日本シリーズこれでいいの?

北辻利寿

2017年11月 7日

画像:足成

この制度がなかったら、2007年(平成19年)中日ドラゴンズの53年ぶりの日本一はなかった。

セ・リーグ2位からの日本シリーズ出場だったのだから・・・。

その意味では、この制度を無下に否定はしたくない思いもある。

しかしこれでいいのだろうか?

プロ野球でレギュラーシーズンを終えた上位チームが、日本シリーズ出場をかけて争うクライマックスシリーズ(以下CS)制度である。

 

2017年のプロ野球日本シリーズが終わった。

パ・リーグの覇者である福岡ソフトバンクホークスとセ・リーグ3位からCSを勝ち上がった横浜DeNAベイスターズの熱戦によって、今年のシリーズも盛り上がったと言えるだろう。

特に、シーズンで14.5ゲーム差をつけられていた広島カープをCSで破って日本シリーズに進んだDeNAラミレス監督の采配は「短期決戦に強い」と注目された。

データに基づく緻密な選手起用と勝負どころでの積極的な投手交代によって、3連敗の後に2勝してあわや逆転日本一かと勢いを見せた。

一方のソフトバンクもシーズン中のケガから復帰した内川聖一選手を待っていましたと4番に起用し、また日本一を決めた第6戦で守護神サファテ投手に初の3イニング投げさせた工藤公康監督の采配が光った。

両チームの高度な戦いによって、2017年のプロ野球も大団円となったが、もしあのままソフトバンクが4連勝して日本一になっていたら、おそらく「CS制度はこのままでいいのか?」という議論が持ち上がったはずである。

片方はシーズンで2位に13.5ゲーム差をつけて優勝したチーム、もう片方は1位に14.5ゲーム差をつけられた3位のチーム。

いくらルールだと言っても、日本一を争う対戦なのだろうか?

長いシーズンを戦った重みはどこにあるのだろうか?

広島カープが出場していたらどんな戦いをしたのだろうか?

 

ここで日本シリーズの思い出を辿る。

CSという制度がない時代でもその歴史には数々の熱戦があった。讀賣ジャイアンツが9連覇を達成した期間の1971年(昭和46年)、日本シリーズ第3戦、王貞治選手が、完封を続けていた阪急ブレーブスのエース・山田久志投手から打ったサヨナラ逆転3ランは、ドラゴンズファンながらも感動した名勝負だった。この年が7連覇目だった。

他にも、1978年(昭和53年)ホームランをめぐる阪急ブレーブス上田利治監督(故人)の猛抗議、1986年(昭和61年)最終戦で見せた西武ライオンズ秋山幸二選手のバク転ホームイン、翌年の同じライオンズ清原和博選手の涙・・・。

そして何と言っても、「江夏の21球」として語り継がれる1979年(昭和54年)、広島東洋カープと近鉄バファローズ、3勝3敗で迎えた第7戦。

1点リードでマウンドに上がったカープの江夏豊投手は、無死満塁という絶体絶命のピンチを21球によって抑え、日本一を勝ち取った。

パ・リーグには2チームによるプレーオフがあったが、そのいずれもCSという制度が導入される前のことである。

両リーグの覇者同士による素晴らしいシリーズ対戦であった。

 

2007年からのCS導入によって、シーズン後半の各チームの戦い方が明らかに変わった。

ある時点からはCS出場権を得るため、3位以内に入ることを目標に舵を切るゲームが見られる。

それが首位チームにさらなる独走を許す要因になっているとも言える。

そしてそれは大差での優勝につながり、いわゆる「消化試合」が増えることにもつながる。今シーズンはセ・リーグ6球団の観客動員数が史上初めて1400万人を超え、2年連続で最多更新をしたが、もしCSがなかったなら記録は更新できなかったかもしれない。

CSが果たしている役割は重要だという現実がある。

しかし、プロ野球は選び抜かれた選手がグラウンドで最高のプレイを見せる場、入場料を払って野球場を訪れるファンにとっては一期一会ならぬ「一試合一会」である。

本来CSがなくても「消化試合」などあってはならないと思うのだが・・・。

 

両チームの熱き戦いによって、結果的には盛り上がった2017年日本シリーズ。

広島カープがCSで敗退し日本シリーズに進めなかった時に巻き起こった、CSのあり方をめぐる議論も静かになっている。

"下剋上"の看板を背負ったDeNAの戦いは見事だった。

しかし、これで満足するのではなく、現行のCSのあり方を含めて、NPB(日本野球機構)には常に魅力ある日本プロ野球のために、検証と改善を進め続けてもらいたい。

 

東西南論説風(18)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】