あなたはアイスコーヒーが好きですか?世界でも珍しい珈琲文化の正体

あなたはアイスコーヒーが好きですか?世界でも珍しい珈琲文化の正体

日本で人気の飲み物のひとつ「アイスコーヒー」、実は日本発祥とも言われている。いつ誰が発明したのだろうか?海外にはなかったのだろうか?ユニークな珈琲文化を旅してみた。

登場したのは明治時代?

世界的にも珍しい「コーヒーを冷やして飲む」日本独特の文化。それが記された最古の文献は、1891年(明治24年)に雑誌編集者の石井研堂さんが書いた『明治事物起源』の中にあると知って、早速、国会図書館のデータベースで読んでみた。この『明治事物起源』は、当時の文化、交通、法律、暮らしなどを盛りだくさん紹介した本で、その第10章が「飲食」という項目。ラムネ、牛乳、パンなどと並んで「珈琲の始」という項目があった。肉を食べた後には珈琲を飲むと良いなどと書かれているものの、「アイスコーヒー」は登場しない。それが見つかったのは「氷屋」という項目の中だった。氷みかん水、氷白玉、そして氷汁粉と共に「氷コーヒー」という名前があった!

最初はどんな飲み物だったの?

その当時「氷コーヒー」と呼ばれたものは、コーヒーを瓶に入れて井戸水につけて冷やしたものだったようだ。氷を入れるのではなく瓶のまま冷やすので、味が薄くならなかった。古くから日本には、夏のスイカやウリなど、いろいろなものを井戸水で冷やして食べる習慣があった。この自然な“冷蔵庫”では、その冷え方の度合いが実に絶妙で冷やし過ぎることもなく、食材の味が見事に引き出された。飲み物であるコーヒーを冷やしてみようと思った先人たちのアイデアも素晴らしい。まさに「冷やし文化」、日本ならではの発想だろう。大正時代になると、喫茶店に「冷やしコーヒー」というメニューが登場した。いよいよ冷たいコーヒーは日本での市民権を得ていく。

海外での「アイスコーヒー」

では「アイスコーヒー」は日本発祥なのだろうか?もともと海外では、水以外の飲み物を冷やして飲む習慣はなかった。しかし、似たものは存在する。かつて海外特派員生活を送ったオーストリアのウィーンには「アイリッシュ」と名づけられた冷たいカクテル風のコーヒーがあった。アルジェリアにも「マサグラン」という飲み物があり、熱いコーヒーに氷やリキュールを入れた。イタリアでは「エスプレッソ」を冷やして飲んでいたという話もある。「アイスコーヒー」という名前はともかく、それに似た飲み物は世界のところどころに存在していた。

では、明治時代の日本に存在した「氷コーヒー」は、海を越えて海外へ伝わっていったのか?そのルートを示すものが、残念ながら現時点では見つからない。日本生まれと言いきれないもどかしさがそこにある。しかし、井戸水で冷やしたコーヒーは、間違いなく美味しかったはずだ。そんな明治の「珈琲文化」に思いを馳せながら、この夏も「アイスコーヒー」をブラックで楽しんでいる。

【東西南北論説風(259)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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