ボクシング世界最速三階級王者 田中恒成 戦いの軌跡 詳しくはこちら
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SOUL FIGHTING

ボクシング世界最速三階級王者
田中恒成 戦いの軌跡

2017年5月20日 WBO世界L・フライ級防衛戦 vsアンヘル・アコスタ

2019.08.15

どうなるL・フライ級ウォーズ  パーフェクト男撃退、激闘後は統一戦煽る 田中劇場

 試合終了後のリング上、チャンピオン田中の口から最初に出てきた言葉は挑戦者への感謝の気持ちだった。続けて「強くて、激しくて、辛くて、最高の試合だった。最高のライバルです」と相手を称える。
 母国プエルトリコでは“ウィルフレド・ゴメスの再来“とまで言われるアコスタは、16戦全勝オールノックアウトというパーフェクトレコードを引っ提げて日本の地へと降り立った。
 左の突き合いで始まった一戦は、「序盤は相手を知るために控えようと思っていた」という田中の言葉通り、比較的静かな立ち上がりから、お互い徐々にパンチの種類を増やしていく。しかし予想していたことだがアコスタのパンチはやはり怖い。2回終盤には単発ではあるが、右が何度か田中の顔面を捕える。
 展開が変わったのは3回、仕掛けたのは王者だった。1、2ラウンドを挑戦者のラウンドと認識した陣営は、試合後の会見でも「3ラウンドから行ったのは予定通り」(恒成)「3(回)から行くことはセコンドと一致した」(斉トレーナー)と答えている。そこで機能したのがボディー打ち。アコスタのプレッシャーに対して田中は動きで負けず、隙を見て左ボディーから右クロスを放つと、この回終了間際にはアコスタの体がくの字に曲がる場面を作った。

 4回に入ってもアコスタのパンチには緊張感があり恐怖を感じさせるが、田中はしっかりとブロック&ムーブ、そして左右を上下に返す。さらにラウンドの最後には一段スピードのギアを上げ、逆にアコスタを下がらせる。
 迎えた5回、攻勢を強めた田中は右のボディーショット、左フックなどのヒットをさらに増やし、右アッパーで効かせてフォローした右でアコスタからダウンを奪った。チャンピオンへのKO防衛の期待が一気に高まる。しかしこのダウンについては田中は「一瞬ヨッシャと思ったが、バランスを崩しただけだったんで、多分そんなにダメージはなかったと思う」と振り返り、アコスタも「(ダウンは)大丈夫だった。バランスを崩しただけ」と試合後、同様に語っている。
 それでもこのラウンド以降、アコスタ陣営のセコンドは慌ただしくなった。水の使いすぎから6回開始のゴングの後に、ちゃんと拭くようレフェリーから注意を受けた。
 田中が自らの距離をつかんできた6ラウンドを経て、第7ラウンド早々には右クロスをクリーンヒット。そして相手の左アッパーに左フックをカウンターで合わせて顎を跳ね上げると、田中が追って、アコスタが回る時間が長くなる。さらに田中は左フックで下げさせ、右ストレートでアコスタをロープへと追った。
 8回、WBO本部国からの刺客アコスタも意地を見せ、左右のフックを次々と繰り出して反撃するが、田中は左ボディーを返してアコスタの攻撃を寸断すると、強い右を叩き付ける。そんな田中の攻撃についてアコスタは、苦しみ続けた左ボディーよりも「右(のパンチ)が強かった」と述懐している。
 9回、10回とアコスタのセコンドは開始ゴング後もなかなかコーナーから出ず、必死に時間を稼ぐ。アコスタもラウンドの最初から出るが、田中に冷静に対処され、中盤以降に左ボディー中心で押し返されるとクリンチの時間が多くなってきた。
 11回、田中の右ストレートを受けたアコスタがクリンチで逃げると、肩をつけた距離での打ち合いに突入。左右アッパーを振るうアコスタに防戦の場面もある田中だが、常にこの試合の攻撃の起点となっていた左ボディー、そして右クロスで仕返しをする。
 最終回も、今度はワセリンのつけすぎで開始の時間を奪ったアコスタ陣営。そしてその策略(?)に応えて最後まで攻めの姿勢を崩さなかったアコスタだが、残り1分、田中は再びスピードのギアを上げるとサイドステップを交えての攻撃を仕掛ける。そしてラスト30秒までお互いに攻守を入れ替えながらパンチを繰り出し合った死闘に試合終了のゴングが打ち鳴らされた。
 読み上げられたスコアは117-110が2者と、116-110。「重くて強い。身体まで揺すられる感じ」のアコスタのパンチに対して「最後まで気は抜かなかったし、最後まで倒すつもりだった」という田中は、L・フライ級統一、そしてその先へと視線を向けた。

(提供:BOXING BEAT)

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