不登校対策にロボット!? 今までの常識に囚われない新たな取り組みとは
ことし10月、文部科学省が発表した2018年度の小中学校の不登校の児童・生徒数は過去最高の16万4528人に上ります。
そんな中、愛知県豊橋市は不登校児童などへの教育支援として東海3県の小中学校で初めて、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を試験的に導入しました。
なぜ分身ロボット?
不登校対策の最前線を追跡取材しました。
不登校の子どもを持つ母親が語る現状とは
上田さんは、中学1年の次男と小学3年の三男の息子2人が不登校です。
上田さん:
「次男は、友達とトラブルを起こしたと本人から聞きました。三男は、自分が怒られたわけではないんですが、先生の檄が怖くて不登校に」
2人とも、もう数年間学校へ行っていません。
部屋にこもり、ゲームをする日々が続いています。
石川さん(仮名)は小学2年の長男が不登校です。長男にはディスレクシアという読み書きが困難な学習障害があり、授業についていけず自信を無くし、去年夏頃から学校に行けなくなりました。
石川さん:
「ものすごく落ち込みましたし、答えがないトンネルの中に入ってしまったような。誰も答えを与えてくれなかった。息子が家にいるようになってからは、マンションの共用廊下で『大きい声を出さないで』とか人目から隠すようなことをしてしまった」
母親の考えに変化「学校に戻らなくても別の道はある」
母親2人とも初めは「とにかく学校に戻ってほしい」と思っていましたが、子どもの悩みを聞いたり、同じ境遇の保護者と話をしたりするうちに考え方が変わってきたと言います。
上田さん:
「最終的に学校へ戻りたいと言えばそれも選択肢ですし、そうじゃなくて別の場所や道などを自分なりに見つけるのも選択肢。私はその選択肢を広げてあげるような助けができれば」
石川さん:
「『学校に行ける子が一軍で、学校に行けない子が二軍』ではない。学校に行けない子は、自ら選んで行っていないだけ」
不登校について専門家はこう話します。
愛知教育大・川北稔准教授:
「学校に行く行かないということに囚われてしまって、『とにかく学校に行きなさい』と一本調子の接し方だとますます悩みが話しづらくなることがある。
不登校というのは一つのサインのようなもの。もともと持っている不安や悩みをじっくり時間をかけて聞いてあげることが大事」
豊橋市が東海3県初の取り組み ロボットで授業!?
こうした中、愛知県豊橋市はことし9月から、不登校や入院で学校に来ることができない児童・生徒への教育支援として「あるモノ」を試験的に導入しました。
東海3県の公立小中学校では初の取り組みです。
それが、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」
額の部分にあるカメラが捉えた教室の映像をタブレット端末で見られるほか、タブレットによる操作で会話をしたり、手をあげたり、拍手をしたりすることもできます。
分身ロボットを使えば、不登校の子どもが教室に来なくても授業に参加できるのです。
豊橋市教育委員会:
「このような(ロボットによる)教育支援も時代の流れとして有効だと考えております。今後の成果を見て子どもたちのためにできることがあれば広げていきたいです」
すでに分身ロボットを導入している小学校では、驚きの結果も
鳥取県米子市の就将小学校では2年前「入院中の子どもが授業を受けられるように」と分身ロボットを導入。その後、学校を休みがちな子どもにも使ってもらうようになりました。
クラスの最前列の机には、授業に合わせて周りを見回したり拍手をしたりするロボットの姿が。分身ロボットを操作している児童は、反対側の校舎の別の教室にいます。
クラスメイト:
「やっぱり会えない友達とこうやって会って、手の動作とかでコミュニケーション取れるのは楽しい」
分身ロボットを導入した当時の校長先生は。
上村一也先生:
「年間約80日間の欠席だった不登校傾向の児童が分身ロボットを使うと、年間の欠席数14日間になりました。分身ロボットによる効果が全てではないと思いますが、全国に教室にあがりにくい児童たちがいる中で、教室にあがれるきっかけ作りになるのではと考えている」
4年以上不登校「自分の意志を持って学校に行かない」
愛知県に住む中学2年生のヒロト君(仮名)。
小学4年生のとき、クラスの目標が「休み時間は全員外で遊ぶ」に決まりましたが、まだクラスに友達がいなかったため運動場で一人ぼっちの毎日が続きます。
さらに、先生との関係もうまくいかなくなって学校に行けなくなりました。
記者:
「Q今学校には行っていますか?」
ヒロト君:
「行っていないですね。自分の意志を持って学校に行かない。それを強調したい。学校は不登校になる前は本当に行きたい場所だったけど、嫌いな場所になってしまいました」
ヒロト君の母親:
「今の日本の教育の中で学校からはみ出てしまうってすごく最悪だと思うんです。自分の勝手な欲を言えば、社会に出て働いて家庭を持てたらいいなと思うけど、親の勝手でそれを言ったら子どもは苦しい」
卒業文集に記した思い「皆に知ってもらいたい」
ヒロト君は小学校の卒業文集に、不登校になったときの思いを記していました。
ヒロト君:
「皆に知ってもらいたいなと。僕が学校に行かなかった理由とか」
例え学校の集団生活に馴染めなくても居場所が見つかる社会。その実現には行政や学校だけでなく、私たち一人ひとりの理解が必要なのは言うまでもありません。