名古屋で神出鬼没 街中でニワトリを散歩させる男性 涙の真相は
SNS上では、名古屋の中心部の新栄エリアで不思議な噂が流れていました。
(SNSの書き込み)
「なぜか、新栄町の交差点にニワトリがいます」
「新栄の大きい交差点でニワトリ散歩させてるおじさんがいた」
さらに、新栄のコンビニ前で撮影された黒いニワトリの姿まで投稿されていました。
特に目撃情報が多い交差点付近に行ってみると、ニワトリを散歩させる謎の男性がいました。この不思議な光景を動画に撮る男性や、声をかける女性の姿が。
謎の男性は、コンビニに入る前、ニワトリに「待て」と声をかけて入店。ニワトリも大人しく待っています。
(通りかかった女性)
「ちゃんとお利口に待ってるみたいだね」
男性が通った道沿いの飲食店で働く女性も最初は驚いたものの、周辺を散歩している光景をよく見かけると話します。
この辺りでは知られた存在なのか、コンビニの前でタバコを吸う男性は隣にニワトリがいる嘘のようなシチュエーションでも気にする様子すらありません。
ペットとして雌鶏を飼育
ニワトリを連れて小さな公園に入っていった男性は、近藤功久さん58歳。このニワトリは3年ほど前に養鶏場で譲ってもらい、ヒヨコの頃から育てています。天気の良い日はほぼ毎日、散歩させるのが日課です。
3歳の雌鶏の名前は“きなこ”。「岡崎おうはん」と呼ばれる愛知県で品種改良されたニワトリで、肉も卵も美味しいのが特徴です。
(近藤さん)
「意外とニワトリは、世間のイメージとは違って賢いんです。しっかり仕込めば、よく懐きますよ」
あくまでもペットとして、きなこを飼育していました。
近藤さんはずっと独身で、今は名古屋市内のワンルームマンションできなこと一緒に暮らしています。散歩中にコンビニで買っていたのは、きなこにエサとして与えるための白菜。細かく刻み、ニワトリ用のエサに混ぜて食べさせています。
この日の近藤さんの夕食は、きなこが産んだ卵で作ったオムレツ。だいたい1日に1個のペースで生むため、卵はタダ。そのため、食費は1食100円ほどです。本来、岡崎おうはんの卵は高級なため、おいしいと言います。
ニワトリを飼うようになった理由
近藤さんは以前、名古屋市内で飲食店を経営していましたが今は仕事ができず、ギリギリの生活。その理由は体調でした。
翌日、近藤さんが向かったのは病院。2017年にステージ4の大腸がんが見つかり、当初は余命3年と言われていました。手術で大腸と直腸のほとんどを失い、さらに2020年には腎臓にもがんが見つかって、現在も月に1回、がんの治療と定期検査を受けているのです。
病院からの帰り道、ニワトリのきなこを飼った理由を聞きました。
(近藤さん)
「僕より長生きするような生き物を飼っていたら、自分が死んだ後の面倒を見てくれる人がいない。だから自分が5年生きられるとしたら、5年くらいの寿命のものを飼ったらちょうどいいかなと。今では支えに近いですからね」
きなこがいるからこそ、頑張って生きなければいけないと考えていました。
きなこのために頑張って踏ん張りたい
近藤さんは仕事を辞めて以降、引きこもりのような状態で人と関わることがあまりありませんでした。きなこを飼ったことで物珍しさから声をかけてくれる人が現れ、病気の不安が紛れて、いつしか大切な心の支えとなっていたと涙ぐみます。今ではきなこの成長が生きる糧です。
(近藤さん)
「いま、(僕が)死んでしまうと、うちの子がどうなるのかという話なので。うちの子が生きている間は、何とか自分も踏ん張ろうかと」
“きなこがいるからこそ人と関われる”と話す近藤さんにとって、きなこが特別な存在であることがひしひしと伝わってきます。都会の真ん中にいたニワトリとおじさんは、深い絆で結ばれていました。
CBCテレビ「チャント!」6月9日の放送より。