ボクシング世界最速三階級王者
田中恒成 戦いの軌跡
まるでボクシング漫画…“3階級制覇”田中恒成 WBO年間最高試合『互いに右3連発』はこうして起きた
今「世界で一番面白い試合」をする男…それは、岐阜県多治見市が生んだ天才ボクサー・田中恒成選手(23)!
2015年、日本最速となるプロ5戦目でミニマム級の世界王者に輝くと、翌年にはライトフライ級に転向。圧倒的なスピードとテクニックを武器に日本最速タイの8戦目で2階級制覇に成功しました。
そしてフライ級に転向して迎えた今年9月。WBO(世界ボクシング機構)が後に『年間最高試合』と認めた伝説の一戦で、チャンピオン・木村翔選手(30)を壮絶な打撃戦の末破り、プロ12戦目、世界最速タイで3階級制覇を達成しました。
この激闘を観たファンは「まさに頂上決戦!」「魂が震える試合!」「鳥肌で大根おろせそう」とネット上も大興奮。
快挙を成し遂げた田中選手の2018年の裏側を大公開!CBCテレビの若狭敬一アナが3階級王者を“丸裸”にします!
今年1月、田中家に「激震」が…
若狭敬一アナ(以下 若):恒成選手、改めて3階級制覇はいかがですか?
田中恒成選手(以下 恒):いやぁ、勝ててよかったです。
若:亀田興毅さんや、長谷川穂積さんらに続く6人目の快挙です。
恒:まだまだ、これから頑張っていきます。
若:そのうち23歳というのは日本人最年少ですが、これについては?
恒:そういった結果もついてきて、非常にうれしいです。
若:3階級制覇を達成した試合が、WBOで世界一面白い試合『年間最高試合』に選ばれ、観ていた方が「鳥肌で大根がおろせそうな」試合だったそうです。
恒:はい、経済的ですね(笑)
若:今回はその「世界で一番面白い試合」選出までの1年間の裏側を大公開していきます。事前に月ごとの「テンション」が100%のうちそれぞれ何%くらいだったかを伺っていますが、まず2018年1月はまだまだ15%ということでした。これは2017年の試合で骨折してしまった影響もありますか?
恒:そうですね、自信をなくしていたので、ちょっとテンション低かったですね。
若:そして同じ1月、追い打ちをかけるように、田中家に激震が走ったそうです。お父様が仕事を辞められたと。
恒:それまで働いていた工場を辞めたんですけど、それによってトレーナーでもある父がボクシングに専念できる時間が増えたり、一緒に遠征などにも行けるようになったりしてよかったです。
若:「田中家の収入」となると、どうなったんでしょう?
恒:自分のファイトマネーから月々払うという形になっています。
若:恒成選手が一家の大黒柱に?
恒:まぁ、言い方次第ですけど…9月の試合は勝つか負けるかでそういった意味でも違ったので、よかったです。
チャンピオンはスタバ大好き
若:その1月から少しずつテンションは上がり、40%まで来た3月には、階級を変更して迎えたフライ級の初戦。ロニー・バルドナド選手を相手に見事9ラウンドTKO勝利でした。緊張はありましたか?
恒:そうですね、緊張けっこうしてました。自信をなくしていたので、自信を取り戻す戦いという意味で重要な試合でした。階級が変わって減量もだいぶ変わり、相手も違うので、そういった緊張もありながら勝てたのでよかったです。
若:減量中の恒成選手がスマホに残したメモを今回入手したのですが、「試合後の楽しみ」として、一番上に「クラシックティークリームフラペチーノ」と書いてあります。これは…?
恒:恥ずかしいので読むのはやめてもらいたいんですけど(笑)これはスタバのメニューですね。スタバが好きで、試合後に飲みました。甘いものが好きで、飲み物に限らず。
若:「家で一人焼き肉&酒飲みまくり 2500円以内」って書いてありますね。
恒:もう、ここ飛ばしてもらっていいですか!(笑)これは試合後やっていません。
若:そしてその後、恒成選手のテンションはどうなったかというと、7月に50%。木村翔選手とのフライ級タイトルマッチが決定しました。この時の気持ちは?
恒:うれしかったです。ですけど自信を取り戻してすぐだったので、怖さもありました。
「チャンピオンロード」でメンタル強化
若:そこから試合に向けてテンションが上がっていくのかと思いきや、8月に45%と下がります。この月、名古屋市内では観測史上最高の40.3度を記録。この暑かった名古屋で炎天下に通称「チャンピオンロード」を爆走していたと?
恒:自分のジムの会長の畑中(清詞)さんなど、数々の世界チャンピオンが今まで走ってきた、名古屋の大高緑地公園の中にあるキツい坂道です。暑いのも走るのも嫌いなので、テンション下がりました…。
若:何本くらい走ったんですか?
恒:覚えてないですね。とにかく走るのが嫌いなので、嫌いなことをやってメンタルを強化しようと。強化出来ましたし、達成感もすごくありました。
若:そして9月にテンションMAX!歴史的一戦となった木村翔選手とのフライ級タイトルマッチ。プロ12戦目という世界最速タイで3階級制覇を成し遂げました!
恒:これは結果が出て、テンションMAXになりました。
ボクシング漫画の様な“互いに右3連発”
若:その試合は壮絶な打ち合いとなり、後にWBOが認めた「年間最高試合」となったわけですが、「打ち合おう」と決めたのはいつだったんですか?
恒:試合前、入場する前の控室で、自分で決めました。ずっと迷ってたんですけど、そこで決めました。
若:中盤までは互角の展開でしたが、気持ち的に余裕はありましたか?
恒:まだ余裕はなかったですけど、ダメージも与えられていたので、悪い展開ではなかったです。
若:7ラウンドに、大きく体勢を崩してしまう場面もありましたね。
恒:ちょっと足を滑らせてしまいました。パンチをもらったので、動揺も少しありました。
若:そしてこの試合の壮絶な打ち合いを象徴するようなシーンが、最終12ラウンドに生まれました。お互いに右ストレートを同時に打ちあうこと3連発!まるでボクシング漫画のようですが、こういうこともあるんですね!
恒:ありましたね。1発打った後に「もう1発行くぞ!」と、相手も自分も同じ気持ちだったと思います。
若:判定になったら勝てそうだという実感はありましたか?
恒:ありました。はい。
さらに男を上げた試合直後のインタビュー
若:判定の末、見事新チャンピオンとなり、3階級制覇を達成した恒成選手ですが、印象的だったのは試合終了直後のインタビューでした。次の通りです。
<田中恒成選手の同インタビュー>
「木村チャンピオンは7月の防衛戦から2か月間でしかも敵地に短いスパンで来たことは忘れてはいけないと思うので、まだまだ自分は木村チャンピオンほどの気持ちは持てていないので、もっと近づけるように頑張ります。俺によりも(木村選手に)最高の拍手を送ってください。木村チャンピオンありがとうございました!」
若:恒成選手、このコメントはどういう思いから出てきたのですか?
恒:相手に対しての敬意と言うか、相手あってのスポーツなので、それに対してのコメントです。
若:木村翔選手はどんなボクサーでしたか?
恒:本当にボクサーとしても男としてもカッコいい選手でした。
若:さて、気になるのは、次の戦いをどうするのかなというところなのですが?
恒:来年3月…春ごろにだいたい予定しています。それに向けて準備していきます。
若:ちなみに今回の激しい戦いで“代償”はありましたか?
恒:上の前歯が折れました。もともと差し歯だったんですけど、今ちょっとの間だけ入れ歯です。少ししゃべりにくいですね(笑)
若:最後に来年の抱負を漢字一文字で表現すると、どんな字になりますでしょうか?
恒:はい「楽」です。もう楽しんでやりたい、それだけです!精神的に辛い時もありますが、気持ちが一番大切なので。
(12月16日(日)午後1時24分放送 CBCテレビ『スポーツLIVE High FIVE!!』より)