極みの料理

2014年1月28日放送分

愛知県豊田市産 じねんじょ

食材のご紹介

JAあいち豊田 旭営農センター 伊藤一隆さん

JAあいち豊田 旭営農センター 伊藤一隆さん

じねんじょは、日本の山に自生する日本原産の野生種で、滋養・強壮の食材として、また漢方薬として珍重されてきました。そのため、山菜の王者とも呼ばれて親しまれていました。豊田市の山間部でも、じねんじょは人々の重要な栄養源となっていました。山に自生しているじねんじょを、人の手で作ることができないだろうかという試みから、研究が重ねられ、現在のじねんじょ栽培が確立されました。

JAあいち豊田では、現在、旭、藤岡、稲武、下山、小原の5地区で栽培が行われています。なかでも、最初に栽培に取り組んだのは旭地区。1949年のことでした。標高差のある山間部で、冷涼な気候を持ち、天然のじねんじょが多く産出されていたのです。当時、進みつつあった過疎化を食い止めるため、町おこしとして始めたのがきっかけでした。

現在、市内の主な産地で栽培しているのは、『夢とろろ』という品種。愛知県在来の自然薯を交配して育成したもので、愛知県農業総合試験場・稲部山間農業研究所で開発されました。しっかりとした粘り、味、香りを兼ね備えた、天然ものにも負けない品種です。また、じねんじょは滋養食と言われるだけに、栄養価も抜群。粘り成分のムチンには、胃の粘膜を守り、消化作用を促進させる効果のほか、腸内環境の改善や感染症の予防作用もあると言われています。

出荷時期は、11月中旬から1ヵ月間と短い冬の味覚です。JAあいち豊田旭営農センターでは、毎年この期間は、直売所を開いて販売を行っています。愛知の名産地のじねんじょを、ぜひ味わってみてください!

※2019年にムチンの研究者が「ムチンは動物粘液の主成分であり、植物のねばねば成分は別物質。それをムチンというのは誤用」という主旨の指摘をしました。当HPは、その指摘以前の番組放送時点での見解です。

産地のご紹介

水野 豊さん

水野 豊さん

profile

1934年、豊田市生まれ。1994年、定年をきっかけに農業を始め、稲作とじねんじょ栽培を手がける。2013年度は、愛知県じねんじょ生産地協議会 会長、JAあいち豊田旭自然薯組合組合長を兼任。県全体の産地連携や県外視察、研修会の運営などに各方面に力を注いでいる。

じねんじょは、パイプ栽培という方法で行います。芽出しをした種いもを植える際に、赤土を詰めたパイプも一緒に土の中へ埋めていくのです。長さ1m20cmのパイプには、5kg以上の赤土が詰まっています。この土がほどよい圧力となって、太くしっかりとしたじねんじょを作るのです。また、じねんじょは皮ごと食べる食材だけに、土で味や香りが変わります。そのため、栽培に適した土を地元の山々で探して使っているのです。

さらっとした赤土で育てた旭のじねんじょは、真っ直ぐで形が良く、すりおろすと山の香りがふわっと広がります。泥土で育てたものは土臭さが付きますが、私たちのじねんじょは香りも味も格別です。現在、旭地区では、43戸の生産農家が、年間約2万3千本を栽培しています。私を含め80歳を越えるシニアが現役で頑張っていますが、栽培はなかなかの重労働。できるだけ楽に作業ができるように工夫しながら、需要に応えられるよう出荷量の維持に努めています。

じねんじょを食べる時は、まずコンロの火でヒゲを焼いて、たわしで洗い、皮を付けたまますり鉢ですりおろしてくださいね。ふわっとやさしい山の香りと、もっちりとした粘りが出てきます。これに、だし汁と醤油を加えて、ごはんにかければ、とろろめしに。すりおろしたものをひと口大に丸めて海苔を巻き、素揚げにするのもおいしいですよ。

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