認知症に国家戦略

後藤克幸

2015年1月 8日

 認知症の高齢者が10年後の2025年には、700万人に達するという推計が、厚生労働省から発表されました。現在460万人余りとされていますから、約1.5倍に増える計算です。

 医学・医療の進歩によって人類は、長寿を実現した一方で、認知症という病と向き合う宿命を負ったともいえます。昨年秋、認知症予防をテーマにした国際会議が東京で開かれ、その中で日本政府は、認知症対策を国家戦略と位置づけて取り組む姿勢を表明しました。国際会議ではまた、世界中の研究者が、認知症予防と治療の研究に取り組んでいる現状も報告されました。

 最近の研究によって、認知症になりにくい生活習慣があるらしいということが、しだいに明らかになってきています。

 認知症の専門医にお話を聞いたところ、認知症の予防につながる生活習慣には、以下のような項目があげられるといいます。 

①    旅行が好き
②    日曜大工や庭いじりが好き
③    楽器の演奏や歌を歌う趣味がある
④    ボランティア活動など社会参加活動に積極的
⑤    よく歩きよく運動する

 これらには共通点がありますね。それは、家に閉じこもらないで人と会い、会話し、頭を働かせて考え、さらに手先や体を動かすことです。
 旅行をすれば、知らない土地で知らない人と会い、よく歩いて新しい風景や文化に触れ、その土地にしかない美味しい食べ物を探す。好奇心がおおいに刺激されます。
 日曜大工や庭いじりも、材料・素材をそろえて、創り出すものや庭のデザインを考えるのはまさに頭の体操。手先も使います。
 楽器や歌は、楽譜という抽象的な記号を読んで音や声を出し演奏しますね。これはとても知的な活動です。しかも、バンドやアンサンブル、合唱となれば、仲間とわいわい会話しながらの楽しいコミュニケーション活動でもあります。
 そして、週に3日以上、適度な運動を続ける人も、認知症になりにくいという調査研究結果もあるということです。

 認知症について、さまざまな角度からの研究が進展し、
科学的根拠のある情報が公開されることで、
健康寿命を延ばしていけるように期待したいですね。