ドラゴンズ開幕3連戦の手応えと不安「1勝1敗1分」から見えた課題とは?

ドラゴンズ開幕3連戦の手応えと不安「1勝1敗1分」から見えた課題とは?

こんな痛快なシーズン開幕戦はいつ以来だろうか?ひょっとしたら、エース川上憲伸投手が開幕のマウンドに立ち、アレックス・オチョア選手のサヨナラ満塁ホームランで、結果4-0の完封勝利となった2005年以来か。やはり開幕戦の勝利は格別である。

根尾昂への期待と不安

中日ドラゴンズはマツダスタジアムでの広島東洋カープ3連戦で2021年ペナントレースをスタートした。この試合の注目は、3年目の根尾昂選手が開幕スタメンに選ばれたことだった。抜擢ではなく、キャンプそしてオープン戦からの歩みを認められての、納得の起用だった。まずは守備で魅せた。レフトを守った根尾選手は、2回無死1,2塁で会沢翼選手の大飛球を後ろ向きで好捕。もしこれが抜けていたら、おそらく大量得点に結びつき、ゲームはワンサイドになった可能性がある。本職である内野のショートと同時に外野守備も練習してきた根尾選手だったが、勝敗の行方を左右するビッグプレーだった。その直後の打席では、レフト前にクリーンヒット。初打席初安打で、全国の竜党を歓喜させた。
しかし、その後は10打席ノーヒットが続く。貴重な四球もあったが、落球エラーもあった。「うまくいかなくても使う」と語る与田監督の言葉に甘える時間は決して多くはない。

今季は違うぞ!若竜の盗塁が光る

開幕戦は今季も4番に座ったダヤン・ビシエド選手の逆転2ランで、ドラゴンズファンの興奮は頂点に達した。そこには14年ぶりにドラゴンズブルーのユニホームに復帰した福留孝介選手が選んだ四球も欠かせない要素だった。4-0とリードされ、カープのエース大瀬良大地投手の好投から負けを覚悟し始めていた開幕戦、こんな爽快な逆転劇は昨シーズンまでのドラゴンズでは正直予想できなかった。
ビシエド選手のホームランほどの派手さはないが、このゲームで嬉しかったのは、滝野要選手と高松渡選手の盗塁だった。いずれもプロ入り初盗塁。春季キャンプから課題に「スピードアップ」を挙げてきた与田ドラゴンズは、オープン戦で12球団トップの盗塁数を記録したが、ペナントレースでもそれが実証できたことが大きな収穫だった。ましてこの2選手も、根尾選手と同じ、初の開幕ベンチ組。ファンが待ちかねた“新たな息吹き”での開幕戦勝利だった。そして2リーグ制になって以来、0勝8敗だった広島の地での開幕戦全敗に終止符を打った“歴史的”勝利でもあった。

「あと1本が出ない」打線に泣く

しかし、世の中はそんなに甘くはない。勝負の世界も決して甘くはない。2戦目はわずか4安打で敗れ開幕連勝を逃す。大島洋平選手の先頭打者ツーベースまでは「今日も勝てる!」と前夜からの勢いに早々に気合いが入ったが、その後に登場したのは、前年までのドラゴンズの残念なキーワードだった。すなわち「あと1本が出ない」。7回2死満塁で打席に立った大島選手は初球を打ってセカンドゴロ。3戦目も2死1、3塁ファーストゴロで無得点。2年連続最多安打のタイトルを獲得し“最も安打を打てる”大島選手だけに、ここで1本ほしかった。
開幕戦こそ7点という大量得点だったが、2戦目は1点、3戦目は0点。チーム得点429、リーグ最下位どころか12球団で最も得点の少なかった昨シーズンのドラゴンズが同じ顔を見せた3連戦でもあった。1勝1敗1分、特に3戦目はピンチを凌いでの引き分けだったが、逆に1本が出れば勝てた引き分け試合でもあった。

野武士野球に学ぶ「引き分け」勝率

その引き分けである。新型コロナウイルス下での2年目のシーズンで、最も大きなルール変更は「延長戦なし、9回打ち切り」だろう。すでにドラゴンズも開幕3戦目にして経験したように、引き分けは間違いなく増えそうだ。この引き分け数は、シーズン後半に大きな意味を持ってくる。
近藤貞雄監督が率いて、何をしてくるか分からない豪快な「野武士野球」でリーグ優勝を果たした1982年、ドラゴンズの引き分け数は19試合もあった。当時はシーズン130試合だから、大変な多さである。勝利数は「64」だったが、実は2位の讀賣ジャイアンツが「66」、3位の阪神タイガースが「65」と、勝利数は3番目だった。引き分け数の多さが最終的に勝率に大きく貢献しての優勝だった。

打撃陣の奮起に期待

「サンデードラゴンズ」より福留孝介選手©CBCテレビ

2021年シーズンは、この引き分け、特に追いついての引き分けをいかに増やすかがペナントレース制覇へのポイントとなる。当然、戦い方も大きく変わる。与田監督の仕掛けも早かった。2戦目、先発の柳裕也投手に5回の打席で早くも「代打・福留」を告げた。他球団に比べてもリリーフ陣が揃っているドラゴンズならではの戦略だが、同時に点が入らなければ勝つことはできない。「あと1本が出ない」という課題を解消することが急務となる。打撃陣の奮起こそ、勝利への道を開く。ここでの1本を打ってほしい。今だノーヒットの高橋周平選手の今季初安打も早々に待っている。

それでも、開幕戦快勝の“残像”は心地よく脳裏に焼きついている。この余韻を活かせるかどうかは、新生バンテリンドームでの本拠地開幕戦、原ジャイアンツとの3連戦にかかってくる。今季も力強い野球を見せるセ・リーグの覇者を相手にどんな戦いを見せるのか。与田ドラゴンズ3年目を占う、最初の見せ場が桜満開の名古屋にやって来た。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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