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竜の本拠地「バンテリンドーム」始動!実は先駆けた沖縄と日米ネーミングライツの比較

竜の本拠地「バンテリンドーム」始動!実は先駆けた沖縄と日米ネーミングライツの比較

長年親しまれてきた名前が変わる時、それは何か新しいものが生まれる予感を伴う。中日ドラゴンズの本拠地球場が、2021年「バンテリンドーム ナゴヤ」として歩み出した。オープン戦でいよいよ本格始動する。

ドラゴンズの新たな激闘の舞台に

ナゴヤドームのネーミングライツ(命名権)を取得したのは、名古屋に本社のある医薬品メーカー「興和」である。2025年まで5年間、ナゴヤドームは「バンテリンドーム ナゴヤ」という新たな名前を得て新たなスタートを切った。
ナゴヤドームは1997年3月にオープン、その開幕戦でトップバッターの立浪和義選手が先頭打者ホームランを打つ。この華々しい“ナゴヤドーム第1号”から歴史は始まり、落合博満監督が率いた黄金時代では頂点とも言える2007年の53年ぶり日本一の瞬間など、竜の数々の激闘の舞台になった。開場25年目を迎え、その名前を変えて新しい歴史を刻み始めることになる。

ネーミングライツの歴史

『pixabay』より味の素スタジアム

ネーミングライツは、公共施設の名前にスポンサーとなった企業の会社名や商品名を付ける権利のことである。「命名権」と呼ばれ、言わばスポンサーがその施設の名前を買うことである。今回は株式会社ナゴヤドームから興和株式会社への付与となる。
施設を所有する側にとっては、財政を確保する方法でもあり、一方のスポンサー企業にとっては、来場者に対して自社名をPRする機会が増え、そこから自社ブランドや商品のイメージ向上につながるメリットがある。
日本におけるネーミングライツは、20年近く前の2003年に「東京スタジアム」が「味の素スタジアム」に変更されたことが最初である。今ではサッカーJリーグのFC東京や東京ヴェルディの本拠地スタジアムとして、その名前もすっかり定着した。ネーミングライツの波は全国に広がった。

沖縄ではすでに命名権が始動

オキハム読谷平和の森球場

実は、ドラゴンズに縁のある野球場のネーミングライツは、すでにキャンプ地である沖縄県で先行していた。2軍のキャンプ地である読谷村の球場は、2019年に沖縄ハム総合食品株式会社が命名権を取得し、「オキハム読谷平和の森球場」となった。年間200万円の契約額。2年目を迎えたキャンプでは、石川昂弥選手やドラフト1位ルーキー高橋宏斗投手ら若竜たちが、シーズンに向けて汗を流した。
そして1軍キャンプ地である北谷町でも、海風が爽やかな北谷公園にある7つの施設が新しい名前になって初めての春季キャンプを迎えた。株式会社求人おきなわが、年間600万円でネーミングライツを取得して、自社サイトの「Agre(アグレ)」がすべての施設名に加わった。球場は「Agreスタジアム北谷」、屋内練習場は「Agreドーム北谷」そして投球練習場は「Agreブルペン北谷」など、真新しい色鮮やかな看板が目を引いた。

北谷町「新型コロナがなければ」

Agreスタジアム北谷

残念だったことは新型コロナウイルス感染拡大の影響であろう。沖縄県ではドラゴンズはじめ9つの球団が春季キャンプを行ったが、県下に緊急事態宣言が出されていたこともあって、どこも異例の無観客キャンプとなった。例年ならば、全国各地からドラゴンズファンが「待っていました!」とばかり訪れるのだが、ファンの姿も歓声もない寂しいキャンプの日々だった。
「多くのドラゴンズファンに『Agre(アグレ)』の名前が付いた新しいキャンプ施設を楽しんでもらいたかった」
北谷町役場でも残念がる声が聞かれた。ネーミングライツで得た維持費で、公園整備を進めてきただけに尚更であろう。竜党への本格的なお披露目は持ち越しとなった。

こんなに違う!米国のネーミングライツ

Agreドーム北谷

このネーミングライツ、米国では大いに事情が違っている。もともとは1970年代に米国で生まれたと言われているが、日本との最も大きな違いは、ライツ(権利)の範囲だろう。施設にスポンサー企業や商品の名前を付けることは、命名権契約のひとつにすぎない。
野球場でいうならば、随所への自社看板の掲示はもちろんのこと、飲食売店へのロゴ、自社商品の売り出し、観戦用の特別席の利用、チケットの優先購入、さらに契約企業の顧客に対する球場での特典プログラムやイベント開催など、球団や所属選手までもが活用対象になっている。施設の持ち主とスポンサー企業が、まさに一体の“パートナー”として施設を運営するスタイルなのだ。
仮に「バンテリンドーム ナゴヤ」に当てはめるならばドラゴンズ選手が「バンテリン」の湿布薬やサポーターを使用して、それをドーム内で大々的にアピールするという形にもなるのだろうか。ただ、米国の場合はもちろんその分、契約金は桁違いの高額であり、契約期間も日本が「5年」など短期間ベースなのに比べ、米国は「20年」など長期にわたるケースが多い。まさに“腰を据えて”スポーツ振興にタッグを組むことになる。数々の挑戦的なサービスも生まれそうだ。

ドラゴンズが勝ってこそ!

バンテリンドーム ナゴヤ(C)CBCテレビ

ネーミングライツのマイナス面、それは権利を買った施設の“広告媒体としての価値”が下がることだろう。それはひとえにドラゴンズの成績にかかってくる。本拠地「バンテリンドーム ナゴヤ」の名を全国に知れ渡らせることができるか否か、2021年のドラゴンズは、これまでになかった新たな使命を背負ってのペナントレースとなる。キャンプ地である沖縄の北谷町や読谷村からも熱い視線と応援が注がれる。球団創設85年そして与田剛監督3年目、竜党からのあふれる期待はもちろんだが、プロ球団としてのさらなる責任感と気合いを持って、来たるシーズンに突入してほしい。ネーミングライツ球場の新たな1ページはファンを感動させるプレーから生まれる。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 

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