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BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛

CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分

ARCHIVE

2019年4月14日放送
第2回

ニッポンのくらしを高所作業で支える

大久保 佳代子(オアシズ) 大久保 佳代子
(オアシズ)
大水 洋介(ラバーガール) 大水 洋介
(ラバーガール)

スカイツリー窓ふき清掃員 庄子春香さん(22歳)

スカイツリー窓ふき清掃員 庄子春香さん(22歳)

特殊な構造のスカイツリーの窓清掃

高さ634mの世界一高い電波塔・東京スカイツリー。年間400万人以上が訪れる一大観光地でもある。訪れる人のお目当ては、東京を360度見渡せる展望台からの絶景。それをBACKSTAGEで支えているのが、庄子春香さん。彼女の仕事は、展望台の窓の清掃作業。スカイツリーには地上350mと450m、高さの違う2つの展望台があるが、今回清掃するのは高い方の展望台。まずは、清掃用のゴンドラがある展望台の上階へ。そこからゴンドラに乗って、展望台まで降りていく。

ゴンドラに乗り込み、いよいよ作業開始。スカイツリーの展望台の窓は、他のビルに比べて清掃が難しい。その理由は、弧を描く窓の形。窓の上部と下部が斜めになっているため、ゴンドラからかなり身を乗り出さないとうまく拭けないのだ。地上450m、庄子さんの体半分はゴンドラの外。身を乗り出して窓を拭けば当然ゴンドラは揺れる。風が吹けば、なおさら。上の窓が終わると、真ん中の窓へ。手際よく作業を進める庄子さんだが、何気ない手の動きに綺麗に拭くためのワザがある。それは、窓についた洗剤水を切って、跡が残らないようにする“カッパギ”という動作。水の跡や拭きムラがあると、写真を撮った時に特に汚れが目立つため、この技術が大切なのだ。

そして、特殊な構造をしたスカイツリー展望台の窓の中で一番の難所が、下の窓部分。お客さんが足元を見たとき、スカイツリーの高さを最も体感してもらえる重要な場所。だからこそ、少しの汚れも許されない。地上450m、不安定な空中で続けられる作業。はるか下に、地面が見える。下まで拭いたら最上部に戻り、同じ作業を繰り返す。建物を1周するには、66往復。1週間かけて清掃が行われる。

一歩間違えば命に関わる大変な仕事だが、昔から高所で作業する人たちに憧れていたという庄子さん。いつか自分もやってみたいという思いから、この仕事を選んだ。そんな庄子さんの原動力は、 「他のビルと違って、お客さんが中にいる。笑顔になってくれることにやりがいを感じる」
今日も、庄子さんたちが綺麗に拭いた展望台の窓から、多くの人々が東京の美しい景色を楽しんでいる。

海の上の特殊高所技術者 海江田亮太さん(23歳)

海の上の特殊高所技術者 海江田亮太さん(23歳)

ロープ1本で巨大な橋を点検

続いて密着するのは、海江田亮太さん。彼は、高所の点検や補修を行う高所技術者。風車や巨大な橋など足場を組むのが困難な場所や、高所作業車を使えない特殊な場所で仕事を行っている。今回点検を行うのは、大阪市此花区にある「此花大橋」。大阪の市街地と臨海地区をつないでおり、全長1.7km。多くのトラックが行き交う橋で日本の物流を支えている。海面からの高さは、約100m。風を遮るものが一切ないため、強い海風が直撃し、作業は困難を伴うという。

今回は5年に1度の定期点検。作業は10日ほどかけて行われる。海江田さんが点検するのは「主塔」という橋を吊るケーブルを支える場所と、橋を下から支える「橋脚」。どちらも異常があると大事故につながる恐れのある重要箇所だ。まずは橋脚の点検から。橋脚の場所を確認すると、欄干にロープをくくりつけ、それを身体につなぐ海江田さん。全体重をロープ1本に託して、橋の下へと下りていく。そして、いよいよ点検開始。ひび割れなどがないか目視で確認しながら、ハンマーで叩いて異常を調べていく。次の点検は5年後、わずかな損傷も見逃すことはできない。しばらくすると、損傷を発見。損傷箇所にチョークで印をつける海江田さんだが、足場のない空中はとても不安定。損傷の大きさを書くのも一苦労だ。続いて、損傷の状況をカメラで記録。広範囲が写るようにジャンプして撮影を行う。こうして、4時間半かけ点検を行った海江田さん。急を要する損傷は見つからなかったが、仕事はまだ終わりではない。

翌日。この日は、橋を吊るケーブルのつながっている「主塔」の点検。主塔は、橋を支える重要部分。絶対に損傷は見逃せない。主塔を上る手段は“階段”と”はしご“のみ。重さ約20kgの装備で、ビルおよそ23階分の高さを上らなくてはならない。約50分かけて、ようやく主塔の頂上に到着。これだけでも大変だが、本番はここから。主塔の外に出てケーブルの点検に取りかかる。地上は、はるか下。足元は、不安定な丸いケーブル。遮るものが一切ないため、強風が身体に直撃する。
「すごいな風が。ホンマ怖い」
入社3年目。多くの高所作業を経験した海江田さんでも、怖いと感じる現場。しかし、「怖い」と思うからこそ「慎重」になれるのだという。

強風が吹きすさぶなか、ケーブルを慎重に下りていく海江田さん。ケーブルに亀裂などの損傷がないか、細く記録していく。そして見つけたのは、塗装の劣化。すぐに危険のある損傷ではないものの、5年後の定期点検に生かせるよう写真に記録する。続いて、主塔最上部を点検。命の危険と隣り合わせの作業が続く。一歩一歩、とにかく慎重に。こうして、この日の点検が終了。重大な損傷はみつからなかったが、橋全体の安全を確認し終えるまで、海江田さんの仕事は続く。
「この仕事は、人の目につかないところが大半。それでも陰ながら日本の安全を支えることができる」
それが、海江田さんの原動力。これからもはるかな空の上で、私たちの安全のため、仕事に臨む。

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