ミズ・イヴァンカ ~「イヴァンカさんキレイだったね」で終わってはいけない

石塚元章

2017年11月 8日

 イヴァンカさん、確かに輝いている女性でした。私が出演しているCBC発の情報番組「ゴゴスマ」でも、CM中の雑談でコメンテーター陣が「彼女が着ていたブランドって○○らしいね」「あれって若い女性向きなのに、結構高いから若い人が買えないっていう不思議なブランドよね」などなど、大変に盛り上がっておりました(生番組というのは、たいていCMなどで放送に映っていないところのスタジオトークが面白かったりします...)。
 結婚していて3児の母親。ビジネスもこなして、しかもトランプ大統領の補佐官の肩書き。メディアでは「なんて声をかけるのが適当なのか」なんてことまで話題になっていました。結局「ミズ・イヴァンカ!」あたりが適当なのだそうで。でも、「イヴァンカっ!」って呼び捨てにして声がけをしていたリポーターもいましたが(笑)。

 で、そんなブーム(?)を巻き起こしてイヴァンカさんが駆け抜けたあとに父親のトランプ大統領が2泊3日、日本に滞在しました。とはいっても、3日目は午前中に韓国に向かって飛んで行きましたから、事実上は2日の日程といってもいいかもしれません。これ、韓国側が「なんで韓国は1泊2日なんだ?日本には3日も滞在するのに」と主張したことに配慮して、早目に韓国に向かったとの説がもっぱらですが。

 実は、大統領にとっても日本にとっても、大事なのはこれから...なんですね。
 「北朝鮮問題」「中国との関係」「インド太平洋戦略」「通商政策を多国間で?それとも二国間で?」といった課題に、日本にいる間に話し合ったことを抱えて、トランプ大統領は韓国、中国、ベトナム、フィリピン...と回ります。ベトナムとフィリピンでは、APECやASEANの会議、さらに東アジアサミットにも顔を出します。ロシアのプーチン大統領とも会談するはずです。
 そもそも関係が良好とされる安倍首相との会談などとは、おそらく段違いに複雑な話し合いをこなさなければならないはずです。日本で約束したことが、ちゃんと生かされるのか...。本当のポイントはここから後、なんですね。
 しかも、本国アメリカでは、トランプ大統領の周辺をめぐる「ロシア疑惑」「パラダイス文書」(これはまた改めて解説する必要がありそうなキーワードです)なんていう大きな課題が待ち受けています。

 「イヴァンカさんがまずやってきました。そのあと大統領が総理大臣とゴルフを楽しんで、晩さん会にはピコ太郎さんも呼ばれました。そして大統領は日本を去って行きましたとさ...めでたし、めでたし」で終わってはいけないお話が、いままさに幕を開けたのです。

 その幕開けの役回りを、少なくとも日本においては見事に演じたともいえるミズ・イヴァンカ。実は、ご自身だって心穏やかではいられない日々が始まるかもしれません。いえ、すでに始まっているはずです。ご主人でトランプ政権の中枢にいるクシュナー上級顧問に関して、実はロシアとの不適切な関係に一枚噛んでいたのではないか...との疑惑が浮上しているからです。
 米経済誌の「最も影響力のある女性」最新ランキングで19位に入ったイヴァンカさん。地球温暖化の国際的な枠組み「パリ協定」からトランプ大統領が「温暖化対策なんていらない!」と離脱しようとした際に、「離脱すべきではない」と反対したのもイヴァンカさんなら、「シリアをミサイルで攻撃すべき」と進言したのもイヴァンカさんとされています(夫のクシュナー氏がユダヤ教徒だったことから、自身もユダヤ教に改宗。熱烈なイスラエル支持者だというのも理解のヒントかも)。
 世界には、早くから「イヴァンカさんこそキーパーソンだ」と目をつけていた人も少なからずいたと聞きます。
 とはいえ、イヴァンカさんの今の役回りは、身内以外に信頼できるスタッフが少ないとされるトランプ大統領だからこそのポジション...ともいえるわけで、その大統領と蜜月関係を構築した日本にとっても、さまざまな意味で大事なのはこれから...といえそうです。


【ニュースなキーワード:1/ミズ・イヴァンカ】
イヴァンカ・マリー・トランプ(Ivanka Marie Trump)。第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプの長女。モデルとして活躍したのち、父親の不動産業を手伝うなどしてビジネスの世界にも。政治の世界を目指した父親をバックアップし大統領当選にも貢献。トランプ大統領にとってイヴァンカ氏と夫で大統領上級顧問のクシュナー氏は強い味方。2016年11月、まだ就任前だったトランプ氏と安倍首相がニューヨークでいち早く会談できたのも、イヴァンカ夫妻が陰で支援したためとされる。