極みの料理

2014年12月2日放送分

三重県松阪市産 豚肉

産地のご紹介

山越畜産 代表 山越弘一さん

山越畜産 代表 山越弘一さん

profile

1940年、松阪市生まれ。全国養豚経営者会議(現:日本養豚生産者協議会)第6代会長。20代で渡米、現地の先進的かつ大規模な農業に影響を受け、地元松阪市で山越畜産を創業。年間出荷頭数2万頭の大規模経営を経て、現在は品質・鮮度にこだわった豚肉生産に専念している。

私が養豚業を始めたのは昭和42年。当時は、高度経済成長期の最中で、農業も畜産業も大きな転換期を迎えていました。すでにアメリカやヨーロッパの先進諸国の畜産業は、広大な土地で合理的な技術を導入した大規模経営が中心で、軒先経営が一般的だった日本は大きく遅れをとっていました。私は、友人の勧めもあってアメリカに渡り、その圧倒的な格差を目の当たりにして愕然。帰国後すぐに養豚業を始めるための準備に取り掛かりました。

1頭から飼育を始め、4年後には1500頭に。より高い技術や経営ノウハウを学ぶために、たびたび海外視察にも出かけました。とくに、アメリカやヨーロッパなど、肉食文化の国々は、畜産の技術研究が進歩しています。栄養学、遺伝学、病理学などの専門知識も学び、生産者の勘や感性に頼るのではなく、確かなデータや知識に基づいた養豚を実践することで、大規模な経営を実現できたのです。

また、肉食ではない日本の食文化に合う豚肉を作ることも、私の一つの命題でした。肉食中心の欧米諸国で作られる豚肉は、日本人の口に合うものとは言えません。主食の米を美味しく味わうためのおかずであり、素材そのものの味を大切にする日本人にとって、食材の旨みがとても重要なのです。そこで、自家交配して独自の豚の品種を作り、その系統を継承しながら繁殖と飼育を行って、旨みのある豚肉を追求してきました。

さらに、通常の国産豚の飼育期間は140~170日ですが、私たちはさらに60日以上飼育します。この60日が、脂質を増やして肉の旨みをぐっと熟成させる期間になるからです。飼料には、肉の旨みを作る大麦をたっぷり与えます。そして、出来上がった豚肉は、一切冷凍せず、新鮮なうちに消費者の皆さんへお届けする。自然にありのままに育てれば美味しくなるというのが、私の信念。シンプルな仕事が一番大切だと思っています。

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