今までの公演
#267
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中村獅童 「再会のとき」 |
今回のゲストは歌舞伎役者の中村獅童。常に新しいものに挑戦し続けるその存在感は、荒野を疾走する獅子の如くである。その獅童が即興ドラマに初挑戦となった。
設定は「教会」。厳かな空気に満ち溢れた静寂の世界が創りだされた。
ドラマも静かなスタートとなり、終始言葉少なに演じ続ける獅童と、その空気を優しく包み込むように演じる鶴瓶との、シリアスな芝居となった。
静かに入ってくる獅童。彼は疲れ果ててふとこの教会に立ち寄った。そこには教会の近くでお店を出している鶴瓶さんが今週のミサの準備をしていた。当初お互い会話はなく、それぞれの想いと作業に没頭していた。
「おたくも?」「ええ、もしかして?」という何気ない探りあいから芝居は始まった。そし2人の会話から関係性が序々にあぶりだされていく。
「行くとこないんですよ」と獅童。「何かしはった?」「いえ、昔は裕福に暮らしていたんですけど、ひょんなことから家族とも生き別れになってしまいまして」「えー」と意外な事実に驚く鶴瓶。
「17歳年上の兄貴もいたんですけど」
「17歳年上?そんでその兄貴は?」
「分からないですね」
どうやら兄を含め、両親が今どうしているかも分からないらしい。そもそも別れたのは30年も前のこと。それは現在38歳の獅童が8歳のとき。兄の顔の記憶も今では曖昧なものになってしまっている。その兄も生きていれば55歳。ちょうど鶴瓶くらいの年だ・・・。ん?ひょっとして獅童は鶴瓶を生き別れた兄にしようとしているのか・・・?
スタジオの空気は何やらそんなムードになっている。しかし鶴瓶は気が付いていないようだ。生き別れた年齢を鶴瓶自身が整理するために、繰り返し話しているが気付いていない。
そして色んな意味で緊迫しながらドラマは進行していく。
鶴瓶は両親の話を聞きだそうとするが、獅童は両親のことには余り触れず、すぐに兄の話へと方向を変える。気付いてくれとでも言わんばかりに・・・。
そして鶴瓶はもう一度年齢を整理し始める。
「8つの時に別れた、その時25歳の兄貴に会いたい・・」
「ええ・・」
「そやけど、その兄貴もあれですなあ・・・・・・」
とその時鶴瓶の動きがピタッと止まり、表情も消えた・・・。
「・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!」
獅童の想いが鶴瓶に届いたのだ。
「お宅、家はどちらに?」「杉並ですけど」「方南町・・」「え?どうして?」「お前、ツトムか?」
なんとも言えない笑顔を返す獅童。
25年ぶりの再会に心地いい緊張感が漂ったまま。少し距離を置いて座る兄と弟。やがて鶴瓶の顔にも笑みが広がり・・・。OKでーす!