根尾はどこへ?与田ドラゴンズに直言「きらり輝く若竜の起用を!」
重苦しい戦いが続く中日ドラゴンズ。開幕からちょうど1か月たったが、ここまで26試合で8勝14敗4分、借金「6」で5位に低迷している。チーム全体のホームラン数8本も大いに気になるが、まだ1ケタしか勝ち星がないことにファンとしてあらためてショックを受ける。(数字は2021年4月26日現在)
変わらぬスタメンに変化を!
最も気になることは、このところのスタメンの顔ぶれだ。前年までのメンバーにほぼ戻ってしまっている。2021年シーズン初め、与田剛監督は「競争」と口にして、その言葉通り、開幕1軍に3年目の根尾昂選手ら5人の若手を抜擢した。いずれも初の開幕ベンチ、新鮮だった。与田監督は「結果が出なくても失敗ではない」と積極的な起用について抱負を語っていた。前年2020年シーズンは8年ぶりのAクラスになったが、前回の当コラムでも書いたように、球団創設85周年の2021年、目標はあくまでも「優勝」であるはず。Aクラスになったこれまでと同じ顔ぶれで頂点に立てるほどペナントレースは甘くない。それでも打てればいい、しかし打てないのなら、何かを変えなければならない。3位になった現有戦力をベースに、そこに勢いを与えるのは“新しい力”である。
高松“神走塁”また見たい
“若い力”は確かに芽吹き、躍動し始めている。象徴的なのは高松渡選手の“足”だろう。2020年のチーム盗塁数33、優勝した讀賣ジャイアンツと阪神タイガースの80に遠く及ばなかった反省から、今季は「機動力」をテーマに、春季キャンプから積極的に走る野球をめざしてきた。4月22日に横浜スタジアムで魅せた高松選手の本塁突入の“走”は、明らかに新時代のドラゴンズを予感させるものだった。この激走をベースコーチとして見守った荒木雅博と英智の両コーチの現役時代をも彷彿とさせた。しかし続く神宮球場での3試合、高松選手の出番は一度もなかった。残念である。
チームを変える根尾の魅力
これは根尾昂選手にも当てはまる。時おり見せるフォームを大きく崩した三振は、ファン目線からも「まだまだ」と思う。しかし、ここまでの勝利8つの内、本拠地バンテリンドームでのヒーローインタビューに2度立っているのは根尾選手だけである。打率は1割台でも、ここというチャンスにきちんと結果を出している。そして、1本のヒットで球場全体の空気を変えることができる選手である。外野の守備では再三の好プレーで投手を救ってきた。根尾選手が活躍するとスポーツニュースでも全国版として扱われる。ドラゴンズにとって待望久しい“全国区のスター選手”である。チームに勢いをつける存在である。
三重殺!土田のセンスに驚く
2軍にも光を放っている若竜がいる。ドラフト3位ルーキー土田龍空(りゅうく)選手のトリプルプレーには魅せられた。4月16日ナゴヤ球場での試合、ショートを守っていた土田選手は、無死1、2塁で三遊間のハーフライナーをスライディングキャッチすると間髪入れずに2塁へ送球しランナー封殺、ボールは1塁に送られて珍しい三重殺となった。捕ってから投げるまでのスピードは、まさに守備のセンス。打撃でも非凡なものを見せている土田選手は12月生まれ、シーズン中は18歳で過ごす。まだまだ未完成というものの、勢いのある旬な時に、ファンとしては一度1軍で見てみたい選手である。
2軍戦スタメンの魅力とは?
「ウエスタンのスタメンの方が魅力的」、これは周囲のドラゴンズファンが口にしている言葉である。この厳しい声は与田監督はじめ1軍首脳陣にも届いているだろうか。週末にナゴヤ球場で行われたウエスタンリーグの3連戦は、新外国人のマイク・ガーバー選手、育成のルーク・ワカマツ選手を筆頭に、4番には石川昂弥選手が座り、開幕1軍だった岡林勇希選手もスタメンに名を連ねた。土田選手もショートを守った。球場へ足を運んだファンはそこに竜の未来を見ると共に、若さと勢いを目の当たりにした。
佐藤輝明選手や栗林良吏投手ら大活躍する他球団の若き選手たちを横目に見ながら、どうか若竜の“旬”をうまく1軍の試合で活かしてほしいと願う。かつて2度にわたってドラゴンズを率いた“闘将”星野仙一監督は、それが実にうまかった。さらに昭和時代をさかのぼれば、水原茂や与那嶺要といった監督たちも、我慢強く若手を使い続けた。最も良き見本は、実は85年の球団史の中に沢山ある。
新型コロナウイルスの影響で、ゴールデンウイークに再び無観客試合が増えるなど、ファンにとっては応援が制限される日々が続く。だからこそ、球場に行けない竜党のためにも、悶々とした暗雲を吹き飛ばす、胸躍る戦いを見せてほしい。ワクワクしたい。ストレスが増える試合だけはどうかご勘弁いただきたい。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】