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BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛

CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分

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2019年10月27日放送
第28回

日本一の美味しさを追求!うなぎと暮らす「鰻師」

ゆきぽよ ゆきぽよ
うなぎ 加藤尚武さん

うなぎの生産量日本一を誇る鹿児島県。ここに、うなぎに人生を捧げる男性がいる。彼の名前は、加藤尚武さん。職業は「鰻師」。国産うなぎの養殖から加工までを手がける「山田水産」でうなぎの養殖に携わっている。自慢のうなぎは、自社工場で蒲焼にしてスーパーや百貨店など日本全国6000店舗以上で販売。多くの人々から支持されている。

山田水産のある志布志市は、周囲を山に囲まれ、水が豊富。うなぎを育てるのに最適な環境が整っている。5つある会社の養鰻場では、年間約450万匹のうなぎを養殖。加藤さんは、養殖担当社員30人を束ねる現場責任者として活躍。日本一おいしいうなぎを育てるため、日々仕事に取り組んでいる。

早朝4時半。加藤さんの1日が始まる。朝一番の仕事は、うなぎの餌作り。栄養価の高いイワシやアジの粉末を水で練って、大きな“つみれ”を作る。時間が経つと乾いて風味が落ちるため、作り置きはできない。餌やりは1日2回。常にできたてのものをやる。そして、餌を食べるうなぎの様子を観察するのも、加藤さんの日課。
「うなぎは喋ってくれないので、毎日見ることでわかっていく」
見ればうなぎの状態がわかるという加藤さん。泳ぐ姿から体調を感じ取り、餌の量を決めている。

うなぎは、水質の変化や餌の食べ過ぎなどですぐ病気になってしまう繊細な生き物。そのため、従来の養殖では抗生物質などを与えることも多いが、加藤さんは薬を与えない。うなぎの「無投薬養殖」を始めた第一人者でもある。
「そもそも健康であれば、人間も薬はいらない。うなぎも健康に育てて、安心して食べられるものをつくる」

デリケートなうなぎを守るために、加藤さんの自宅は養殖池のすぐ隣。さらに、自宅と同じ建物の中にうなぎを管理する事務所もある。事務所の中には「中央監視制御盤」といわれる大きな機械があり、水温などを制御。急激な水温変化や機械のトラブルなどがあった場合には、すぐさま警報のメールが加藤さんの携帯電話に届くようになっている。いつでも駆けつけられるように、大好きなお酒も普段は飲まない。

24時間うなぎのそばで生活し、うなぎに人生を捧げる加藤さん。早朝4時半から夕方6時過ぎまで働き、うなぎのために毎朝7km以上のランニングも欠かさない。
「うなぎも、人間も健康管理が大事。養鰻に携わる人間は、精神的に強いほうがいい」
稚魚が蒲焼サイズのうなぎになるまで、平均8か月。うなぎと日々全力で向き合うために、体力と精神力を養っている。

加藤さんが鰻師になったのは、22年前。大学のラグビー部の後輩だった山田専務に誘われて、今の仕事を始めた。まったくの素人だった加藤さんは近くの養鰻場で1年ほど修行。そこでうなぎの魅力にとりつかれた。当時のメモには、うなぎのことがぎっしりと書き連ねられている。
「人生懸けて仕事ができる。それがうなぎである。うなぎなくして今の私はない。」

未来に向けて、加藤さんは今、人工孵化させたうなぎを育てる“完全養殖”にも取り組んでいる。一般的にうなぎの養殖は、海や川で捕獲した天然の稚魚を出荷サイズまで育てるが、天然の稚魚は年々減り続けている。
「量産化できて、養殖業者で飼えるようになれば、資源保護にもつながるのではないかと」
安くておいしいうなぎを育てるため、鰻師の挑戦はこれからも続く。

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