BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛
CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分
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私たちの身近で起こる、交通事故。昨年は全国で43万件以上が発生。3500人以上の人が亡くなっている。そんな交通事故を未然に防ぐために、今各自動車メーカーが競って開発しているのが、衝突回避を目的とする“被害軽減ブレーキ”。今回は、SUBARUの運転支援システム「アイサイト」の開発を手がける荻野修さんに密着した。
SUBARUのアイサイトは、他のメーカーとの激しい競争開発のなか、独自に研究開発を行い実用化された運転支援システム。車内に取り付けられたステレオカメラで立体的に周りの状況を把握し、車や歩行者、道路の形状などを認識。衝突回避や飛び出し防止などによって、ドライバーの安全運転をサポートしてくれる。SUBARUが目指すのは「2030年死亡交通事故ゼロ」。目標に向けて、荻野さんは日々さまざまなテストに挑んでいる。
「失敗はしょっちゅう。なかなかうまくいかないが、その積み重ねでいいものができる。本当に“戦い”」
荻野さんの仕事場は「SUBARU群馬製作所」。テストは、会社の敷地内にある試験用のコースで行われる。この日は、プリクラッシュブレーキのテスト。プリクラッシュブレーキとは、前を走る車との衝突を避けるためのブレーキのこと。アイサイトでは、追突の危険があるとカメラがいち早く検知しドライバーに注意喚起を行う。注意は3段階あり、まずは警報や警告表示で注意を促す。その後も回避操作がない場合は、弱いブレーキがかかり再度注意。それでも操作が無ければ、強いブレーキが自動でかかり衝突を回避する仕組みになっている。
テストを行う前に、まずはコース上に現場を再現。パーツを組み立てて、本物に限りなく近いダミーの車を作る荻野さんたち。テストの下準備から全て自分たちの手で行うのが、SUBARU流だ。
「何でも自分でやってみたい。そうしないと新しい発見もない」
実験のターゲットとなるダミーの車をコースに置き、準備完了。ドライバーとともに荻野さんもテスト車に乗り込む。
今回は、前方に車を停めてブレーキ制御のデータを収集。ドライバーはブレーキを踏まず、車が自動で止まるのに任せる。まずは、時速40kmで真正面の車両に向かって直進。目標は車間距離1m以内での停車だが、結果は70cm。ほぼ狙い通りだ。
「理想の数値があって、その狙い通りになっているかが大事」
理想通りの結果が出ても、テストは終わりではない。データの信頼性を高めるために、何度も同じテストを繰り返し行う。さらに、真正面でのテストを終えたら、路肩に駐車した車などを想定して“前の車が道路にはみ出した状態(50%)”“前の車が道路に少しはみ出た状態(25%)”“先行車両なし(0%)”でも同様にテスト。どんな場面でも対応できるように、あらゆるケースを想定してテストを行う。
また、ブレーキ制御のタイミングもケースによってさまざま。追突の可能性が高い真正面の時は、早めに。ほとんどのドライバーが避けられる25%のかぶりでは、運転の妨げにならないように遅めに設定されている。さまざまなパターンのテストを繰り返し行い、安全と快適の両立を追求しているのだ。
「いろんなドライバーがいるなかでどれが最善なのか、そこを常に考えている」
事故が起きる前にドライバーに「気づき」を届けたい。それが荻野さんの想い。交通事故ゼロに向けて、荻野さんの挑戦は続く。