。
開業当時は日本一高いところにある駅として有名になり、『秘境駅』として10指に数えられるほど有名でした」
INAKAイルミでライトアップ
2018年の廃線後、この「天空の駅」と呼ばれている珍しい駅は、地元の声で邑南町がJRから譲渡を受け、現在は三江線鉄道公園として開放されています。
森田さん「今年も11月22日・23日に「INAKAイルミ」というイベントが開催され、宇都井駅をライトアップしたり、周辺の集落をライトアップするイベントをボランティアの方も来られてやっています。
私たちNPO法人江の川鐵道は地元住民、町外の鉄道ファンと一緒にNPO法人を設立して、ここに小さなトロッコを走らせるプロジェクトをやっていまして、今日も11時からトロッコを運行する予定にしています。
116段の階段を上ってもらって、トロッコに乗って、トンネルを走ったり、橋を渡ったりというコースを今もできるようになっています」
乗るときは隣の駅から
森田さんご自身は宇都井駅を使われていたのでしょうか?
森田さん「私が小学校2年生のときにここが全線開通をして、そのあと私は乗り鉄になったのですが(笑)、たぶんこの駅の思い出が私を鉄道ファンにしたのかなと思います。
実は階段をあがらないといけないので、私が乗るときは隣の駅から乗っていました。おじいちゃん、おばあちゃんが多く階段が大変なので、車で隣の駅に送ってもらっていました」
残すべき土木インフラ
旧・宇都井駅の高架橋が認定された選奨土木遺産とはどういったものでしょうか?
森田さん「日本土木学会というかなり大きな研究者の団体があり、こちらの団体の中で建築後50年以上経過した後世に残すべき土木インフラ、橋、トンネル、堤防、そういった先人たちが工夫をして作った土木インフラを後世に残していこうという趣旨で毎年選出されている遺産です」
旧・宇都井駅の高架橋にはどんな特徴がありますか?
森田さん「駅は20mの高さがあるという駅で山間で、当時としてはとてもスマートなデザインです。さらに180mの長さでラーメン構造という橋脚と橋桁が一体になった構造です。これで強度が増します」
旧・宇都井駅へのアクセスは、公共交通なら新幹線で広島下車、JR芸備線に乗り換えて三次駅で下車。三次駅からはバスがあるそうです。
(みず)
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