２人の子をもつ明るくエネルギッシュな女性。地方都市在住。主婦業の他、保護司、ＤＪの仕事も務めている。明子は大学時代から一時ＤＪをしていた経験があり、５年前に地元のコミュニティＦＭ「エフエムきじま」のＤＪになる。地元の普通の人たちを巻き込んで番組は進み、人気を集めた明子は保護司に推挙されることに。持ち前の元気と若さで、出所後の少年たちや保護観察処分の少年たちと真正面からぶつかり、更生の手助けをしている。明子は１０歳だった長男を病で亡くしており、子供のためにもっとやってやれなかったかという思いが常にあった。そんな思いも、彼女の保護司としての務めに熱く反映されている。そして明子は、社会に戻りつつもなかなか周りになじめず、再び傷ついて罪を重ねそうな少年たちのために、ＤＪ番組を少年院の中で流すことを思いつく。

　明子が担当する保護観察処分の少女。幼い頃から、両親から虐待、育児放棄をされて育った。１０歳の頃、耐え切れず自ら施設に入るが、すぐに両親に連れ戻される。生きるために自分で稼ぐしかなかった梨枝子は、援助交際を始める。梨枝子には罪悪感などなかった。大人たちは金をくれるし、何より「優しく抱いてくれた」。「愛している」とさえ言ってくれた。今まで親にさえそんな扱いを受けたことのない梨枝子にとって、それは幸福な時だった。１５歳のある日、援助交際が発覚した梨枝子は保護観察処分となり、保護司の明子と出あう。梨枝子にとって「本気で叱ってくれる」のは明子が初めてだった。

　梨枝子の父。８歳の時に両親が離婚し、父に引き取られた。母親はその後行方不明に。父は酒乱で、その度に虐待を受けて育つ。彼もまた、親の愛を知らない人間なのだ。トラック運転手の頃、事故を起こして定職を失ってからは、砂利運搬、運送会社の配送、パチンコ屋など職を転々とする。現在は無職で、酒びたりの毎日である。

　梨枝子の母。水商売をしていた母親の脛をかじってフラフラしていた１７歳の頃、洋三と知り合う。１９歳の時に洋三と同棲、翌年妊娠、結婚した。洋三は稼いだ金を酒と博打につぎ込み生活は逼迫。けんかをした時、弘美は梨枝子のことを洋三に「本当に俺の子か？」と言われ、梨枝子を生んだことを後悔する。弘美は生活費を稼ぐために働きに出るが、小さい梨枝子がいるために何かと制限され、梨枝子を憎むようになる。夫の洋三が働きに出ないため水商売で稼いでいるが、実は店の客で好きな男がいる。

　明子の夫。建設会社社長。保護司としての明子の活動を応援しているが、その仕事のハードさを心配している。

　明子の長女で、大学三年生。実家を出て、ひとり暮らしをしている。

　窃盗、恐喝、暴行などで少年院に入り、退院後に明子が担当している少年。４歳の時に生母が亡くなり、父は隣りに住んでいた子持ちの女性と再婚。義母は満の母親になろうと懸命になり過ぎ、満は反発と不信を増幅させる。満は家庭内暴力、家出を繰り返し、仲間との交流だけが心の安らぎとなった。両親の気持ちが理解できない満は、言葉では説明できない心のうちを暴力でしか発揮できない。満の家庭はこれという悪者もいないのにギクシャクしており、一触即発の緊張状態だ。明子は満に親の思いをわからせようとし、同時に親たちにも思いの押し付けはやめ、満を「信頼」してやってほしいと助言する。満にとって明子は母のような存在で、嬉しい時、悲しい時、何かと報告してくるのだった。

　保護司として明子が少年院を見学した時に出会った少年。犯した罪を心から反省し、花に水をやる係をかって出た。その花は彼の母が好きだった花だという。その姿に心打たれた明子は、保護司として少年達が社会に出てから対面するだけでなく、少年院にいる間にも何か出来ないかと考え、少年院向けの院内放送を思いつく。

　若き大工。明子の、亡くなった長男・俊介の同級生で、友人。７年前に非行で高校を退学になる。原因は両親の離婚で、辰夫は母の再婚相手とうまくいかなかったのだ。辰夫の寂しさを知った明子は、彼をなぐさめ、時にはぶつかりながら一緒に闘った。そして辰夫は、明子の紹介で下請けの大工の棟梁・重松巖に預けられる。今、辰夫は修行に耐えて一人前の大工になり、巖にとってなくてはならない存在になった。人間的にもたくましくなった辰夫は、明子の担当する田島久志を、大工の仕事の後輩として受け入れ面倒を見ている。

　名古屋のホストクラブのホスト。梨枝子と付き合っているが、他にも付き合っている女がいる。梨枝子もそれは承知しているが彼から離れることができない。そんな梨枝子の純情をいいことに、金を貢がせている非常な男。

　明子が担当する保護観察処分の少年。小さい頃、離婚した母に引き取られて育った。母の再婚相手の義父とうまくいかず、虐待される。それに母は気づいていたが見て見ぬふりをし、久志は母にも不信感を募らせる。根は優しい少年なのだが、人との付き合い方が分からず、仕事に対しても意欲はあるのだが根気が足りないのだ。明子はそんな久志に「生きる意欲」を持たせようと何度も仕事を紹介するが、その度に久志は挫折。しかし後に、久志は辰夫から知人の農家を紹介され、そこでは仕事を長続きさせている。

　大工の棟梁。明子の紹介した保護観察処分の少年を弟子として受け入れたりするなど、優しい面を持っている。

　喫茶店「ポルト」のマスター。ギターの弾き語りが趣味。明子のFM番組の応援団。

　明子のＤＪをつとめる「エフエムきじま」のディレクター。本業は呉服屋である。明子の保護司としての活動の良き理解者。

　小学校の教諭。本業のかたわら、「エフエムきじま」で投稿ハガキの仕分けなどの手伝いをしている。