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BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛

CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分

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2019年10月13日放送
第26回

小さなバス会社を作った社長!赤字でも路線バスを続ける理由とは?

朝日奈央 朝日奈央
銀河鉄道バス 山本宏昭さん

「バス好き」が高じてバス会社を設立した一人の男性がいる。彼の名前は山本宏昭さん。東京都東村山市にあるバス会社「銀河鉄道株式会社」の社長だ。プレハブのオフィスに狭めの駐車場。そんな小さな会社では、東村山の町を循環する路線と小平駅と国分寺駅を結ぶ路線に、計11台のバスを運行させている。都心のベッドタウンとして発展した東村山市だが、かつては東村山駅までの交通手段がほぼない状態だった。そんな町にできた「銀河鉄道バス」に住民たちは大喜び。しかし、会社の経営状況は良いとは言えない。
「路線バスはそもそも赤字。奈落の底からはい上がろうとしている」

経費削減のため、山本さんは経理などのデスクワークからバスの掃除まであらゆる仕事を自ら行う。出勤は、朝5時半。ハードなスケジュールを黙々とこなしていく。さらに、バスの運転手としても活躍中。
「好きじゃなきゃできない。好きなバスを自分で運転できて三度のメシをいただける。それだけで大満足」
この日山本さんが運転するのは、東村山駅から団地・工場・運動公園・高校を回る30分ほどの環状線。今時はICカードで運賃を払うのが主流になってきているが、銀河鉄道バスでは使えない。設備投資に多大な費用がかかるため、導入が難しいのだ。その代わりに、回数券を発行し運賃の割引を行っている。お客さんが少しでも安く乗れるように、山本さんなりのサービスだ。

そして、バスの運行を行う上で最も大切なのは安全。車内に乗客がいなくなった後も、お客さんが乗っているときと変わらずバス停到着のアナウンスを行う山本さん。誰も乗っていないからといって気を抜くのは、事故のもと。常に緊張感を持ち、安全第一で運転を行う。さらに、山本さんの徹底ぶりは他の場所でも見られた。運行を終えたバスが戻ってきたら、バスの車体を細かくチェック。縁石に擦ったと見られるタイヤ側面のわずかな擦れを見つけると、乗務員に乗り方を指導する。山本さん曰く、バスを気遣うことは、乗客を気遣うこと。バスが傷ついても気にならないようでは、いい仕事はできない。

山本さんのバス好きは、幼少の頃から。実家の酒店のすぐそばにバス停があり、毎日目の前に停まる大きなバスに心躍らせていたという。大学卒業後は、跡継ぎとして実家の酒店で働き始めたが、バスへの想いはますます膨らみ、23歳の時に自家用車として700万円の中古バスを購入。その後もお金を貯めてはバスを購入し、1999年。ついにバス会社を設立した。最初は送迎バスの仕事を行っていたが、地域のために役立てたいという想いから、当時東村山駅までの交通機関がなく困っていた街の人たちのために、路線バスを開通させたのだ。
「喜んでくれるお客さんがいる。『ありがとう』って言ってもらえるから『今日も頑張ろう』って、その連続でやっている」

夜になりバスの運行が終わった頃、駐車場には作業着に着替えた山本さんの姿があった。すでに運転手さんたちが掃除したバスを、自らの手でもう一度掃除するという。雑巾で車体を磨きながら、山本さんはバスに話しかける。頑張ってくれてありがとう、などの労いの言葉だ。
「相棒だからね。自分にとっては、鉄の塊じゃなくて生き物」
山本さんから溢れ出るバスへの想いが、今日も地域に欠かせない足を動かしている。

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