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あらすじ

スペシャルドラマ「月に行く舟」
スペシャルドラマ「月に行く舟」

岐阜の山間の小さな駅に佇む一人の女・理生。
列車が行ってしまっても
そのままホームのベンチに座り続けていた。
その駅にやってきた一人の男・涼太。
涼太はこの町に住む大御所作家・佐々波慶太郎から
新刊雑誌に連載するエッセイの原稿をもらい帰るところだ。

次の列車にはまだ時間がある。待合室で理生を見かけた涼太は、
空腹のため近くに喫茶店がないか理生に尋ねる。そのとき理生の傍らの白杖が目に入り、
彼女の眼が見えないことを知る。
教えられた喫茶店に行ってみるとそこはつぶれていた。
涼太がしかたなく駅に戻ると理生が自動販売機で飲み物を買おうとしていた。
ハッと思い当った涼太は走り寄り声を掛ける。「買いましょうか!」
ガタン。その時飲み物が落ちる音が。
「もう買っちゃいました。」と屈託なく応える理生。
冷たいコーヒーが出るか賭けをしていた理生、
しかし出たのは温かいコーヒー、涼太はすばやく冷たいコーヒーを自分で買い理生に渡す。
「はい。当たりでした」。
受け取り、微笑む理生の顔に見入ってしまう涼太。

缶コーヒーを飲みながら待合室で話す二人。
涼太は自分が出版社の人間で佐々波先生から原稿をもらいに来たこと、
その内容は奥様に関するエッセイであることなどを話す。
やがて涼太の列車の時間が近づき、二人はここで別れを告げる。

スペシャルドラマ「月に行く舟」

涼太が去った後、理生は風に揺れる小さな音に気付く。
かさかさ・・・
その音の方向に手を出すと紙袋のようなものが。「!」 
理生はそれを手にすると白杖を持って改札のほうへ。
「あの!忘れものじゃないかと思うんです!」
「大切な原稿じゃないかって!!」
理生が原稿だと思った紙袋は
佐々波からもらったお菓子の包みだったが、
涼太はありがたく紙袋を受け取る。
結局涼太はその列車に乗れず、空腹もピークに・・・。
実は喫茶店がつぶれていたことを知った理生はもう一軒カレーが評判のカフェを教える。
「あの、そこに一緒に行きませんか?」
「えっ・・・?」
「お礼に」と紙袋を持ち上げる。「お茶でもごちそうします」
こうして初めて出会った二人のささやかなデートが始まった・・・。

列車を待つ間の短い時間。
やがて、女は、どこかに行くために、駅にいたのではない、と男に告白する。
あそこで、ある人を待っていた、と・・・。

たった数時間、駅で隣り合わせた男と女の一風変わったラブストーリー。

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