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BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛

CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分

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2019年11月24日放送
第32回

炊いたお米の美味しさを追求する!お米のスペシャリスト「ライスレディ」

山口もえ 山口もえ
ライスレディ 塚原知里さん

毎日大量のお米を食べ、どうすればおいしいごはんが炊けるのか日々研究を行っている女性たちがいる。6名の精鋭からなる彼女たちは、大手電機メーカー「パナソニック」の炊飯器部門に所属するお米のスペシャリスト。その名も「ライスレディ」。今回は、若手のホープとして活躍する塚原知里さんに密着した。

塚原さんが勤めているのは、兵庫県にある「パナソニック神戸工場」。出社して最初に行う仕事は“お米を研ぐ”こと。ごはんが炊けたら、研究開始。まずは、炊き上がりの見た目をチェック。続いて、一番上の層と真ん中の層のごはんを食べ比べて“炊きムラ”ができていないか、一番下に“焦げ”できていないか、炊き具合を確認する。さらに、お米の味も確認。におい・甘み・粘り・バランス・喉ごしなど、多くの項目を細かくチェックしていく。入社してから毎日食べ続けるうちに、味の違いが分かってきたという塚原さん。1日に食べるごはんの量は、多い時でお茶碗7杯ほど。
「一機種開発するのに使うお米は約3トンと言われていて、基本一日中食べています」
お米の味を正確に判断するため、仕事中は口の中に味が残るものは一切食べない。

塚原さんたちが開発した最新の炊飯器は「VSX 9シリーズ」。50種類・銘柄別の「炊き分け」機能が搭載されており、それぞれの銘柄の特徴を最大限引き出した炊き方を味わうことができる。そのため、ライスレディにとって銘柄の知識は必要不可欠。スーパーマーケットなどに通っては、市場に流通している人気銘柄のチェックを行っている。現在、日本のお米は824銘柄。さらに毎年新銘柄も売り出されている。かなりの種類のお米があるが、塚原さんの知識はとにかく豊富。銘柄はもちろん、それぞれのお米の特徴や、最近出た銘柄などの新情報にも精通している。まさにお米のスペシャリストだ。

この日は、会社で東京農業大学の学生たちと会議。塚原さんたちライスレディは、福島県と学生が共同開発しているブレンド米の制作にアドバイザーとして参加している。試食を行った塚原さんは、ブレンド具合だけでなく、水加減や炊き方、ネーミングに関してもアドバイス。ライスレディの先頭に立って意見を行う。「仕事ができる」「味覚も素晴らしい」など、同僚たちからの評価も高い。

大学時代は栄養学を専攻し、管理栄養士の資格を持つ塚原さん。おいしいものが大好きで、根っからのグルメ。ずっと“食”に携わる仕事に就きたいと考えていた。家電を通じで食生活に関わりたいという想いから、パナソニックに入社。炊飯器の部署に配属された。しかし、最初から今のようにごはんが好きだったわけではない。
「最初は電子レンジがやりたくて、炊飯器は一番やりたくないと思っていた。でも、お米はやればやるほど奥が深い。楽しいなって思えるようになった」

現在、日本人のお米に対する支出金額は年々減少。パンにも抜かれてしまった。少しでもお米業界を盛り上げるために、塚原さんは全国で行われるお米関連のイベントにも積極的に参加。プロとして講演などの仕事も行っている。
「ごはんの楽しみ方を知ってもらって、お米業界全体を盛り上げたい。それが結果的に炊飯器の売り上げにもつながることを目指している」

この日は、東京でイベント。トークショーの他に、炊飯器の炊き分け機能を知ってもらうため、お客さんに試食もしてもらう。「かため」「しゃっきり」「もっちり」などの炊き分けの違いがお客さんにきちんと伝わるのか、若干の不安を抱えて本番に臨んだ塚原さんだったが、心配は杞憂に終わった。イベント終了後には、多くのお客さんが「おいしかった」「炊き分け機能に感動した」と声をかけてくれたのだ。お客さんの声を直接聞いて、塚原さんに笑顔がこぼれる。
「努力が報われた感じ。“おいしい”と言ってもらえたその瞬間が一番嬉しい」
“おいしい”の一言のために。今日も塚原さんは、研究に取り組む。

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