CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

 共有する
  • Facebookで共有する
  • LINEで送る

偽りのアサリ ~追跡1000日 産地偽装の闇~

2022年3月30日(水)午後9時00分~9時57分 放送

番組トップ

追跡取材3年
「“中国産”では
売れない」アサリ産地偽装の闇

日本の食卓に欠かせないアサリ

アサリの酒蒸し

国内で最も多くアサリが獲れるのは、愛知県。
16年連続で、全国一を誇る。
外海から良質なプランクトンが流れ込む三河湾は
天然アサリの格好の漁場だ。

しかし、愛知を含めて日本国内のアサリの漁獲量は1980年代以降、減少の一途をたどっている。

国内流通アサリの約9割が
中国・韓国産

活アサリの流通量

国内の水揚げが減った分は、外国からの輸入で補われている。
現在は国内に流通する活アサリの実に9割近くが中国・韓国からの輸入品だ。

山口県下関港。
岸壁に並んだコンテナの麻袋には中国から運ばれてきたアサリがびっしりと詰まっている。
冬場はほぼ毎日、大量に陸揚げされる。

ところが。

東京・築地。
様々な産地の海産物が一堂に集まるこの場所で…

Q中国産とか輸入アサリって見たことある?
「ほぼない」(築地の業者)
「ゼロに等しい」(築地の業者)

国内で大量に流通する
“熊本産アサリ”

“熊本産”として販売されるアサリ

CBCテレビが東京都内のスーパー30店舗で調べたところ、中国産のアサリを扱う店はなかった。
その一方、大量に流通していたのが熊本産のアサリ。
21店舗で売られていた。
愛知のスーパーにも、やはり熊本産アサリが並ぶ。

愛知の漁業関係者
「売られているのは熊本産オンリーの勢い」

愛知の漁業関係者

愛知の漁業関係者は・・・

「熊本産が水揚げ量がないのに一般のスーパーで売れているのは熊本産オンリーくらいの勢い。
その中で結局自分たちの県のアサリが扱われなかったり安売りをしなければならない状況に陥ってる」

熊本の干潟で中国産アサリが
熊本産に化ける!?

トレーラーから小型トラックにアサリを載せ替え

“熊本の干潟でアサリの産地が変わる” 3年前、その情報を得た取材班は熊本・有明海に張り込んだ。

深夜、干潟のそばにコンテナを積んだ2台のトレーラーが現れた。
これを大人数で小型トラックの荷台に積んでいく。

アサリを載せたトラックが続々と干潟へ

【記者】「一斉に干潟に入ってきました、何台あるでしょうか。」

トラックが一斉に干潟に入ってきた。
荷台には大量の麻袋。
10台以上が列をなして波打ち際を進んでいく。
麻袋の中身は中国産のアサリ、一袋20キロ入り。

中国産アサリを干潟に撒く業者

大量のアサリを干潟に撒いていた。

そのすぐ横では…

業者は以前に撒いたアサリを回収
→「蓄養」自体は違法ではない

以前、干潟に撒いたアサリを回収

稲刈りに使うコンバインのような機械で、以前撒かれたアサリを回収し青いネットに詰めていく。

アサリを撒く行為は1日2回、干潟ができる干潮のたびに、繰り返されていた。

これは「蓄養」と言い本来、輸入したアサリの鮮度を回復させるためのものでこの行為自体は違法ではない。

地元の水産業者
「中国産を日本産として出す」「産地偽装しないと売れない」

熊本の業者

地元の水産業者は 2019年当時の取材にこう打ち明けていた。

「中国産で浜に入れて日本産で出す」

Q蓄養することで熊本で育てたと?
「そういう風になるんです。」
「偽装しないとアサリが売れない。
 普通にやってるのはバカらしいんです。結局」

偽装された“熊本産”アサリは全国の卸売業者に出荷されるという。

アサリ産地偽装の当事者が告白
「輸入アサリのほぼ100%が
熊本産に偽装」

「善明」吉川昌秀社長

この干潟で産地偽装をしていた当事者がCBCテレビの単独取材に応じた。

福岡県柳川市の水産加工会社「善明」(ぜんめい)の、 吉川昌秀(よしかわ・まさひで)社長34歳。
産地偽装の過去を認め、偽装の手口を語った。

「中国の輸出業者にお願いして成育期間を(書類上)これくらいにしてほしいというのはお願いできます。 国内での成育期間に関しても蓄養記録を作って、入れた日にちと出荷した日にちを蓄養記録として、嘘の蓄

養記録ですけど残せばいいだけなので」

食品表示法によると蓄養した水産物は原産国より長い期間、日本国内で育てた場合に限り、国産と表示できる。
吉川社長はこの決まりを悪用し、書類上は中国で育った期間よりも熊本で蓄養した期間の方が長くなるように見せかけていた。

Q今も熊本アサリの産地偽装は続いている?
「続いていますね。」

熊本県はかつて全国でも有数のアサリの産地だったが、近年は深刻な不漁が続いている。

Q輸入アサリのほぼ100%が熊本県産アサリに偽装されるということ?
「100%と言うとちょっと言い過ぎかもしれないんですけど、ほぼ100%という言い方が正しいと思います」
「私の経験上、私も輸入量のほぼ100%を熊本県産にして売っていましたので」

産地偽装撲滅のための協議会が発足

二枚貝類産地偽装撲滅協議会

吉川社長は過去の行いを反省し、去年秋、産地偽装の撲滅に向けて協議会を立ち上げた。

集まったのはアサリの輸入や販売を行う業者たちだが、しかし、賛同したのはごくわずか。

偽装撲滅協議会メンバー
「中国・韓国産と表示すると
ほとんど売れない」

協議会のメンバー待鳥恭右さん

協議会に参加した待鳥恭右(まっとり・きょうすけ)さん。

去年10月から、正しく外国産として出荷したアサリのみを扱い始めたが…

「中国産や韓国産はほとんど売れない状態」
「(熊本産を)卸していたところもやっぱり韓国産はダメとか中国産はダメとかになったりもある」
「中国産や韓国産はほとんど売れない状態」
「(熊本産を)卸していたところもやっぱり韓国産はダメとか中国産はダメとかになったりもある」

中国産や韓国産のアサリを買ってくれる卸先が見つからずほとんどが在庫になっているという。

正しく“中国産”で出荷

天草うまかアサリ(中国産と表示)

吉川社長らが訪れたのは、熊本県の蓄養場。
この場所で外国産アサリをブランド化する計画を進めている。

「きちんと蓄養期間を管理して例えば身入りだったり味が変化するところまで含めてもっと付加価値を付けて」

干潟に入れてすぐに取り出すこれまでの蓄養とは違い、1か月程度干潟で育て身が大きくなり、食べごろになってから回収。

「産地偽装しなくても成り立つ業界に」

「産地偽装しないと売れないもっと深刻な業界だったので、だからこそただやめるだけでは成立しない」

「産地偽装しなくても成り立つ業界に変えていきたい」

  • 番組トップ

pageup