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第54回(4/28) 再生医療

ゲンキリサーチャー:木本武宏

「iPS細胞」という用語、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
昨年、京都大学の山中教授が「iPS細胞」の開発によって、ノーベル賞を受賞。
『再生医療』が大きく進歩する、と話題にもなりました。
しかし実際に、「iPS細胞」がどんなものなのか?
さらに「iPS細胞」と並んで『再生医療』の未来を支える重要なアイテムと言われる
「細胞シート」となると…ご存知の方は多くないと思います。
不可能を可能にする夢の治療の実現が、もうすぐそこまで来ています。
今回は『再生医療』の体験者たちの声を交えながら、『再生医療の「今」』をお伝えします。

iPS細胞

iPS細胞を一言でいうと、どんな臓器にも変身できる「万能細胞」です。
本来、古い細胞と新しい細胞が入れ替わるときは、皮膚なら皮膚、腸なら腸と同じ細胞にしかなりません。しかも、一度失った臓器は入れ替わる細胞自体がなくなってしまうため、再生不可能と考えられていました。その為、今までは臓器移植などの治療法しかありませんでした。しかしそれらの治療法には、絶対的に数が少ない提供者が必要となる、拒絶反応が起こる可能性などもありました。そのような状況の中、山中教授が開発したのが、成長しきった細胞を初期化し、どんな細胞にもなれる状態にする遺伝子です。この遺伝子は「山中ファクター」と呼ばれ、その山中ファクターを導入した細胞が「iPS細胞」と名付けられたのです。
「iPS細胞」はまだ研究段階ですが、もともと動かない細胞を「iPS細胞」に初期化し、心筋に変身させた新たな細胞は心臓と同じ拍動が見られ、心筋に変身した新たな細胞を「細胞シート」にすると、実際に拍動する心筋のシートができます。「iPS細胞」が実用化されれば、自分の細胞を培養した、拒絶反応の心配がない臓器が移植できるようになります。さまざまな箇所の細胞を初期化しつくることが可能なため、心臓だけでなく肝臓や腎臓など…今まで治らなかった患者さんの病気を治せるようになると、「iPS細胞」を使った『再生医療の今後』に期待がかかっています。

細胞シート

人間の体は、精子と卵子がくっついた受精卵1個から始まります。それが分裂を繰り返し、いろいろな種類の細胞に変わり、成人になる頃にはおよそ60兆個の細胞になります。
さらに成人になった後も細胞分裂は繰り返され、古い細胞と新しい細胞が常に入れ替わっていきます。
この細胞の分裂する能力を使ってつくられたのが、「細胞シート」です。
「細胞シート」は、人の体から採取した細胞を培養液の中で2〜4週間ほど増殖させ、東京女子医科大学などが研究している特殊な方法で、シート状の塊にしたものです。患者自身の細胞を利用するため、拒絶反応などの心配は一切ありません。

心臓の収縮力が弱まることで筋肉が伸び、心臓が大きくなってしまう<拡張型心筋症>。
まだ研究段階ではありますが、その再生医療に使用されるのが、足の筋肉の細胞を培養した「細胞シート」。直径3pほどの「細胞シート」を大きくなった心臓を覆うように張り付けていくと「細胞シート」から出る物質が、心臓の再生を促し、正常な状態に戻してくれるのだとか。他にも細胞シートを使った再生医療の研究は、目、歯茎や軟骨、食道などの部位でも進められています。
※現在は臨床研究や治験の段階のため、特定の患者さんしか受けられない治療となっています。

<監修>
医学博士 清水達也