白血病の男性「当時はみじめだと…」凍結保存した精子で授かった我が子 高額な費用に保険適用はじまる

白血病の男性「当時はみじめだと…」凍結保存した精子で授かった我が子 高額な費用に保険適用はじまる

「あれがなかったらこの子らはいないんだなって今でも感じますね。精子を残すってすごくみじめな行為だったんですよ、当時はそう思っちゃって」(漫画家・宮川サトシさん)

大学生の時 白血病に

子育てなどを描いたエッセイ漫画も描く

 こう話すのは、岐阜県出身の宮川サトシさん(42)。
 雑誌などで月5本の作品を連載する漫画家です。

Qどんな作品を書く?
「自分のエッセイ漫画では、子供のネタが多い。出産シーンとか、その時に男の自分がどう思ったのかを漫画にしています」(宮川さん)

 5歳の長女と、0歳の長男の2児の父親で、育児を漫画にも描いている宮川さん。
 大学生の時に白血病になり、放射線治療や抗がん剤で精子を作る機能がダメージを受けるため、医師からは“将来、子どもは望めない”と言われていました。

宮川さんの母・明子さん(享年72)

 しかし、母親の強いすすめで、精子を凍結保存。その結果、2人の子を授かることができたのです。
 このいきさつは、宮川さん自身が漫画に描き、映画化もされました。
 その後白血病を克服し、結婚しましたが、凍結保存のことは忘れていたといいます。

亡くなった母に「感謝しかない」2人の子どもを授かる

病院から届いた通知

 母親が亡くなった翌年、病院から凍結保存の更新について連絡があり、母親が精子を10年以上保存してくれていたことを知ったのです。
 夫婦で話し合った上、体外受精で2人の子どもを持ちました。

「当時、母に“精子を残さなきゃいけない”と言われても全然ピンとこなかった。でも母親が泣いて懇願したので、しぶしぶやった。本当に、今となっては母に感謝しかない」(宮川サトシさん)

保険は「適用外」費用200万円

「支援があれば」と凍結保存を希望する人は増えている

 やってみて知ったのは、凍結保存や、その後の体外受精などの高額な費用負担。

 保険は使えず、約200万円かかりました。

「がんの治療をして、それだけでも心身ともに不安を抱えて生きている中で、金銭的なことがいつもひっかかる」(妻・真里さん)

 厚労省の最新データによると、現在、若いがん患者のうち「経済的な支援があれば卵子や精子などを凍結したい」と希望する人は年間約7000人。

 年々、希望者は増えていると言います。

凍結タンク

「卵子の凍結をしているところ。凍結タンクがあって、マイナス196度で保存しています」(浅田レディースクリニック 浅田義正院長)

 このクリニックでは現在、がん患者も含め、約4000人以上の卵子や精子などを凍結し、保管しています。

 卵子や精子は半永久的に保存が可能。

 がんの治療が終われば、人工授精や体外受精などの方法で不妊治療を行うことができます。

 世界的には既に一般的な手法で、日本でも、年間約5万7000人が誕生しているのです。

 しかし、卵子などの保存費用は40万~60万円程度と高額で、医療保険は適用されないため、行政に支援を求める声が上がっていました。

自治体の「助成制度」を利用する人も

名古屋市内に住む20代女性

 名古屋市では40歳未満のがん患者を対象に、精子の場合は約5万円、卵子などの場合は約35万円を負担する助成制度を、2021年1月から始めています。

「悪性リンパ腫とわかってからは、多い時は月に5~6回通っています」(20代女性)

 名古屋市に住む、助成制度を利用した20代の女性。

 去年6月に悪性リンパ腫が発覚し、それ以来、抗がん剤治療などを続けています。

「7種類の薬を飲んでいます。髪の毛はウイッグです。抗がん剤で髪の毛が抜ける。朝起きたら枕に髪の毛がブワーって。すごく大変でした」

名古屋市の助成制度

 子どもが大好きで、保育士の仕事をしていた女性。

 将来、自分の子どもが欲しいと考え、卵子の凍結保存を考えましたが、高額な費用が悩みでした。

「抗がん剤治療だけでお金がかかる。凍結保存は実費なので、追い打ちをかけられる」

 がんの治療だけでも、費用は100万円以上。

 悩んだ末、凍結保存で更に40万円ほど支払いましたが、名古屋市の助成制度を遡って受けられる事になったのです。

「お金もかかるし、凍結保存をやらなくていいと思ったこともあったが、今となっては、卵子を使って治療ができるので、希望が増えてよかった」

 医学の進歩で、様々な不妊治療のあり方が選択できるようになる中、それに対する支援がさらに求められています。

2022年から人工授精や体外受精などは「保険適用」に

保険適用は2022年4月から

 不妊治療に対しては国や行政の支援が進みつつあります。

 菅内閣は、2022年4月から人工授精や体外受精などの不妊治療に保険を適用する方針です。

 現在も、回数や金額に上限のある国や自治体の「助成制度」はありますが「保険適用」は初となります。

一足先に「国の助成」も

助成制度がある自治体は全国でも半分程度

 がん患者の卵子・精子の凍結保存については、東海3県では名古屋市のほか、岐阜県や三重県が助成を行っていますが
、制度を設けている自治体は全国でも半分程度に留まるということです。

 当事者からは公的支援を求める声が上がっていました。

 そこで、国は2021年4月から費用の一部を助成する方針を決めました。

 子どもを望む人への支援が、進むことが期待されます。

(2021年1月25日 15:49~放送『チャント!』より)

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