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今までの公演

#270

 

富田靖子 「ぐるぐる回る」

今回のゲストは富田靖子さん。芝居の稽古ではいろんなことを試す性格らしく、今回も大胆なことをオープングからやってのけた。

鶴瓶さんが喫茶店の中に板付きで芝居を始めると、富田さんはフレームインを2分近くも待ったのだ。しかも、窓の外から中の鶴瓶さんをじっと見続けていた。それに気付かず、およそ2分間鶴瓶さんのひとり芝居が始まる。しかしそれがいい結果を生み、絶妙なサスペンスと発展したのだ。

スーツ姿の鶴瓶さんは店の人になるわけでもなく、何やら思い出しながら確認をしている様子。そこへ富田さんが入ってくる。鶴瓶が店の人ではないことを確認すると、富田は店主役を選択し、カウンター内へと入っていく。凄く冷静な対応だ。

鶴瓶は富田にこの店の位置を確認しながら、独り言のようにおかしいなあ、と呟いている。富田が尋ねると、鶴瓶は道に迷っているという。それも何度地図通りに歩いてもこの喫茶店に辿り着いてしまうと、不思議な事を言い出した。それを聞いていた富田は、ちゃんと神社にお参りしたのかと言う。要領を得ない様子の鶴瓶は、富田からさらに離しを聞き出そうとする。

鶴瓶が行こうとしているのは山下鉄工所。携帯を持っていないので喫茶店の電話で山下のところに電話をかけてみる。しかし、電話は繋がらない。山下には行く事を告げてある。だから家にいないはずが無いのに、何故か山下は電話に出ない。鶴瓶の心がざわめき始めた。

すると富田から思わぬ台詞が飛び出した。「この辺に鉄工所は無いですよ」。

沈黙・・・。

2週間前に行ったという鶴瓶と鉄工所は無いという富田。

食い違う2人。

実際に存在しているのは、この喫茶店なのか?それとも鶴瓶さんの知り合いの家はなのか?それともお互い存在していないのか?

鶴瓶はまた電話をするが、結果は同じ。そんな鶴瓶を放って富田はまた外へと出て行く。その間独りになった鶴瓶は得体の知れない恐怖に耐えられなくなった。限界が来たところに、どこかで見ていたかのような絶妙のタイミングで富田が戻ってきた。

この空間に耐えられなくなった鶴瓶はさっさと会計を済ませ「2度と来たないですけど・・」と言い残して、喫茶店を飛び出していった。

鶴瓶が去った後、富田は「気持ち悪。何で山下さんなの?無いって言ってんじゃん」と呟く。一体どちらが真実なのか・・・。

とそこへ鶴瓶が入ってきた。

「さっきより早いスピードでここへ出てくる・・・」

「・・・」

「なんやこれ?」

「ここは“ネコ”(喫茶店の名前)ですよ。山下さんちはありません。鉄工所もありません」

「・・・・」

「それは10年前から何も変わりません。」

「・・・・」

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