【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】
●アルゼンチンのブエノスアイレスからの熱狂、今も鮮明に覚えている方は多いのではないでしょうか?
今から4年前の2013年(平成25年)9月7日、IOC総会でロゲ会長が手にしたカードを裏返すと、そこには「TOKYO」の文字がありました。
決戦投票でトルコのイスタンブールを破り、2020年の五輪開催地として東京が決まった瞬間です。
●決定を現場で取材していたJNNロサンゼルス支局の大嶽昌哉元支局長は、この時の日本代表団の喜びについて次のように振り返ります・・・
「下馬評を覆しての大逆転勝利。『おもてなし』の言葉に代表された日本のプレゼンが、初めて国際社会で通用した手応えに沸いた」
●東京の次の五輪開催地を決めるIOC総会が、9月13日からペルーのリマで開催されます。
しかし、おそらく4年前の興奮はここにはないでしょう。
なぜなら2024年の開催地はすでにフランスのパリに内定しているからです。
それどころか、次の次、2028年の開催地もアメリカのロサンザルスに内定しました。
今回の総会は、東京五輪に続く2回の開催地を同時に決めてしまうという、きわめて異例の総会になります。
●五輪憲章には「7年前に開催されるIOC総会において投票により開催都市を決定する」とあります。
当初、2024年の開催地には、パリとロサンゼルスの他、イタリアのローマ、ドイツのハンブルク、そしてハンガリーのブダペストが立候補を予定していました。
しかし、パリとロサンゼルス以外の3都市は相次いで立候補を取り止め、残ったのがこの2つの都市でした。
●立候補取り止めの背景には、開催地に強いられる巨額の財政負担があります。
東京五輪では種目数が339と過去最多になり、こうした肥大化する競技数なども開催費用に負担をかけます。
またアテネやリオデジャネイロなど最近の開催地では、会場跡地の利用が必ずしもうまくいっていないなど、五輪という存在が今や決して「おいしい」ばかりではないという現実がそこにあるのです。
こうした招致熱が冷えつつある事態に、せっかく手を上げてくれたパリとロサンゼルス、
この2つとも逃したくないと考えたのが、IOCでした。
ましてこの2都市は、それぞれ過去に五輪を2回開催している"ベテラン"。
こうした思惑から過去1世紀以上なかった異例の同時選定というシナリオが描かれたのでした。
●2024年の開催をパリに譲り4年後にまわることになったロサンゼルスには、準備期間が長きに渡ることから、18億ドル(約2000億円)の財政支援が行われることになりました。
現JNNロサンゼルス支局の松本年弘支局長は、ロスの空気についてこう話します・・・
「メディアも市民も平静。11年先の開催である今ひとつピンと来ていないことに加え、
3回目の開催となるため、ある意味五輪に慣れてしまっている。IOCから
財政支援を引き出したのは見事な戦略だった」
●東京五輪・パラリンピックまで3年を切りました。
次の開催地選考で浮かび上がった課題の数々・・・「巨額の開催費用」「種目数の肥大化」「会場跡地の活用方法」。
これらは同時に東京そして日本にとっての課題でもあることを忘れてはいけません。
【イッポウ「金曜論説室」より by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】