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令和2年度 文化庁芸術祭参加作品

よりそい~静寂と生きる難聴医師~

2020年11月8日(日)深夜1時29分~

2020年「地方の時代」映像祭 受賞決定

「こんなお医者さん 懐かしい」

今川医師の姿を見てそんな思いを抱く患者は珍しくない。

三重県尾鷲市の尾鷲総合病院の今川竜二医師は聴覚障害のある医師。読唇術を使って患者に寄り添う
内科医だ。さまざまな壁を乗り越えながら地域医療に取り組む姿を2年追い続けた。
“2020秋篇”のナレーションは、番組主人公の今川竜二医師本人です。

今村彩子監督が見た「よりそい」

「今までこんなお医者さんに出会ったことがない!!!いいなあ!この病院!」と冒頭からぐいぐい引き込まれました。今川医師の大きな体格と愛嬌のある表情で患者さんに話しかける様子に。
 障害があると自分だけではできないことがあり、必然的に周囲に「よりそってもらう」ことが多くなります。しかし、周りの医療関係者たちは、今川医師に「よりそう」ことで、逆に受け取るものもある。それは今川医師がコミュニケーションの壁にぶつかるたび、どうしたらいいのだろう?と考え、行動に移しているからなのだと気づきました。
 院長先生の「『ハンデを持っているのに頑張っているお医者さん』ではいけない。ハンデを持っているけど、他の医師と同じかそれ以上の仕事をしなくてはいけない」という厳しくも愛のある言葉は今川医師への期待なのでしょう。人は誰しも期待されると嬉しく、エネルギーが沸いてきます。今川医師の今後の姿も見たいと思う番組です。

プロフィール

今村彩子(映画監督)名古屋市出身・Studio AYA
自転車ロードムービー『Start Line』ドイツ・ニッポンコネクション観客賞、ろう・難聴LGBTを取材した『11歳の君へ ~いろんなカタチの好き~』(文部科学省選定)、『架け橋 きこえなかった3.11』などがある。

大園プロデューサーのコメント

前作は2020年3月に放送しましたが、ご覧になった聾学校の生徒・教師の皆様から「今川医師の日常の姿から勇気をもらいました」という声を数多く頂いたのをはじめ、私たち番組スタッフでは感じえない今川医師の凄さも教えて頂きました。
例えば、今川医師が新型コロナ感染拡大前の診療室で、患者さんに対し「すいません。私は耳が聞こえにくいので、ゆっくり話して頂けると助かります。マスクをとって頂けますか?」と話しかけるシーンがありますが、なかなか日常生活の中で他人に堂々と頼みごとが出来ないものだということでした。(頼むと悪いのではないのか・・・)という心理が様々な場面で働くそうです。今川医師に確かめると、「私も初めはお願いしづらかった」とのこと。この番組をきっかけに意見交換の場が広がるとうれしいです。

今回、コロナ禍の今川医師の様子を加えた“2020秋篇”を製作するにあたり、医師ご本人にナレーションに挑戦して頂きました。放送を研究テーマにしている大学教授らに伺うと、「聴覚障がいのある方が、全面的にナレーションを担当するテレビ番組は記憶がない」ということです。
ナレーション収録当日の話ですが・・・
今川医師は両耳に補聴器をつけていますが、発声中、自分の声を自分の体の中では感じることは出来ないということでした。しかし、口の動きの違和感から「今のナレーションはとり直したほうがいいですよね?」と、音のわずかに不明瞭なポイントを私たちに確認することが何度かありました。凄い『語り手』としての姿がありました。

前作は、女優・上白石萌音さんが看護師の目線での語りをしてくださいましたが、今回は、今川医師の主観を織り交ぜながらの番組進行です。
ぜひ、ご覧ください。

構成・プロデュース 大園康志

みどころ

かつて、日本の医師法では・・・

「目が見えない者、耳が聞こえない者、又は口がきけない者には免許を与えない」とされていた。
こうした障害を理由に、一律に免許や資格を認めない欠格条項を見直すため、医師法などを一括して改正する法律が2001年6月22日、国会で可決成立した。

今川竜二は、
その頃、高校生だった。

よりそい~静寂と生きる難聴医師~

小1の時に読んだ漫画“ブラックジャック”に憧れ、
「医師になりたい」と思い続けてきた少年の未来に、一筋の光が差し込んだ時でもあった。

三重県南部の林業と水産業の街・尾鷲市。人口は1万7千人あまり。
生まれつき聴覚に障害がある今川は、内科医としてこの街にたどりついた。
両耳には、補聴器
飛行機のエンジン音が、ようやく音として感じるレベルだと言う。

出身は岡山県。
大学卒業後、勤務した東京の大学病院では、障害を理由に救急や外来での仕事は担当させてもらえず、入院病棟の勤務だけ。
壁は医師や患者とのコミュニケーションだった。

よりそい~静寂と生きる難聴医師~

人の命を預かる仕事、
憧れや意気込みだけでは
周りを納得させることは出来なかった。

もっと役に立ちたい・・・もっと役に立てるはず・・・

2017年10月。
迎えてくれたのは、縁もゆかりもなかった「尾鷲総合病院」
三重県南部の地域医療を担う市立病院だ。
今川は、内科の医師として歩き出した。

よりそい~静寂と生きる難聴医師~

患者の唇の動きで言葉を理解し、筆談を交え、ゆっくりと笑顔で話す今川。
誤解を恐れずに言うと、穏やかな時が流れている診察室。
「こんな医師が、今もいるんだ・・・」
そんな声が院内から聞こえてくる。

よりそいの日々を追った

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ナレーション

今川竜二

今川竜二医師(34)

<勤務先> 尾鷲総合病院 内科
<出身> 岡山県

スタッフ

声の出演
加藤由香
(CBCアナウンサー)
撮影
民部靖人・西島新
音声
齋藤結菜
音響効果
今井志のぶ
ナレーション録音
東海サウンド
タイトル
新田夕岐子
編集
村山翔太
ディレクター
原誠
構成・
プロデューサー
大園康志
制作
CBCテレビ 報道部

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