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福谷浩司が背負う「開幕投手」の大役!ドラゴンズ球団史が語るあの投手この投手

福谷浩司が背負う「開幕投手」の大役!ドラゴンズ球団史が語るあの投手この投手

「びっくりしました」
こう語ったのは中日ドラゴンズ9年目の右腕・福谷浩司投手である。与田剛監督3年目の2021年シーズン開幕戦、広島東洋カープ相手の開幕投手に指名された。

「沢村賞」大野雄大の開幕ならず

毎年この時期に「誰だろう?」とファンの間でも熱い話題になる開幕投手、実は2021年シーズンは予想にもならないと思っていた。昨シーズン「沢村賞」に選ばれ、12球団ナンバーワン投手の座を得た大野雄大投手がいるからだ。しかし、最優秀防御率と最多奪三振と共に高く評価された10試合という完投数、その疲れはコロナ禍による日程変更で短かったシーズンオフでは解消しきれるものではなかったようだ。それは与田監督も認めるところだった。
そして白羽の矢は、左腕の大野投手と並んで、8年ぶりのAクラスへチームを牽引した右腕、福谷投手へと放たれた。チーム2番目の勝ち星を挙げ、オフも緻密に練り上げたトレーニングで研鑽を積んだ。オープン戦で大量失点もあったが、クレバーな投手だけに、本番までにきっちりと修正してくれることに期待したい。

開幕投手を7度つとめた川上憲伸

「サンデードラゴンズ」(C)CBCテレビ

球団創設85年を迎えたドラゴンズの歴史の中、毎シーズンただひとりの開幕投手。その座を最も数多くつとめたのは川上憲伸投手である。入団2年目の1999年に早くも開幕をまかされると、その後は合わせて7度、開幕のマウンドに立った。2005年からの4年連続によって、「開幕は憲伸」という時代がドラゴンズの黄金期に重なる。米メジャー挑戦から復帰した2014年に6年ぶりに開幕投手をつとめたことからも、まさに“竜のエース”。シーズン最初の試合にはなくてはならない存在だった。
この他では1970年代の星野仙一さん、1980年代の小松辰雄さん、1990年代の今中慎二さん、そして2010年代の吉見一起さんと、ファンも納得の投手たちが開幕投手に何度も名を連ねた。

衝撃の開幕!川崎憲次郎登板

最も驚いた開幕投手、これは多くのドラゴンズファンも納得するであろう、2004年の川崎憲次郎投手である。このシーズンからチームの指揮を取った落合博満監督が自らにとっても最初の公式戦となった開幕戦に指名したのが川崎投手。FA宣言をしてドラゴンズに入団、エース背番号「20」を背負ったものの、肩の故障から過去3年間1度も登板なし。当時、予告先発はなかったため、ナゴヤドーム(現バンテリンドーム ナゴヤ)にその名がコールされた瞬間、ドームは大きなどよめきに包まれた。あの興奮は今も鮮明だ。
「このチームを変えるには、けがで3年間苦しんだ川崎が必要だった」
落合監督はこう語った。その年、ドラゴンズは5年ぶり6回目のリーグ優勝を果たす。

浅尾拓也もつとめた開幕投手

翌年からエース川上投手が毎年のように開幕投手をつとめた落合ドラゴンズだが、その川上投手が米メジャー入りした後、2009年のシーズンにも驚きが待っていた。開幕投手は浅尾拓也投手だった。前の年は中継ぎとして活躍した右腕が、エース川上が去った後の開幕マウンドに指名された。相手は三浦大輔投手、今季2021年から横浜DeNAベイスターズの監督になったハマのエース。堂々の投手戦の末、8回を1失点に抑えドラゴンズも勝利した。浅尾投手はその後、再びセットアッパーに戻り大活躍、リーグ優勝した2011年には中継ぎ投手としては史上初となるシーズンMVPにも輝いた。たった一度の貴重な開幕投手経験だった。
その翌年は吉見一起投手、2011年はマキシモ・ネルソン投手と、初めての開幕投手が続く。オーソドックスに見えて、実は大胆でもあった落合采配が懐かしい。開幕投手の指名にもそれが表れていた。

早すぎる?開幕投手の発表

福谷浩司投手(C)CBCテレビ

各チームの開幕投手の公表は、昨今ますます早くなっている。予告先発という制度がすっかり定着した中、春季キャンプ中に早々に発表する球団もある。ドラゴンズかつての開幕投手、川崎と浅尾、この2人の開幕登板に驚きそして興奮した思い出から考えると、予告先発という制度が、プロ野球のドラマチックな演出に少なからずマイナスの影響を与えているように思えてならない。
投手コーチの後、監督としても2年間ドラゴンズを率いた山田久志さんは、阪急ブレーブス時代(現オリックス・バファローズ)1975年から1986年にわたって、実に12年連続で開幕投手をつとめた。連続の開幕登板は今なお破られることのないプロ野球記録である。誰もが納得するエースばかりならば、開幕の予告先発も納得はできるが、やはりワクワクしてその日を待つファンとしては、開幕のプレーボール直前まで夢があってもいいのではないかと、複雑な思いも交錯する。

開幕戦をシーズン143試合のひとつと見るか、特別な試合と見るか。それは勝ち負けの結果によるもので、やはり開幕戦はシーズン最初の大切な試合であろう。球団創設85年のシーズン、ドラゴンズ開幕投手の系譜に、背番号「24」が加わった。敵地マツダスタジアムでの福谷浩司投手の熱投と勝利に、「昇竜復活」その先へと夢を馳せる。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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