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歳月の彼方から見えてきた?ドラゴンズ日本一試合での投手リレーの“真実”

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歳月の彼方から見えてきた?ドラゴンズ日本一試合での投手リレーの“真実” | ドラの巻【昇竜復活へ!CBC中日ドラゴンズ情報】 | CBCテレビ・CBCラジオ

過去に何度も見てきた映像をしばらく時間が経った後で見ると、新しい発見に気づくことがある。数々の名作映画もそうだ。いい映画は何度見返しても感動と共に、新たな驚きがある。この春、プロ野球のアーカイブ映像でそんな体験をした。中日ドラゴンズが53年ぶりに日本一を達成した2007年11月1日、ナゴヤドームでの日本シリーズ第5戦である。

■賛否両論の投手交代劇

この試合映像は、NHK-BS1が『あの試合をもう一度!スポーツ名勝負』と題して、2020年4月7日の19時から全国放送した。全イニングである。
試合結果は当然知っている。1-0でドラゴンズが北海道日本ハムファイターズを破り日本一になるのだが、この試合が今なお注目され続けている由縁、それは8回まで完全試合を続けていた山井大介投手を9回に岩瀬仁紀投手に交代したドラゴンズベンチの采配、もっと言えば、落合博満監督の采配だった。交代は是か非か、当時ゲームセット直後からファンや野球評論家から様々な声が飛び交ったことを記憶している。

■結末を知った上でテレビ観戦

アーカイブ放送があったのは、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、政府が「緊急事態宣言」を出した夜だった。午後7時から安倍晋三首相の記者会見が行われていた。
この試合については当時の実況中継を録画保存していて見たいと思えばいつでも見ることができることもあって、リアルタイムで見ることもあらためて録画することもしていなかった。
そんな中、首相会見やそれに伴う報道がひと段落ついた頃に、九州にいる友人から「見ていますか?」とメールが届いた。おもむろにチャンネルを合わせてみると、ちょうど8回裏のドラゴンズの攻撃中だった。この後の試合の流れも、そこで“起きること”も当然知っている。犯人を知った上で見るミステリードラマのようだった。しかし極上のミステリーは結末を知っていても何度でも味わいたい。同じようにこの試合は、竜党にとっては何度でも見たいゲームなのである。そのまま最後まで見続けてしまった。

■球場の大歓声がよみがえった

8回裏、ナゴヤドームはドラゴンズ待ちに待った日本一と「山井大介の完全試合達成」との期待から異様なムード、その熱さが画面を通してガンガン伝わってくる。ベンチに座る落合監督の表情は淡々と戦況を見つめている。実はこの時、すでに山井投手の完全試合をあきらめて絶対の“守護神”岩瀬投手への交代は決まっていた。8回裏の攻撃が終わり、スタンドから怒涛のような「山井コール」巻き起こる中、ベンチからスクっと立ち上がった落合監督はまったく表情を変えることなく、球審に投手交代を告げた。

■完全試合を彩った名場面たち

9回表、岩瀬投手はファイターズ打線を3人で切って取る。結果、ドラゴンズは山井、岩瀬という2人の投手によって「完全試合」を達成して、実に半世紀以上ぶりに日本一の栄冠を手にしたのだった。
この夜、映像を見て気づいたことは多かった。マウンドに向かう岩瀬投手の最初は青白かった顔が、少し紅潮した後に、平時の表情に戻ったこと。交代後にベンチに座った山井投手が時おり笑みを見せながら周りの選手と談笑していたこと。日本ハムベンチには、現在“侍ジャパン”を監督として率いる稲葉篤紀選手がいたこと。そして最後の打者となった小谷野栄一選手のセカンドゴロは、実はとても難しい打球であり、それを荒木雅博選手が走りながらの見事なスローイングで1塁アウトにしたこと。
中でも、度々画面に映し出されたが、完全試合達成を目前に交代したベンチでの山井投手の晴れやかな表情こそが、当時議論を呼んだ“投手交代”の真実を表しているように感じた。

■落合監督その言葉の真意は?

優勝直後のインタビューはどんな人をも正直にすると思う、ましてや日本一達成直後となれば。そしてそれは百戦錬磨の落合博満監督とて同じことであろう。
勝利監督インタビューの中で、落合監督は2回も「山井」の名を挙げて褒め讃えた。それもアナウンサーの質問の中に「山井」という固有名詞がなかったにもかかわらず、自ら名前を挙げた。
「今日の山井は完璧だった」そして「まさか山井があそこまで放ってくれるとは」。
この2つの褒め言葉の真意は何だったのだろう。山井投手は続投したがっていたのか?
大記録をあきらめさせた山井投手への気遣いか?「よく投げてくれた」との労いか?
いや、すべて違うように思えた。
あらためて勝利監督インタビューを見て思ったことは、野球をこよなく愛する“落合博満”というひとりの野球人が「いいものを見せてもらった」と心から純粋に嬉しがっていたのではなかったか。そんな指揮官の表情だった。

■山井投手の晴れやかな笑顔

時間が経過しても明らかにならない真実もあれば、逆に映像に記録されて色あせない真実もある。交代してベンチに戻った山井投手の晴れやかな表情、優勝監督インタビューで山井投手を讃えた落合監督の言葉、そして何よりも、ドラゴンズが2度目の日本一を球団史に刻んだという事実。この3点から、あの投手交代の瞬間に再び思いを巡らすことができた13年後の春だった。
背番号「13」の岩瀬投手が「13」球を投げて実現した日本一、その感動から「13」年の歳月が流れた。そんな不思議な数字の因縁に感慨を覚えながら、早く野球場に出かけて“生”の感動を味わう日が来てほしいと心から願った。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

画像:「サンデードラゴンズ」より山井大介投手と現役時代の岩瀬仁紀さん(C)CBCテレビ

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