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BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛

CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分

ARCHIVE

2019年6月9日放送
第10回

日本の安全を守る警察犬!一人前に育成する民間学校

島田秀平 島田秀平
滝裕可里 滝裕可里

一般家庭のペットを警察犬に育てる訓練士 佐藤太加之さん(75歳) 白藤敦己さん(29歳)

一般家庭のペットを警察犬に育てる訓練士 佐藤太加之さん(75歳) 白藤敦己さん(29歳)

家庭のペットを
一人前の警察犬に育てる

人間の一億倍とも言われる嗅覚で麻薬や爆発物を発見したり、足跡から臭いを嗅ぎわけ足取りを追跡したり、その能力で人々を危険から守り、日本の安全を支える警察犬。その数、現在約1300頭。そのうち約160頭は、警察で直接育成される「直轄警察犬」。残り1000頭以上は、一般家庭のペットが「嘱託警察犬」として活躍している。嘱託警察犬は、警察犬になるための訓練を重ね、各都道府県のテストを経て採用。警察からの要請に応じて出動する、いわば犬の派遣業務。今回は、そんな嘱託警察犬を育成する2人の訓練士に密着した。

埼玉県春日部市にある「埼葛警察犬訓練所」。ここは、嘱託警察犬を育成する民間の訓練施設。所長を務めるのは、佐藤太加之さん。愛称は“先生”。まだ警察犬が一般的でなかった1964年に訓練士として働きはじめ、半世紀にわたって1000頭以上の犬を育成してきた大ベテラン。現在は、6頭の犬を訓練している。そして、先生と共に警察犬を訓練するのが、白藤敦己さん。先生のもとで6年間修行をした日本警察犬協会公認の訓練士だ。

一般家庭のペットを一人前の警察犬に育てるには、大きく3つの段階がある。1つめは、人間の言うことに従う「服従」。指示に従えなければ、警察犬として活躍することはできない。すべての基本となる訓練だ。行うのは、人間と同じ歩幅で歩き、止まれば止まる「脚側行進」や、人間の指示通り“待て”や“伏せ”を行う「停座招呼」。訓練を行う前に大切なのは、“人と犬との親和”だと先生は言う。
「犬の気持ちを分かってあげないと、訓練はできない」

この日服従訓練を行うのは、訓練を始めて1か月半のシェパード「キーコ」。“待て”が苦手なキーコに、白藤さんがエサを使って訓練を行う。
「ちゃんと座ったらエサをあげる。立っているときはエサをあげない。座ったらエサがもらえるというのが分かってくると、常に座っているようになる」
できたら、首をさすって褒めてあげるのも大事なポイント。時間をかけて、粘り強く訓練を繰り返していく。しばらくすると、落ち着いて“待て”ができるようになった。犬の個性を見極めて、うまくコントロールしてあげるのが大切だという。

「服従」をクリアすると、2つめの段階「においの嗅ぎ分け」の訓練へ進む。嗅ぎ分けの訓練は、においの異なる5枚の布きれを使って行われる。3年前に着用した衣服のにおいを移したものだが、人が嗅いでも全くの無臭。それらを数メートル離れた台の上に置き、正解のにおいと同じ布きれを持って帰ってこさせるのだ。きちんとできるようになるまで、長いと数週間かかることもあるという嗅ぎ分け。訓練の中で難しいのは、“きちんと持って帰ってくること”。においは本能で嗅ぎ分けても、それを咥えて人間に渡すのは、かなり難しい。基礎練習を終えたばかりのラブラドール・レトリバー「ダイズ」が、5枚の嗅ぎ分けに挑戦。正解の布きれを迷うことなく選んで持って帰ってきたが、先生曰く、合格にはまだまだ。その理由は“確認をしていない”こと。ベテランの警察犬は、全てのにおいをチェックし、間違いがないか確認をしてから持って帰ってくるのだという。

そして、最後の難関は、色々なにおいがある中から1つを嗅ぎ分け追跡を行う「足跡追及」。犯人や行方不明者のにおいをもとに足取りを追跡するのは、警察犬の仕事の中で最も多い仕事でもある。広い場所が必要となる足跡追及の訓練は、河川敷に移動して行われる。スタートからゴールまで、足跡をつけたコースを作り、はっきりとした足跡が残らない草むらのなか、わずかなにおいだけを頼りに足跡通りたどっていくのだ。

これら3つの段階すべてをマスターして、はじめて警察犬になる資格が与えられる。警察犬への道のりは、厳しい。日本の安全を守るため、訓練士と犬たちの訓練は続く。

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