BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛
CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分
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行列のできる人気店やネットでのランキング上位店など、日本中の名店が一同に集結する肉の祭典「肉フェス」。これまで“熟成肉”や“ローストビーフ”など、数々の肉ブームを発信してきた。主催者に選ばれた人気店しか出店できないため、肉を扱うお店にとって何よりのステータスとなるイベントだ。今回は、10月上旬に開催された「肉フェス®さいたま新都心2019」に初出店を果たした笠川大海さんに密着した。
25歳にして肉フェス初出店という大きなチャンスを掴んだ笠川さん。肉フェス出店を夢見て、21歳のときに肉料理店を開業。現在6店舗を経営している。東京・池袋の「肉バルKACCHAN」は、4年前にオープンした若者に人気の肉専門店。「和牛肉寿司」や「黒毛和牛炙りユッケ」など鮮度が重要な“レア系メニュー”がお店の売りになっている。しかし、今回笠川さんが選んだメニューは、ハラミステーキ丼。自身が一番好きだというハラミで、夢の大舞台に挑む。
肉フェス出店に向けて、この日はハラミを仕入れるために肉の卸工場へ。和牛、国産牛、米国牛と並んださまざまな肉質のハラミブロックを前に、選定を行う笠川さん。肉のランクが1つ上がるたび仕入れ値はおよそ倍になるが、その分柔らかく旨みも強い。悩んだ末に選んだのは、2番目に高価な国産ハラミ。焼肉店でいわゆる「特上ハラミ」として提供されるほど高級なものだ。肉フェスの商品価格は、牛肉の場合1400円と決まっているため、高い肉を使うと店の利益が減ってしまう。それでも、リスクを背負って全力で勝負に出ることに決めた。
肉フェス2か月前。この日は、肉フェスの主催者側と打ち合わせ。どんなメニューをどんなかたちで提供するのか、話し合いを進めていく。肉をスライス状にするか、ブロック状にするのか、細かい部分にまで話は及ぶ。さらに、肉フェスでの売れ行きを大きく左右するのが、看板やパンフレットに使う料理の写真。笠川さんのお店のメニューは、どれもスタイリッシュな写真にこだわっている。しかし、肉フェスではオシャレさよりも、一目でどんな料理なのかが分かるのが大切。運営側からアドバイスを受けて、シンプルな写真を使うことに決めた。
肉フェス2週間前。試行錯誤を重ねて、ようやくメニューが形になった。メニューは「国産ハラミの極上ステーキ丼」。こだわりの国産ハラミは、肉質の良さを引き立てるために塩こしょうだけのシンプルな味付け。にんにく、しょうゆ、バターで味付けしたガーリックライスが食欲をそそる。そして、さっぱりと食べられるように小さく刻んだ梅干しをトッピング。さらに、大葉で香りと彩りを添えた。材料費や人件費などを考えると、1日で最低250杯売らないと完全な赤字になってしまう。「想像もつかない」という笠川さんだが、本番はもうすぐだ。
ついに迎えた、肉フェス当日。目標の250杯を目指して意気込む笠川さん。しかし、勝負のお昼時になっても客足がなかなか伸びない。
「後半に期待して、目標を達成できれば」
気を取り直して、この日最後のチャンスとなる夕飯時に勝負を賭ける。そして、夕方。会社帰りの人たちも訪れ、会場には多くのお客さんの姿。気づくと、笠川さんの店の前にも長蛇の列ができていた。おいしさがようやく知られたのか、忙しさで嬉しい悲鳴が上がる。その後も行列は途絶えることなく、初日が終了。目標を大きく上回る、約520杯を売ることができた。
「いろんな想いはあるけど、楽しいですね」
長年思い焦がれた夢の舞台に立ち、見事目標を成し遂げた笠川さん。そこには、肉への溢れる想いと最高の笑顔があった。