ドラゴンズ大島洋平、最多安打・GG受賞の裏にあった「当たり前の強さ」
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
ストーブリーグの華、FAでの去就が次々決まっていく中、ドラゴンズは一人の大きな戦力の獲得に成功した。それは大島洋平選手の残留によってである。心の片隅では、地元出身の選手なので、残留してくれるんじゃないかなと思いつつも、FAの可能性がある以上落ち着かない気持ちで見守っていた。
CBCラジオ「ドラ魂KING」では、首脳陣が変わり、走塁に関する方針が選手と首脳陣の間でまだ完璧に一致していないところに一つ理由があるのではないかと挙げられていた。FAを取得する選手は長く第一線で球団にいるため、時には批判的な思いを持つこともあるだろう。FAを契機として、球団との話し合いの中で、そんな思いが少しでも解消されればいいと感じる。残留を決めた大島選手がそうであると信じて、さらにチームと一体となって戦えることで補強されたと言えるような活躍を期待したい。そんな気持ちも込めて大島選手の特集を振り返る。
2019年が勝負の年
2018年のこの時期から『2019年が勝負の年』と決めていたという。
新監督、契約最終年、プロ10年目にとにかく結果を出すことを目標としていた。
10の質問の中で、『最多安打のタイトルは盗塁王より嬉しい → ○』と答えていた大島選手。
セ・リーグ最多安打のタイトルを獲得したときの気持ちについてこう話した。
「どっちかというとよくやったより、ホッとしたという気持ちのほうが強い。」
大島選手は、ファンからもチームからも当たり前とされるレベルの高い期待を受け、1,2試合打てないとどこか悪いのかと周りにに聞かれるという状態で戦っている。当たり前を求められるというのは、チームにとって欠かすことのできない存在であるし、チームの成長の頑健な基礎となる存在なのだ。大島選手の安定した打撃を活かして、打てるドラゴンズは育ってきているはず。来シーズンはさらに質の高い融合を見てみたい。
1番打者の矜持と3番打者の意外なメリット
今シーズンは、3番打者として試合に出ることが多かった大島選手は打順についてこう語る。
「1番か3番どっちを打ちたい?と言われたら、1番がいいです。チームで一番最初に打席に入るので、自分が変な形でアウトになったら相手ピッチャーを乗せてしまう。けれど自分がいい形で出塁すると、向こうのピッチャーもアレ?って思わせることができる。そこでチームに勢いを与えることができる。」
大島選手はドラゴンズの1番バッターとしての役割を果たすことの面白さを強く感じているのだろう。試合の中でも1番スタメンで入る時のほうがよりアグレッシブに攻撃を仕掛けているように映る。そんな大島選手が試合でより多く経験した3番打者のタイプと意外なメリットについて考察した。
「1番のような役割もあれば、2番のようなつなぐ役割もある。ランナーがいるときは点を取るバッティング。(状況に応じて)なんでもできるタイプが3番かなと思う。
また、1番で出塁すると、ノーアウト一塁のケースが多い。ノーアウトからの盗塁はアウトになるともったいない。2アウトなら最悪自分がアウトになるだけ。」
考察する通り、以下のような数字となっている。
1番打者の場合 31試合4盗塁(企図数4)
3番打者の場合 73試合22盗塁(企図数28)
とそれぞれの出場試合数からみてもその差は歴然だ。そして面白いのは数は少ないものの1番で出塁したときには100%の成功率となっている。インタビューで話す通り、チームの流れを切らないように盗塁をするとなったときは職人のような意識でやっているのではないだろうか。京田選手も脚の速さを生かせるので、展開によってはより高度な盗塁を絡めた作戦もうてるようになるのかもしれない。そんな職人技のような繊細なプレーにも注目していきたい。
「いかに普通に捕るか」2年連続ゴールデングラブ受賞の守備の極意
2年連続7度目のゴールデングラブ賞を受賞。広い守備範囲を持ちながらも、2年連続で守備率10割を記録するその守備についてこう話す。
「意外に球に飛びついたりしないんですよ。飛び込まずに、いかに普通に取るか。投手が ”打たれた” と思う打球を普通に捕る。(相手バッターから) ”なんでそこにいるの?” と思われるようなタイプ」
打たれた瞬間にやられたと思った打球を難なくキャッチし、『残念、そこは大島!』と言われる華麗なファインプレーの裏側に、大島選手としての普通を徹底して高めていく姿勢がある。派手さとは一味違う深みのある安定感でこれからもチームの守備の要となってくれるだろう。
打撃でも守備でも脂の乗っているいい時期から、ベテランへとキャリアを重ねる大島選手は準備することについてこう語る。
「結構年齢を感じる部分はあるが、マックスのものは変わらないしっかり準備をすればマックスに届く。」
しっかり自分の状態を把握してコントロールできるのが大島選手の強みであろう。その上で、自分の中心軸を作ることをテーマとしている。野球はひねる動作が多くなるスポーツで、横から見ても軸がブレずに立つことを自然とできるようにすることを目標にしている。そう言った質の高い当たり前を欠かさないことでファンからもチームからも揺るぎない信頼を寄せられているのだろう。
他球団選手からも超人気の大島塾!その魅力とは?
大島選手は、 ”自分が先輩から受け継いだものを後輩に伝えないといけない” という気持ちでやっている。その気持ちは、毎年行われる自主トレで大いに発揮されている。毎年大島選手の自主トレに参加する高橋周平選手に対してはそんな思いも一段と強いのではないだろうか。これまでと高橋選手の今年の活躍について顔を綻ばせながらこう話した。
「モノになるまで3年かかりました(笑) 『いまわからなくてもいい』と思っていた『いずれわかる時が来る』と思って散々言ってきたけど、ようやく自分が言ってきたことがわかるようになってきた。キャプテンもやらせてもらって自覚も出てきた。 ”そろそろ自分で(自主トレも)やったら?” と言ったら、 ”なんでそんな寂しいこと言うんですか!” って言って今年も一緒に自主トレをやるらしいです。」
昨シーズンのオフに行われた自主トレには、ジャイアンツの小林誠司捕手はじめ6球団10人もの選手が参加したという。充実した設備ももちろんあるが、安定した成績を残すことのできるストイックなトレーニングに学ぶことは多いのだろう。そして、今年シーズン途中のトレードでバファローズに移籍した松井佑介選手に「来年また、ニッセイで一緒にトレーニングしようなって。そのために、お互い長く現役で頑張らないと!」と声がけをするなど、先輩として一生ついて行きたくなるような人間性も持っている。今年大きな結果を出した高橋選手のように、またここから成績を伸ばす選手にも注目したい。大島選手がもたらすものはチームに今一番大きな影響を与えるだろう、だからこそ脅かすような外野のライバルが現れて、新しい刺激とともに大島選手とチームが切磋琢磨していくことを期待したい!
澤村桃