愛知県岡崎市の瀧山寺は、1300年前(奈良時代)に創建された古刹で、
天台宗の寺院である。
鎌倉幕府、足利氏、徳川家らの恩恵を受け、
三河地方で文化発信の源としてその役割を担ってきた。
境内には国指定重要文化財を有し、
運慶(うんけい)と、その息子、
湛慶(たんけい)による仏像彫刻が
人々の祈りを受け止めている。
そしてもう一つ、大切な文化遺産として鎌倉時代からおよそ800年、
奇祭「鬼まつり」を伝え続けている。
起源は、源頼朝の祈願により始められたと伝えられる。
その鬼まつりに登場する鬼面も運慶作と言われ、
一刀一刀丹念に彫り込まれた古人の念と、
現代の生身の人間の舞いが、天下泰平と五穀豊穣を招く。
鬼(邪鬼)を祓うのが慣わしという
概念がある中、
この祭りに登場する鬼たちは、
彼らが邪鬼を祓う役目を担っている。
ゆえに彼らは、鉞(まさかり)や撞木、
鏡餅など神霊の依り代や、
太陽を意味する道具を手にしている。
この、奇妙にも鬼に福を託した人々の祈りの深さを、1200年代(運慶・湛慶の活動期)から動かず、語らずとも、人々の心の支えとして寺に住まう仏像や、鬼面。
一方で、激しく乱舞する炎、
生身の肉体の躍動との融合の中に見つめる。

