BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛
CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分
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「FCバルセロナ」でキャプテンをつとめたイニエスタ選手や、2010年南アフリカW杯得点王のビジャ選手。続くブラジル大会でドイツを優勝に導いたポドルスキ選手が所属する「ヴィッセル神戸」。世界のトッププレイヤー3人を獲得し、今Jリーグで最も注目を集めるチームといっても過言ではない。そんなスター軍団をBACKSTAGEで支えているのが、今シーズンから用具係を務めている荒井琢也さん。新人ながら、責任は重大。試合に使う道具すべてを管理している。
最初に向かったのは、選手のスパイクを保管している「スパイク室」。これからスパイクを手洗いするという。荒井さんは、最初にスパイクの写真を撮ってから、靴紐を外していく。写真に撮るのは、元の状態を記録しておくため。何気なく通しているように見える靴紐だが、結び方が変わると足とのフィット具合が変わるため、微妙なボールコントロールに影響が出てしまう。プレーに関わる重要な道具だからこそ、絶対に間違いは許されないのだ。
今度は、鍋に赤い染料を入れ、靴下を染めていく。実は試合で着用する靴下は、カットソックスとショートソックスの2つに分かれており、ショートソックスは選手がそれぞれお気に入りのものを選ぶ。ただし、ユニフォームと同系色でないといけないため、赤くないものは荒井さんが染めるのだという。
チームのトレーニング時間が近づいてきた。荒井さんはたくさんのボールをグラウンドへ運ぶと、そのうち1つを芝生の上に置いた。これは、いつも早めに練習にくるFWの小川慶治朗選手のために用意したもの。選手それぞれのルーティーンやこだわりを把握し、それに合わせて道具を準備しているのだ。トレーニング開始後も、ドリンクの準備や使い終わった用具の片付け、ボール集めなど、忙しく動きまわる荒井さん。練習に励む選手たちの傍らで、次々と仕事をこなしていく。
この日は、ホームで試合。荒井さんは、午後2時からのキックオフに備え、7時間前の朝7時にスタジアム入り。まずは、必要な荷物をロッカールームへ運んでいく。この部屋は、試合前の選手たちにとって、最も重要な場所。余計なストレスがあっては、試合に集中できない。そのため、細心の注意を払って準備を進める。ドリンクやタオルを置く場所1つにも徹底的にこだわる荒井さん。何度も並び替えや微調整を繰り返しながらセッティングを行う。作業が続くこと、4時間半。ストレスを感じることなく試合に臨める環境を作りあげた。
小学校から大学までサッカーをプレーしていた荒井さん。大学卒業後、チームスタッフとしてヴィッセル神戸へ。仕事に一切の妥協を許さないのは、プロとして仕事に臨んでいるから。選手と同様、一年更新でチームとプロ契約を結んでいる。この仕事をしていて一番嬉しい瞬間は、試合に勝ったとき。
「みんなで抱き合ったりするあの瞬間は、何物にも代え難い」
仲間と勝利を分かち合える喜びは、選手の頃と変わらないと語る荒井さん。これからも、チームの勝利のために、選手たちを支えていく。
ヴィッセル神戸は、開幕からこの日まで8試合して3勝4敗1分け、11位と絶不調(J1リーグ4月20日時点)。さらに、突然の監督交代もあり、チームの立て直しに迫られている。そんな中、ここにもチームを支える重要なスタッフがいる。それが、チーフマネージャーの大渕貴生さん。
大渕さんがいつも仕事をしているのは、クラブハウスの中で、選手たちが最も行き交う場所。次々とやってくる選手たちと、楽しそうに会話をする大渕さん。世間話ばかりしているように見えるが、そこにはある狙いがある。
「チームとして結果が出ていないと、元気のない選手もいる。ケアするっていうほどすごいことをしているわけではないけれど、熱量を高め合える仕事場にしないといけないので、そこは意識しています」
今のチームに最も必要なのは“一致団結”。大渕さんは、選手やスタッフの誕生日会などを積極的に開いてメンタル面をサポートしている。海外遠征中もアウェーのスタジアムでも欠かさず開催。選手の励みになることが、大渕さんの喜びでもある。
舞台裏で選手を支える大渕さんの存在。今年、セレッソ大阪から移籍してきた山口蛍選手は、その有難さを実感したという。
「選手との橋渡しというか、コミュニケーションを取らせてくれた。フランクな感じの人なので、本当に誰とでも近く接してくれていると思います」
移籍してきた選手に、早くチームに馴染んでもらう。それも大切な仕事。シーズン途中急遽就任した吉田孝行監督は、大渕さんについてこう語る。
「自分のことよりも人のことを優先してくれる。本当にマネージャー向きの素晴らしい人間だと思います。チームがあるのは、彼らがいてのことだと思っています」
この日は、ホームで昨年のチャンピオン「川崎フロンターレ」との試合。健闘したものの、結果は、1-2で惜しくも敗戦となった。
「どんなことがあっても、乗り越えて試合に勝つしかない」
そう語る大渕さん。これからも結果がすべての厳しい世界で、チームを献身的にサポートしていく。