2025年のプログラム

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欧州で引っ張りだこのシャニと、舞踊や絵画とのコラボで芸術の幅を拡げる庄司。
進境著しい彼らによる珠玉の名曲を!
ラハフ・シャニ 指揮
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
15:00開演
 愛知県芸術劇場コンサートホール
ラハフ・シャニ 指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

ラハフ・シャニ 指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
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若手指揮者の中でもとりわけ注目を集めている、ラハフ・シャニ。ピアニストとしても名手の彼が、2018年にロッテルダム管の首席指揮者に最年少で指名されて以来、正攻法かつ骨太の音楽で人気を博している。
ヨーロッパの主要なオーケストラや劇場から引っ張りだこのシャニが、今回、手兵のオケを率いて名古屋へ初登場!

ソリストは、現在ヨーロッパを拠点に活躍中の日本を代表するヴァイオリニスト、庄司紗矢香。1999年、パガニーニ国際コンクールにて史上最年少で優勝以来、国内外で演奏活動を行っている。最近では、舞踊とのコラボレーションや、絵画やビデオを駆使した実験的な視覚音楽プロジェクトなどを手がけて芸術家としての幅を拡げている。

そんな進境著しいシャニと庄司による名曲中の名曲は、必聴です!

指揮者:ラハフ・シャニさんからのメッセージ

指揮者:ラハフ・シャニさんへのインタビュー

Q. 2018年から音楽監督を務めているロッテルダム・フィルと、2年ぶりに来日されます。この2年でオーケストラに変化を感じていますか?

はっきり感じていますね。お互い理解を深めながら、進歩している実感があります。オーケストラのメンバーによると、子供が生まれて父親になってから私は何かが変わったそうで、彼らはそれをずいぶん気に入っているみたいです。リハーサルのやり方も変わり、私の中に今までとは違った種類の想像力やエネルギーを感じるのだそうです。

Q.シャニさんの変化がオーケストラも変化させたのですね。
その変化の理由が、子どもの世話で私が疲れているからでないといいのですが(笑)……でもよく言われるように、子供の存在によってより愛に満ちた状態になっていることが伝わっているのではないかと思います。私にとっては彼らも愛する大切な友人ですから、コミュニケーションの取り方に変化が生まれたのでしょう。
それともう一つ、近年、若いメンバーが加わったことも大きいです。みんな学び、成長しようとする意欲に満ちていて、技術的なピークに達している実感があります。今、オーケストラは最高の状態といえるでしょう。

Q.ロッテルダム・フィルにはどんな特徴がありますか?
とても生き生きとして活力があります。マナーはしっかりとしていながら、フィルターを通さない率直な表現をするオーケストラです。すべてを正確に、完璧にすることだけを目指すのではなく、キャラクターをそのまま表に出すことを大切にしているのです。もちろん正確な演奏はできますが、演奏の精度を目的にしているわけではない、ということです。
自発的で、瞬間をしっかり感じ取りながら全体の雰囲気を意識して演奏しているので、毎回異なる何かを生み出すことができます。

Q.オーケストラ全員がその場で音楽を生み出すことを心がけているのでしょうか?
いや、心がける必要はないんです。むしろあえて心がけたり、慎重になったりすることは、忘れたほうがいい。指揮台に立つ私が自発的に行動し、リスクを取ることで、自然と彼らの演奏も良い状態になります。
もし私が明確な指示をし、はっきりとしたビートを打ち、すべてを正確にしようとすると、精度の高い演奏にはなりますが、とても退屈になるでしょうね。
このオーケストラにとって必要なのは……少なくとも私たちの関係においては、常に音楽に没頭し、心が動く状態で、瞬間ごとに音、フレーズ、気持ちを変化させていくことです。私が音楽の中に入り込むことで初めて、オーケストラは他ではない特別な反応を示してくれるようになるのです。

Q.オーケストラに受け継がれてきた性格や歴史については、どんなことを感じますか?
そういう面があることが、オーケストラの不思議な魅力ですよね。
オーケストラは生命体のようです。メンバーが新しい世代に入れ替わってから数年後でも、そこにはまだ何かが残っています。
たとえばイスラエル・フィルは、私が初めてピアノで共演したのが2005年なので20年の変化を知っているわけですが、メンバーの多くは入れ替わり、音にも変化がありながら、残っている特徴もとても多いと感じます。
実は私はこのことについて考えるのが好きなんです。
以前どこかで読んだのですが、私たち人間の体は、古くなった細胞は新しいものに置き換わり、約10年ですべてが入れ替わるそうです。それでも私は同じ人間であり、記憶や性格は受け継がれている。 今の私の中に10年前までの細胞は一つも残っていないのに、私は私なんです。これってとってもおもしろいですよね。
オーケストラの記憶や性格も、同じような形で受け継がれているのではないかと思います。

Q.6月の日本ツアーではどのような作品が選ばれているのでしょうか?
これまでロッテルダム・フィルと共演して、彼らと演奏することで独自のものが生まれると特に感じている作品を選んでいます。
まず取り入れたかったオランダの作曲家からはワーヘナールを、そこにあわせて選んだのは、多くのオーケストラが演奏している名曲です。有名曲にはあらゆる解釈がありますが、ロッテルダム・フィルの前に立つと、自然と新しいものが創り出され、幾度も聴いたことのある作品だったのを忘れて音楽の本質に耳を傾けることになります。

Q.ブラームスの交響曲第4番にはどんな想いがありますか?
これは私がロッテルダム・フィルと最初期に共演した曲の一つです。ブラームスは大好きな作曲家で、洗練されていながら親密なものを感じ、表面的ではなく深いところで感情を動かしてくれます。

Q.もう一つのプログラムではドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を選ばれました。日本でもとても人気のある作品です。
私が初めて「新世界より」に触れたのは、指揮者である父の演奏でした。15歳くらいの頃、父が指揮するイスラエルのオーケストラの中で、私はコントラバス奏者としてこの曲を弾き、すぐ大好きになりました。
広く愛される有名なメロディを持っていますが、作品全体を聴いて初めて、これが単にキャッチーなフレーズを持つ音楽以上のものであることに気づくでしょう。ハーモニーや音色からは、ワーグナーの影響も感じられます。
シンプルで理解しやすいけれど、同時に独創的で、ドヴォルザークの天才性が感じられます。

Q.ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲では庄司紗矢香さん、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ではブルース・リウさんをソリストに迎えます。
サヤカとは以前イスラエルで共演しましたが、すばらしい音楽家ですからとても楽しみです。ブルースとは以前、ロッテルダム・フィルとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏しました。

Q.シャニさんご自身もピアニストですが、ブルースの印象はいかがですか?
私がピアニストでなくても、彼のすばらしさはよくわかると思います! 卓越した技術、自発性、生き生きとした魂、そして美しい音を持つピアニストです。

Q.プロコフィエフの3番は、シャニさんがピアニストとしてもレパートリーとしている作品です。以前小曽根真さんが指遣いをアドバイスしてもらったとおっしゃっていましたが。
覚えていますよ、ハノーファーで初めて共演した時のことですね! その時の演目は別のものだったのですが、彼はリハーサルの後、練習室で、近いうちに本番があるというプロコフィフをさらっていたんです。ドアの向こうから聞こえてきたのでノックして話しかけてみると、弾きにくい箇所があるというので、自分が普段やっている別の指遣いを提案しました(笑)。数年前、ついに彼とこの曲で共演できたのは嬉しかったですね。

Q.指揮者、ピアニストの視点から見て、プロコフィエフ3番の魅力は?
演奏していても、聴いていてもとても満足度の高い作品です。シンプルでありながら内容が凝縮されていてます。私はロッテルダム・フィルとこの曲を弾き振りしていて、その動画はYouTubeにもあります。私はプロコフィエフが大好きで、彼の書くものすべてが好きだといっても過言ではありません!

Q.ピアニストでもある指揮者ならではの特徴はありますか? ピアニストの活動とどのように両立させているのでしょうか?
若いころはピアニストを目指していて、指揮者という選択肢は頭にありませんでした。でも高校のオーケストラでコントラバスを始めたことで、オーケストラの音楽に恋をしたんです。演奏しながらさまざまな声部を聴くことで、音楽への理解が変わりました。
オーケストラのコントラバス奏者になることも考えましたが、当時から自分の中に、オーケストラにどう演奏してほしいのか、奏者同士をどうつなげるべきなのか、選ぶべきテンポや音色についてはっきりしたアイデアがあるのを感じていました。それが単なる想像上のことなのか、オーケストラを前にしてできることなのかわからずにいたのですが、実際に試してみようと思ったことが、私を指揮の道に導きました。
ベルリンで指揮を学ぶようになった5年のうちの2年間、私はピアノを少し疎かにしていました。
しかしあるときダニエル・バレンボイムに会う機会を得ました。彼が私にピアノで何か演奏してほしいと言うので、半年くらい弾いていない決して良くないコンディションながら、ベートーヴェンのピアノソナタを弾きました。すると演奏を最後まで聴いた彼は、こう言いました。
「君には指揮者として未来があると思うけれど、もし私が君の立場ならピアノはやめないし、もっと本気で取り組むと思う。数年後、ピアノがうまくいかず指揮をしたいと思えば、その道を選べばいい。でもその逆……20代前半の今、指揮に専念して、数年後にピアノも弾きたいと思っても、それは難しい。指揮とピアノはそこが決定的に違うのだよ」
私は彼が自分のピアノを気に入ってくれたことがまず嬉しかったし、そして他でもない、ピアノと指揮を両立するお手本のような彼の言葉ということもあって、アドバイスをそのまま受け止め、すぐ再びピアノを勉強し始めました。

Q.ピアニストはよく「オーケストラのこの音をピアノで表現したい」とおっしゃるのでそういう発想から指揮をするようになったのかと思いましたが、少し違ったのですね。
そうとも言えるし、そうではないとも言えます。確かに私の場合、オーケストラで演奏する経験によって指揮に導かれたわけですが、あなたのその話と矛盾しているわけではありません。
例えばブラームスのピアノ・ソナタを演奏するなら、手だけでオーケストラのような音楽を奏でようとします。ピアノはニュートラルな楽器なので、豊かなイマジネーションさえあれば他の楽器の音の印象を生み出すことができます。ピアニストは常にオーケストラの複数のプレイヤーの声を想像しながら演奏する習慣を持っていますから、指揮者になることは、他の楽器奏者よりも楽なのです。
ただ唯一欠けているのは、レパートリーをオーケストラ奏者として内部から知る経験です。私の場合はコントラバスの経験があるので、指揮をするうえではその両方が活かされています。

Q.さまざまな指揮者のもとで学ぶ中、最も大きな影響を受けたのは?
まず前述のバレンボイムは、音楽家、そして人間として、多くの影響を与えてくれました。ズービン・メータは、私が初めて出会った世界的な指揮者で、たくさんのインスピレーションをもらいました。
私は2009年からベルリンに移りましたが、音楽家としてこれは幸運なタイミングでした。ベルリン国立歌劇場ではバレンボイムが、ベルリン・フィルではサイモン・ラトルが、そしてコンツェルトハウスではイヴァン・フィッシャーが指揮していた頃ですから。三人の指揮者はそれぞれ異なり、多くのことを教えてくれました。
メータは私がベルリンに越したとき「できるだけ多くのリハーサルに行くように」とアドバイスをくれました。私は学校が終わると毎日のように誰かしらのリハーサルを聴きに行きました。指揮者がどうするとどんな結果が生まれるのか、優れたマエストロはどのように目指す音楽を達成していくのかを観察することで、多くのことを学びました。

Q.偉大な指揮者を見て学ぶことも多い中、作品については自分の解釈を見つけなくてはならないと思います。そのうえ指揮者は自分で音を出さないため、その解釈について奏者から合意が得られなければいけません。どのように実現していくのでしょうか?
指揮者は自分で音を出すわけではありませんが、オーケストラの音に大きな影響を与えます。偉大な指揮者はその強いパーソナリティにより、何も言わなくても、時にはほんの少し何かを示すことでオーケストラの音を変えることができます。強い考えを持ち、多くのことを感じている指揮者は、オーケストラに自然と自分の考えを投影できるのです。
私とロッテルダム・フィルの関係についていえば、普通なら時間をかけて語り合うことが必要な場面でも、お互いを深く理解しているので、言葉を超えたコミュニケーションを通じて、あらゆる音を鳴らすことができます。まるで一つの心を持っているといえるほどなんです。
一方、有名な曲にどうアプローチするかという話ですが、ここで私が一番したくないのは、過去や現在の他の指揮者と自分を比べることです。それは自分の心を乱し、アイデンティティを奪う行為です。
独自のものを生み出す唯一の方法は、楽譜を読み込むこと。そうすれば、作曲家とダイレクトに接触でき、自分の視点から作品を理解して、ユニークな何かを生み出せるかもしれません。
もちろん演奏を聴いて学ぶことは大切ですが、そこからアイデアをピックアップしようと考えることはありません。1楽章のテンポはクレンペラー、2楽章のテンポはカラヤンのアイデアがいいな!と思ったところで、うまく行くはずはありませんから。
一貫した考えのもとで音楽を理解するには、楽譜を正しく何度も読むこと以外に道はないのです。

指揮
ラハフ・シャニ
管弦楽
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン
庄司紗矢香

プログラム

  • ヨハン・ワーヘナール:序曲「シラノ・ド・ベルジェラック」 Op.23
  • ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
  • ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 Op.98

公演日

2025年6月22日(日)
【開演】15:00

会場

愛知県芸術劇場コンサートホール
アクセス方法はこちら

料金

S
¥20,000
A
¥17,000
B
¥14,000
C
¥11,000
D
¥9,000
U25
¥3,000
  • ※車椅子席(S席)はアイ・チケット(電話)での取扱いとなります。
  • ※入場料金には消費税が含まれます。
  • ※やむを得ない事情でプログラム内容、出演者など変更になる場合がございますのでご了承ください。それにともなうチケットの払い戻しはいたしません。

チケットのお求めは

  • アイ・チケット
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名古屋フィルハーモニー交響楽団
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ミハイル・プレトニョフ ピアノ・リサイタル

ピアノ:
ミハイル・プレトニョフ

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ラハフ・シャニ 指揮
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

指揮:
ラハフ・シャニ
管弦楽:
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:
庄司紗矢香

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山田和樹 指揮
バーミンガム市交響楽団

指揮:
山田和樹
管弦楽:
バーミンガム市交響楽団
ピアノ:
イム・ユンチャン

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ジョナサン・ノット 指揮
スイス・ロマンド管弦楽団

指揮:
ジョナサン・ノット
管弦楽:
スイス・ロマンド管弦楽団
ヴァイオリン:
HIMARI