マダイが安く、サケが高級に?漁獲量からみる海の変化
毎週土曜日のCBCラジオ『石塚元章 ニュースマン!!』では、東日本大震災の復興を願って「絆プロジェクト~気仙沼レポート~」に取り組んでいます。2011年に番組で気仙沼市を訪ねてから地域との交流が続いており、番組内のコーナーではラヂオ気仙沼(ぎょっとエフエム)のパーソナリティ西城淳さんが、気仙沼の情報を発信しています。1月18日の放送では、気仙沼市の漁協魚市場に水揚げされた魚種別のランキングを紹介しました。聞き手はCBC論説室の石塚元章特別解説委員と加藤愛です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くカツオの街、気仙沼
水揚げ量の調査を行ったのは、気仙沼市の魚市場を経営している気仙沼漁業協同組合、通称漁協。市の基幹産業でもある水産業の中心的役割を担っています。
西城「1位はなんといってもダントツでカツオなんですね」
漁獲量、売上高の両方の50%以上を占めるというカツオ。実は気仙沼港は、カツオの水揚げ量において28年連続で日本一に輝いているのです。
全国各地の魚の水揚げなどを調査している一般社団法人「漁業情報サービスセンター」によると、今年度気仙沼港で水揚げされた量は3万2,368トンと前年のおよそ1.4倍に増え、3年ぶりに3万トンを超えたとのこと。
これは2位の千葉県勝浦港のおよそ6.3倍となっており、圧倒的な水揚げ量を誇っているといえます。
また水揚げ高は100億3,400万円あまりで、東日本大震災以降で初めて100億円を超えたそうです。
江戸から続くサメ文化
西城「続いてイワシが2位、サメが3位。ヨシキリザメやモウカザメですね。そしてビンナガマグロです」
実は気仙沼港は、サメの水揚げ量でも日本一。近海マグロやメカジキを狙う延縄漁業が盛んなのですが、サメの生息域がそれらと似ておりまた同じ餌を食べるため、同様に漁獲してきたのだそう。
フカヒレの製造も江戸時代末ごろから始まっており、古い歴史があります。フカヒレを天日干しする風景は、気仙沼を代表する冬の風物詩。
またサメ肉を利用した「ちくわ」や「かまぼこ」などの製造も盛んで、地元の学校給食ではサメ肉を揚げた「シャークナゲット」が登場するなど、地域に根付いた文化として発展してきたと言えます。
温かくなる海
ところが近年、水揚げされる魚の種類が変化してきたのだそう。
西城「例えば5年前には非常に稀有だったケンサキイカが今年は33トンも揚がっていたり、同じく5年前には4トンしか揚がっていなかったマダイも10倍近くになっていたり」
石塚「いきなり40トンですか?」
高級魚の代表格であるマダイは、主に福岡県や長崎県、愛媛県などの温かい海で漁獲されています。ところがここ数年で気仙沼港でのマダイ漁獲量は急激に増えており、市内の鮮魚店ではマダイの刺身用切り身が100グラム当たり300円前後で販売されるほど、流通するようになってきています。
西城「他にもタチウオやコウイカ、アイゴなど、どちらかと言えば南方に住んでいる魚がどんどん揚がるようになってきているんです。海水温の上昇がかなり影響していることがわかるランキングになっています」
海の様子が大きく変わってきていることを感じます。
希少になってしまった魚も
しかし変化はそれだけではなかったようです。
石塚「逆に捕れてたものが捕れなくなってくる、みたいなことも起きてくるんでしょうね」
西城「そうですね。やっぱり捕れなくなってきているのはサンマ。あとはサケが全然戻ってきてくれなくなってます」
石塚「どこか他に行っちゃってるんでしょうか?」
西城「他に行っちゃってるか、来る前にどこかで捕られちゃってるか」
気仙沼市ではサケの放流も行なっているそうですが、自然に戻ってくるサケの量だけでは放流まで手が回らず、他の地域から卵をもらって放流するという作業を行なっているのだとか。
それでも漁獲量は毎年どんどん減ってきているという状況で、地元の漁師の中にはサケ漁を辞めざるを得なくなっている人も少なくないようです。
石塚「わざわざ卵を手に入れて育てて放流してるのに戻ってこないんだったら、一体何のために放流してるんだって話になっちゃいますよね」
サケが戻ってこない原因のうちのひとつには、海水温の上昇も指摘されています。海へ下った稚魚が十分に成長できず、死滅している可能性もあるとのこと。
地域で長年続けてきたサケ漁という伝統を守るため、関係者たちは打開の道を模索しているようです。
(吉村)