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ドラの巻【CBCドラゴンズ情報】

伊東勤ヘッドコーチがいながら「なぜ?」~ドラゴンズ歴代参謀の役割と手腕~

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伊東勤ヘッドコーチがいながら「なぜ?」~ドラゴンズ歴代参謀の役割と手腕~ | ドラの巻【昇竜復活へ!CBC中日ドラゴンズ情報】 | CBCテレビ・CBCラジオ


プロ野球における「ヘッドコーチ」の存在とは何だろうか?「筆頭コーチ」であり「参謀」であり、時に「監督代行」でもある。その立場はチームによっても違い、果たす役割もそれぞれであるが、球団創設85周年を迎えた中日ドラゴンズの球団史でも、時として様々なヘッドコーチがチームを支えた。

■竜の前に立ちはだかった捕手・伊東勤

伊東勤さんが与田剛新監督率いるドラゴンズのヘッドコーチに就任するという、2018年シーズンオフの報に多くの竜党は大喜びした。なぜなら「伊東勤」という野球人に対して、特別な思いがあったからだ。現役時代は西武ライオンズ(現・埼玉西武)の捕手として、パ・リーグ優勝14回、日本一8回を経験。ベストナイン10回、ゴールデングラブ賞11回の日本プロ野球界を代表するキャッチャーだった。
1988年の日本シリーズでは星野仙一監督率いるドラゴンズを1勝4敗で完敗させた敵の正捕手。その後、ライオンズの監督となり、今度は2004年の日本シリーズで、落合博満監督との新監督同士の対決の末、ドラゴンズを打ち破った宿敵でもある。「ドラゴンズ日本一の道に伊東勤が立ちはだかった」印象だ。
その伊東さんがヘッドコーチとして入閣し、今度は味方になるのである。与田と伊東というベンチでの“強力バッテリー誕生”にファンの期待は否が応でも高まった。

■近藤ヘッドの「打倒巨人」

ドラゴンズの球団史において、印象深い「ヘッドコーチ」を挙げるとするならば、3人の名前が浮かぶ。
まず1974年(昭和49年)、讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止して20年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた時の近藤貞雄ヘッドコーチである。与那嶺要監督の就任と共に、そのラブコールを受けて古巣のドラゴンズに復帰、投手コーチも兼任した。
与那嶺さんはジャイアンツの川上哲治監督に構想外の選手とされて、追われるように中日に入団し「打倒巨人」に執念を燃やしたが、ジャイアンツの投手時代に指を負傷し自由契約になってドラゴンズに移籍した近藤コーチの思いも同じだった。「投手分業制」を積極的に採用して、日系人監督のウォーリー与那嶺を支えた。長嶋茂雄選手や王貞治選手らのスーパースターを擁した無敵チームを破っての優勝、2人はさぞや痛快だったことだろう。

■島野ヘッドの「星野愛」

島野育夫さんも忘れられない。星野仙一監督の名参謀だった。外野手としてドラゴンズに入団したが、現役時代よりも引退後のヘッドコーチとしての貢献の方が、ドラゴンズにとっては格段に大きかった。“燃える男”や“闘将”と呼ばれ、表向きは激昂型としてチームを率いた星野監督を、細やかな対人関係によって支えた。
カラオケでの持ち歌『浪花恋しぐれ』の歌詞を「星野のためなら女房も泣かす」と替えて歌うことでも知られていた。2002年シーズンもヘッドコーチとして山田久志新監督を支えることが決まっていたが、星野さんが突然、阪神タイガースの監督に就任すると、ドラゴンズを去って星野タイガースの下に駆けつけ虎のヘッドコーチとなった。ドラゴンズファン的にも「怒る」というよりも「まあ仕方ないな」と思えたほど、星野と島野の絆は強かった。

■森ヘッドの「助っ人獲得」

森繁和さんを抜きにして、落合博満監督が率いたドラゴンズの黄金時代は語ることができない。まさに“竜の参謀”だった。2004年からの8年間でリーグ優勝4回、日本一1回、すべてAクラスという見事なチーム成績。実は森さんが「ヘッドコーチ」を務めたのは、最後の2年間、2010年と2011年だけで、それまでは投手やバッテリーのコーチなのだが、球団初の連覇と呼応して“落合野球のヘッドコーチ”という印象が強い。
グラウンドで監督の片腕として勝利に貢献すると共に、森ヘッドがすごかったのは、“助っ人”外国人選手を獲得する独自のルートを築いていたことである。トニ・ブランコ選手を筆頭に、ドラゴンズには次々と優良な選手が来日して活躍した。現在4番を打つダヤン・ビシエド選手も、森ヘッドコーチの“置き土産”である。

■伊東ヘッドがいながら「なぜ?」

8年ぶりにAクラスになったドラゴンズ、2021年は10年ぶりの優勝が“至上命題”である。それを掲げてシーズンに入ったはず。ベンチの要(かなめ)となる伊東ヘッドコーチへの期待は、当然高いし、同時に周囲から見る目も厳しい。2020年シーズンの忘れ去りたい記憶に、野手を使い果たした末の「投手の代打に投手」という残念な采配があったが、周囲のドラゴンズファンには「伊東ヘッドがついていながらなぜ?」という失望と疑問の声が多かった。批判の的になるということは、その力量への期待の裏返しでもある。監督以上に矢面に立たなければならない局面もヘッドコーチの役割だ。チャンスにあと1本が出ない、若手を我慢して育てられない、1・2軍の入れ替えが少ない、旬の選手の勢いを活かせない、そして戻った昨季と同じスタメンの顔ぶれ。今こそ、過去にドラゴンズとの闘いの中で伊東勤という野球人が披露してきた「力強くかつ負けない野球」を見せてほしい。

与那嶺と近藤、星野と島野、そして落合と森。優勝ペナントを手にした竜の監督とヘッドコーチの名コンビに、与田と伊東という2人は名を連ねることができるのか。待ったなしの3年目、はるか先を走る首位タイガースを見上げた時、これまでにない思い切った戦略が求められる。残された時間は多くない。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

画像:ベンチの様子(C)CBCテレビ

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