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与田ドラゴンズ序盤戦の通信簿は正直「きびしい採点」・・・でも逆襲への光もあり

与田ドラゴンズ序盤戦の通信簿は正直「きびしい採点」・・・でも逆襲への光もあり

新型コロナウイルスの影響で試合数も120と少なくなった異例の2020年シーズン。早いもので中日ドラゴンズも3分の1のゲーム数を終えた。2年目を迎えた与田ドラゴンズの序盤戦を検証する。

1位予想まであったシーズン前

結論から言えば、ここまでは残念ながらファンの立場としては失望の日々を送っている。
昨シーズン9月のAクラスへの追い上げムードがあった上、投手も打者も顔ぶれが揃ってきたとファンはもちろん野球評論家の評価も上がっていた。ドラゴンズOB以外に、千葉ロッテマリーンズOBである里崎智也さんまでが「ドラゴンズ1位」と予想するなど、7年連続Bクラスと雌伏の応援の日々を送ってきたファンにとっても「今年こそ」と期待は高まっていた。
雨中の開幕戦を打撃戦で制した後、開幕カードを8年ぶりに勝ち越し、梅津晃大選手の勝利投手インタビューの言葉通り「今年の竜は違うぞ」と多くの竜党は盛り上がった。しかし、その後じりじりと失速、シーズン3分の1を終え、首位巨人に大きく差をつけられてのBクラスが続く。打率、得点数、本塁打数、失策数などチーム成績もよくない。
個々の選手成績もダヤン・ビシエド選手以外、あまり目立った活躍がない。今季はクライマックスシリーズもないため「1位のみ」を目指す戦い、現時点の失望感は大きい。

采配ミスの根底にあったものは?

波に乗れない中では思いもかけないことが起きる。7月7日には野手を使い果たして「投手の代打に投手」という信じられない采配も飛び出した。これについては、もちろんベンチを預かる監督が責任の第一人者であるのだが、それを支えるコーチ陣、さらに登録選手の枠にまだ余裕があったという事態については、球団全体にも責任がある。誰かが気づいて内部で事前に指摘していれば防ぐことができた事態であろう。
しかし、“七夕の変”に代表されるこうしたギクシャクさの根底にあるひとつの要因として、昨シーズンから、いやもっと以前から課題になっている「正捕手」の問題があると考察する。この試合も、マスクをかぶっていたアリエル・マルティネス捕手を直前に加藤匠馬捕手に交代させてしまったことによって、野手のカードを使い切ってしまったからだ。正捕手が決まっていれば・・・。

結局「正捕手」は決めないまま

谷繁元信さんが引退してから5年以上、ずっと決まらない竜の正捕手。昨季までは「どのキャッチャーも決め手に欠ける」という言葉が思い浮かんだのだが、今季は事情が違う。
3安打猛打賞だった木下拓哉は、次の試合でスタメンマスクではなかった。4番に座ってホームランまで打ったアリエル・マルティネスも、次の試合でスタメンマスクではなかった。体調面や投手との相性面など加味した上での起用なのだろうが、正捕手候補として十分“資格”を持ちつつある選手たちが台頭してきただけに、あとはベンチの決断次第だと思える。
ひとつ例を挙げるならば、8月2日に10回を見事に完封した梅津晃大投手のパートナーである。梅津投手は今季これまで7試合先発しているが(8月4日現在)、スタメン捕手は、木下4試合、アリエル3試合と二等分されている。どちらが正捕手?
「100試合以上スタメンで出る捕手」が出てこない限り、Aクラスに入ることができても、優勝への道のりは厳しいのではないだろうか。

石川昂そして根尾・新たな胎動の起用

当コラムで春季キャンプ時から挙げた今季の課題には、「正捕手」以外では「抑えの切り札」と「新戦力の台頭」がある。
抑え投手については、ようやくライデル・マルティネス投手がその座に収まってきた。相手をねじ伏せる剛球は、抑え投手の適正十分。同時にシーズン最初はクローザーを担当していた岡田俊哉投手も中継ぎとして安定した投球を見せ始めている。
そして、ファンが最も期待する新しい戦力たち。高卒ルーキーの石川昂弥選手そして岡林勇希選手が、相次いでデビューしてプロ初ヒットも記録した。ドラフト2位と3位の橋本侑樹投手と岡野祐一郎投手も開幕1軍として場数を踏んだ。昨シーズン、それまで活躍してこなかった中堅野手たちにチャンスを与えて覚醒させた与田監督、その積極的な選手起用は今季も続いている。あわよくばもう1歩もう2歩、その歩みを進めて“新旧入れ替え”を実現することができるのなら、ドラゴンズ新時代の扉は一気に開くと思うのだが・・・。
待望の背番号「7」根尾昂選手もいよいよ1軍に上がってきた。苦しい戦いが続く中で、差し込んでいる確かな新しい光たち。「正捕手」問題と同じで、あとは起用する側、ベンチの采配ひとつ、指揮官が腹をくくるか否かであろう。

新型コロナによって翻弄される2020年シーズン。パ・リーグでは選手に感染者が出てゲームが中止になった。そんな先行き不透明なペナントレースが続く。
残り3分の2しかない?いやまだ残り3分の2もある?
ファンとしては後者を信じて応援を続ける。だからドラゴンズ選手もベンチも、例年以上に1試合1試合を大切に戦ってほしい。私たちファンは、温かくでも例年以上に厳しく、竜のグラウンドに目を注ぎ続ける。
   
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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