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あらすじ

玉井静流(シズル・41)は、岐阜県の山間の町に祖母(さくら)、母(時江)と三人で暮らしている。
祖母はおだやかな性格だが身体の一部が不自由で、静流と母が風呂に入れたり何かと面倒を見なくてはならない。その母はことあるごとに娘を否定し束縛する。
静流には、自由がない。
自由がなければ、夢もない。
単調な生活の中で、生きている。
ただ、生きているだけ、みたいな生活をしている。

同級生の病院の受付で働く静流は、ある日待合室に置くための絵本を買いに行き、
昔読んでもらっていた絵本のことを思い出す。
確か、サーカスのピエロが主役だった。
すごく気に入っていた。
母はすっかりそんな絵本のことは忘れている。
祖母が憶えていた。「月に祈るピエロ」
静流は、あの本がもう一度読みたい、と思い、
インターネットのオークションサイトで見つける。
やがてその本が届くが差出人の名前が男であることが時江は気に入らない。

女三代で懐かしい絵本「月に祈るピエロ」を読む。
それは「言葉売りのピエロ」が、主人公で、
彼は美しい詩を書くのだが、
いつも、サーカスの花形であるブランコ乗りたちに渡し、その詩で、ブランコ乗りたちは女性を口説くのだ。

物語の最後に今度はピエロ自身が恋をするのだが、
きれいな言葉はみんな人にあげてしまいすっからかん、
彼にできることは、ただ、月に祈るばかり…。
というストーリー。

読み進むうちに、ハラリと何かが本から落ちる。
何か、小さな紙切れが挟まっていたのだ。
なんだろう。
紙切れは、古い感じだ。何年も前のものだろう。
「小麦粉××グラム、グラニュー糖小さじ×…」
何かのレシピのようだ…
なんとなく、捨てづらい気がする静流。
どうしようか…。
大事なものかもしれない。

このメモをきっかけに、静流と男とのメールのやりとりが始まる。
顔も見たことないのに。
会ったことさえないのに。
メールを交わしているだけで。
そしてお互いが子供の頃読んだ物語、「月に祈るピエロ」が、ふたりをつなぐ…。

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