BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛
CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分
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夏の夜空を彩る、花火。なかでも近頃人気を博しているのが、音楽と融合した新感覚の花火エンターテインメント。それをBACKSTAGEで支えているのが、業界の老舗「紅屋青木煙火店」に所属する平山英雄さん。大曲全国花火競技大会「内閣総理大臣賞」をはじめ、数々の花火大会で賞を獲得した花火の演出家だ。
7月13日。茨城県で行われる「利根川大花火大会」当日。平山さんは、会場で準備に追われていた。行っていたのは、電気導火線の配線作業。電気導火線は、コンピューターと連動しダイレクトに花火に着火する仕組み。コンマ1秒間隔でコントロールができるため、音楽に合わせた細かい演出が可能になるのだ。シンプルな演出で勝負するという平山さんは、用意してきた外国製の花火を見せてくれた。日本の花火は1発1発の形の美しさや、大きさなどを重視するのに比べ、海外の花火は一瞬で消えるものや、点滅を繰り返すものなど、複数を組み合わせてストーリーを演出する。
「それを掛け合わせたら、世界最強だなと思います」
国産花火と外国製花火、それぞれの持ち味を生かして融合させるのが、平山さん流の演出だ。
スペインで見た花火ショーに感銘を受け、紅屋青木煙火店に転職した平山さん。修行を経て、花火職人の道へ。そして今、日本と海外の花火を使った新たな花火を模索している。その挑戦の舞台が、東京ベイエリア・豊洲で開かれる「STAR ISLAND 2019」。今年で4回目を迎えるSTAR ISLANDは、レコード会社avexが主催。最先端の音楽に合わせ、華麗な花火が披露される新感覚のエンターテインメントだ。有料の指定席1万5千席が完売するほど人気で、今年はサウジアラビアでの開催も決まっている。
さらに今回は、平山さんが所属する紅屋青木煙火店、丸玉屋小勝煙火店、マルゴーの3社がコラボレーション。通常の花火大会は、複数の煙火店が与えられたパートをそれぞれ順番にこなしていくのが主流。協力してイベント全体を1つのプログラムとして演出する試みは、業界では革新的な挑戦となる。平山さんの所属する紅屋青木煙火店が、海外の花火などを使って低い部分の「仕掛け花火」を。他の2社が日本の伝統的な「打ち上げ花火」を担当。3社の特性をうまく組み合わせ、全体を演出するのが平山さんの仕事だ。
平山さんが頭の中に描いた設計図をもとに、各煙火店が花火を作っていくが、都心に近い豊洲ではさまざまな制約がある。多くの花火大会でメインとして欠かせないのは、上空で直径300mほど開く「尺玉」といわれる大きな花火。しかし、今回は直径約130m開く「4号玉」が限界。そこで平山さんが考えたのが、数で勝負する作戦。
「大きい玉は上がらないが、日本有数の大会と比べても遜色はない」
予定は、1時間半でおよそ1万2000発。それらを音楽に合わせて打ち上げるため、緻密な演出が欠かせない。
そして迎えたSTAR ISLAND当日。平山さんたちは、台船と呼ばれる船に花火を運搬し、打ち上げ場所へと移動。準備を着々と進めていく。音楽に合わせる演出で命取りなのが、狙ったタイミングで火が付かないこと。そのため、配線には入念なチェックが必要だ。現場に緊張感が漂うなか、ついにショーがスタート。まずは大きな花火を連発し、会場を盛り上げる。そして、平山さんたちの仕掛け花火と上空を彩る打ち上げ花火、3社の花火が融合。音楽に合わせた演出も見事だ。大きな拍手に包まれながら、ショーは大成功で幕を閉じた。
豊洲での公演を終え、平山さんが次に見据えるのはサウジアラビア公演。
「日本の花火は海外でも評価されているが、演出を含めた部分ではまだまだ。演出のクオリティも世界に通用するようにしていきたい」
これからも伝統的な花火業界で、新たな挑戦を続けていく。