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BACKSTAGE(バックステージ) ”挑戦”に秘められたこだわりと仕事愛

CBCテレビ製作/TBS系全国28局ネット
毎週日曜よる11時30分

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2019年4月7日放送
第1回

春の新生活を支える

武井 壮 武井 壮

学生街の不動産屋さん 伊藤麻美さん(35歳)

学生街の不動産屋さん 伊藤麻美さん(35歳)

受験生親子から契約を取る

新年度を控えた2月、3月。この時期、進学・就職・転勤などで東京には13万人もの人が上京してくるとも言われている。そんな新生活をBACKSTAGEで支えているのが、不動産賃貸仲介業「ハウスコム 立川店」で店長を務める伊藤麻美さん。伊藤さんが担当するエリアは、立川や国立など、いわゆる“学生の街”。1年のなかで特に忙しいのが、店舗のすぐ近くにある一橋大学入学試験の2日間。
「1年に懸ける2日間というか、私たちが一番楽しめる日。4月から12月にかけて準備してきた物件のちょっとした披露の場」
しかし、学生街ならではの難しさもある。準備した物件を気に入ってもらえても、取れるのはあくまでも仮契約。受験の結果次第では、キャンセルになってしまう。しかも、我が子に一人暮らしをさせる親御さんが多いため、物件を見る目も自ずと厳しくなるという。
「“説得”するわけにはいかない。“納得”してもらわないといけない。そこが難しさでもあり面白さでもある」

一橋大学の入試までに、伊藤さんは様々な準備をする。
そのひとつが、完成前の新築物件の写真撮影。写真があるかないかでは、お客さんの印象も大きく違ってくるという。さらに、伊藤さんが大切にしているのが、大家さんとの信頼関係。
日頃から大家さんとコミュニケーションがとれていれば、家賃交渉もしやすい。さらには、親御さんを安心させることにもつながるのだとか。
「お子さんたちが一人で18歳とかで来るわけじゃないですか、体調が悪くなってどうにもできないときに親御さんが大家さんに(お願いできる)って、すごく強み。大家さんに会ってもらうと決まる物件もある」

一橋大学の入試当日。試験が行われる2日間で、例年60組近くが来店するという。合否の結果待ちの仮契約とはいえ、その数が合格発表後の正式契約を増やすことにつながるのだ。午後5時。伊藤さんは、試験後に来店した親子とともに、物件の内見へ。希望条件は「家賃5万円以下」。それ以外こだわりは特になかったが、部屋に入るとお母さんは、病院の場所や非常口を確認しはじめた。その後も、親元を離れる息子さんのことを思い、心配が止まらない様子。そして、駐輪場をチェックしていたときに問題が発生。実は息子さんは、大の自転車好き。合格したら自転車を買う約束していたそうで、キレイな屋内駐輪場を希望していることが判明したのだ。未確認の情報だったため、2軒目の内見先にも希望に見合う駐輪場はなかった。たった1日で親子を納得させるのは難しい。しかし、伊藤さんの“働く原動力”は、そこにある。
「地方から来て、これから住む街で、初めてさらけ出せる場所は不動産会社。これってすごいことだと思えるようになった。だから、家族にお部屋探しをしている感覚。家族に何かあったら嫌じゃないですか。そういう気持ちで対応している」
人生の岐路に立ち会う責任があるから、納得できる物件でなければすすめることはしない。けれども、このままでは仮契約もできない状況。伊藤さんは、急いでお店に電話し指示を出した。そして、お店に戻って再交渉。新たに紹介した物件は、大学から離れているものの、設備が充実。駐輪場も希望通りで、親子も納得の様子。こうして、ついに仮契約が成立した。

運命の合格発表。この日は、伊藤さんにとっても特別な一日。
「合格発表の日の朝はずっと電話鳴りっぱなし。感情移入してしまうので、親御さんと一緒に泣いてしまったり、ドラマもある」
先日案内した親子から連絡が入る。結果は、見事合格。伊藤さんは、自分のことのように嬉しそうだ。春の新生活を支える不動産屋さん。そこには、受験生親子に寄り添う伊藤さんの姿があった。

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