BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛
CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分
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新年度を控えた2月、3月。この時期、進学・就職・転勤などで東京には13万人もの人が上京してくるとも言われている。そんな新生活をBACKSTAGEで支えているのが、不動産賃貸仲介業「ハウスコム 立川店」で店長を務める伊藤麻美さん。伊藤さんが担当するエリアは、立川や国立など、いわゆる“学生の街”。1年のなかで特に忙しいのが、店舗のすぐ近くにある一橋大学入学試験の2日間。
「1年に懸ける2日間というか、私たちが一番楽しめる日。4月から12月にかけて準備してきた物件のちょっとした披露の場」
しかし、学生街ならではの難しさもある。準備した物件を気に入ってもらえても、取れるのはあくまでも仮契約。受験の結果次第では、キャンセルになってしまう。しかも、我が子に一人暮らしをさせる親御さんが多いため、物件を見る目も自ずと厳しくなるという。
「“説得”するわけにはいかない。“納得”してもらわないといけない。そこが難しさでもあり面白さでもある」
一橋大学の入試までに、伊藤さんは様々な準備をする。
そのひとつが、完成前の新築物件の写真撮影。写真があるかないかでは、お客さんの印象も大きく違ってくるという。さらに、伊藤さんが大切にしているのが、大家さんとの信頼関係。
日頃から大家さんとコミュニケーションがとれていれば、家賃交渉もしやすい。さらには、親御さんを安心させることにもつながるのだとか。
「お子さんたちが一人で18歳とかで来るわけじゃないですか、体調が悪くなってどうにもできないときに親御さんが大家さんに(お願いできる)って、すごく強み。大家さんに会ってもらうと決まる物件もある」
一橋大学の入試当日。試験が行われる2日間で、例年60組近くが来店するという。合否の結果待ちの仮契約とはいえ、その数が合格発表後の正式契約を増やすことにつながるのだ。午後5時。伊藤さんは、試験後に来店した親子とともに、物件の内見へ。希望条件は「家賃5万円以下」。それ以外こだわりは特になかったが、部屋に入るとお母さんは、病院の場所や非常口を確認しはじめた。その後も、親元を離れる息子さんのことを思い、心配が止まらない様子。そして、駐輪場をチェックしていたときに問題が発生。実は息子さんは、大の自転車好き。合格したら自転車を買う約束していたそうで、キレイな屋内駐輪場を希望していることが判明したのだ。未確認の情報だったため、2軒目の内見先にも希望に見合う駐輪場はなかった。たった1日で親子を納得させるのは難しい。しかし、伊藤さんの“働く原動力”は、そこにある。
「地方から来て、これから住む街で、初めてさらけ出せる場所は不動産会社。これってすごいことだと思えるようになった。だから、家族にお部屋探しをしている感覚。家族に何かあったら嫌じゃないですか。そういう気持ちで対応している」
人生の岐路に立ち会う責任があるから、納得できる物件でなければすすめることはしない。けれども、このままでは仮契約もできない状況。伊藤さんは、急いでお店に電話し指示を出した。そして、お店に戻って再交渉。新たに紹介した物件は、大学から離れているものの、設備が充実。駐輪場も希望通りで、親子も納得の様子。こうして、ついに仮契約が成立した。
運命の合格発表。この日は、伊藤さんにとっても特別な一日。
「合格発表の日の朝はずっと電話鳴りっぱなし。感情移入してしまうので、親御さんと一緒に泣いてしまったり、ドラマもある」
先日案内した親子から連絡が入る。結果は、見事合格。伊藤さんは、自分のことのように嬉しそうだ。春の新生活を支える不動産屋さん。そこには、受験生親子に寄り添う伊藤さんの姿があった。
家が決まれば必要なのが、引っ越し。春は、引っ越し業界も多忙を極める。続いて密着するのは「アート引越センター柏支店」の友野沙羅さん。入社3年目、まだあどけない今時の女性。実は彼女、最近現場を仕切るチームリーダーになった。現場では、後輩の女性を従え、女性スタッフだけで仕事することもある。それは「レディースパック」と呼ばれる一人暮らしの女性をターゲットにした引っ越しサービス。荷物の梱包もトラックへの積み込みも、全て女性スタッフだけで行う。実際に作業を拝見すると、家具のホコリを丁寧に拭き取ったり、隙間なくキレイに梱包したり、女性ならではの気遣いが随所に見られる。荷物全てをトラックに積みこむまで約2時間30分。作業はスムーズに完了した。こうして新米リーダーとして、日々活躍する友野さんだが、課題もあるという。
「やっぱり、力には自信がない。運搬はまだまだ勉強しないといけないところがある」
男性スタッフに比べるとやはり小柄。チームリーダーとして成長したい。それが友野さんの思い。
この日、友野さんが訪れたのは「アート引越研修ハウス」。ここは、引っ越しの訓練のために建てられた一戸建て住宅。養生や運搬、梱包などの研修が行われている。友野さんは、苦手な「運搬」の研修に参加。これから高さ185cm、幅72cmのタンスを運ぶという。コースは、超難関。玄関から入って2階まで運ぶが、幅72cmのタンスに対し、通路の幅は77cm。階段はもっと狭く、幅74cm。しかも階段にはコの字に曲がるカーブもある。当然、壁にぶつけることは許されない。
「チームワークで声を掛け合いながらやれば入ると思います」
パートナーの女性は、入社してまだ3ヶ月。リーダーとして的確に指示を出し、彼女を引っ張っていくのも友野さんの役目。
さっそく、超難関コースの運搬に挑戦。2人でタンスを持ち上げる。タンスの重さは50kg以上。前を行く友野さんは、リーダーとしてタンスの向きや角度、力の入れ方を的確に指示しないと、コースを攻略できない。玄関を通過し、階段へ。いよいよ難関のコの字型カーブへと差しかかる。指導員のアドバイスを受けながら、パートナーに指示を出す友野さんだったが、タンスを壁にぶつけてしまった。再度挑戦し、なんとか難所を通過。ところが、ゴールまであともう少しのところで、またしてもタンスをぶつけてしまった。ゴールをした後も悔しそうな表情を浮かべる友野さん。
「まだまだ勉強中だけど、負けたくない。お客様に安心してもらえるように、どこからどう見てもリーダーだろって見られるようになりたい」
小さな体でも「負けたくない」。それが友野さんの“働く原動力”。理想のリーダーを目指し、今日も現場で汗を流す。