"2人のトランプ"ASEANで初会談

北辻利寿

2017年11月10日

【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】

トランプ米大統領のアジア歴訪は、ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が開催されるフィリピンの地でクライマックスを迎えます。

11月13日からフィリピンのマニラ北西パンパンガ州で開催されるASEAN関連首脳会議は、これに合わせて議長国でもあるフィリピンのドゥテルテ大統領がトランプ大統領と初めて会談する機会になります。
"アメリカ嫌い"と言われているドゥテルテ大統領ですが、その一方で歯に衣着せぬ発言から「フィリピンのトランプ」とも呼ばれています。
すでに二人は電話会談を行っていて、ホワイトハウスの発表によりますと、トランプ大統領がドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待したそうです。
これまでのアメリカ大統領との距離感よりは近いのかもしれません。
どんな初顔合わせになるのでしょうか?

ここでASEANについて簡単に復習しましょう。
ASEAN(Association of South‐East Asian Nations/東南アジア諸国連合は、1967年8月にバンコクで発足しました。今年でちょうど50周年を迎えました。
現在はブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ミャンマー・シンガポール・タイ・ベトナムそしてフィリピンの10か国が加盟しています。
もともとは東西冷戦時代に、旧ソ連に対抗してアメリカ中心に絆を結ぼうとした"政治的な結びつき"の色合いが強かったのですが、その後"経済的な結びつき"へと変わってきました。

外務省の最新資料によりますと、ASEANの実質GDP成長率は2010年以降に持ち直し、現在は安定的な成長を維持しています。
また消費者物価上昇率も一部の国で高かったものの最近は落ち着きを見せています。
そして失業率も全体的に緩やかな改善傾向になるなど、経済全般は安定しています。
日本にとっても、対ASEANとの輸出輸入の貿易は、中国そしてアメリカに次ぐ3位、対世界貿易の15.0%を占める大切な経済パートナーです。

政治から経済へ・・・その結束の性格が変わってきたASEANですが、ここへ来て、再び
政治がテーマになりつつあります。北朝鮮情勢です。
実はASEAN10か国はいずれも北朝鮮と国交があります。
しかし、核ミサイルの開発を進め、アメリカに対して挑発行為を続ける金正恩体制に対し、ASEANとしても静観はできなくなりました。
今回の首脳会談に先がけて10月に行われた国防相会議では、北朝鮮に対し「深い懸念を表明する」共同宣言を採択しました。

そして迎える今回の首脳会談。トランプ大統領は今回のアジア歴訪の最初に日本を訪問し安倍首相と会談、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向けた協力強化、そして北朝鮮へ最大限の圧力をかけていくことで合意しました。
トランプ大統領と初会談するドゥテルテ大統領もこれに先駆けて10月末に来日し、安倍首相と北朝鮮情勢などについて意見交換しています。
ASEAN内には北朝鮮との「融和国」が多いのですが、アメリカ・フィリピン・日本この3人の首脳によるトライアングル関係を受けて、首脳会議の議長を務めるドゥテルテ大統領が北朝鮮対応でASEANの足並みをどう揃えるのか、日本・韓国・中国それぞれも対北朝鮮への対応が微妙に食い違う複雑な国際関係の中で、会議の行方を世界が見守っています。                        
【イッポウ「金曜論説室」より  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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※CBCテレビ『イッポウ』