hicbc.com：山田太一スペシャル2005　いくつかの夜

中谷恒平（緒形拳）は68歳。数年前に公務員を退職し、今は息子夫婦と二世帯住宅に住んでいる。妻とは８年前に死別し、息子夫婦とは折り合いが悪く、心寂しい毎日を送っていた。ある晩遅くのこと、恒平は家に帰る気がせず名古屋駅近くで24時間営業のマンガ喫茶に足を踏み入れた。彼はそこで、一人の若い女・百合（鶴田真由）が倒れるのに遭遇する。見ず知らずの女性だが、恒平は店長・井沢俊也（内田朝陽）と共に救急車に乗り込み、病院に送り届ける。百合は自殺をはかったらしい。
数日後のこと、突然、恒平の家に百合が先日の礼を言いに訪れる。若い美女の来訪にドギマギする恒平。百合は昼食を作ってくれ、恒平は久しぶりに楽しい時を過ごす。その際恒平は何気なく百合に先日倒れた時に何があったのか聞きだそうとするが、彼女は言いたがらない。
百合が帰った後、恒平は彼女のことが頭から離れず、マンガ喫茶に行き店長に彼女の住所を聞くが、断られてしまい憮然とする。しかし数日後、再び百合は彼の家に現れた。今度は食料品や掃除道具を一杯買い込んで…。恒平は百合にリードされながら家の中を大掃除する。思いがけない百合の再訪に顔をほころばせる恒平だったが、帰り際、百合を思わず抱きしめ、唇を求めようとしてしまう。百合はそれを振り払って逃げ帰る。後悔した恒平は百合に謝ろうと思ってマンガ喫茶の店長に訳を話し、彼女の住所を聞こうとするが、嫉妬されたらしく教えてもらえない。
失意の日々を送る恒平だったが、またしても百合は彼の家にやって来た。百合は、ギックリ腰に苦しむ恒平を介抱しながら、ポツリポツリと自分の身の上を語り出す…。