今までの公演

#252

徳井義実 「門真の父」

今回のスジナシは250回以上の歴史の中でも史上初の大技が披露された。まさに歴史的な作品となったのである。

ゲストはチュートリアルの徳井義実さん。近年は俳優業にも積極的に進出しており、その演技力は高く評価されている。設定は「ホストクラブ」。2人ともホスト風の衣裳での登場だ。

徳井はこのホストクラブのNo.1にしてオーナー。源氏名はアキラ。若き成功者である。タバコに火を付けて、ポーズも決めて、どこからどう見ても隙の無い男である。

そこへ鶴瓶がやってくる。鶴瓶はこのところ毎日のように徳井のところへやってきては「ホストになりたい」と無茶なお願いをしている。嘗て大阪の門真ではNo.1だったというが、それは過去のこと。当然のように全く相手にせず、断り続ける徳井だが、鶴瓶が徳井の父のことを知っていると告げると、状況は一変。鶴瓶と徳井の父は門真で同じ釜の飯を食った仲間。しかし、徳井は自分と家族を捨てた父親を激しく憎んでおり、いつか父親を見返してやりたい一心でこの仕事に打ち込んできた。徳井にこの話を出したのは全くの逆効果だったのか、押さえつけられない怒りが吹き出し、その父を知っている鶴瓶に対しても激しい怒りを見せる。次から次へと出てくる激しい台詞の端々に、その怒りの大きさが分かる。「一発殴らんと気が済まんのや!」この台詞で鶴瓶は徳井の父になるのを諦めたのか(なればラストに殴られるというオチになるからだが)話は徳井の母親のことになる。その母も父に見捨てられたせいで体を壊したことが分かり、火に油を注ぐ形となり、徳井は怒り狂って「兄貴、後頼んだでー!」と言い残し、出て行った。

「兄貴、後頼んだでー」。鶴瓶を始め、スタッフ一同この台詞の恐ろしさに気付いたのはそれから10秒後のこと。スジナシ史上初の大技が下手の入り口からやってきた。

「あのー、話、全部聞かせてもらいました」と現れたのは、確かに徳井だが、先ほどの荒れ狂ったキャラとは全く別の徳井がそこにいた。鶴瓶「???」わけの分からない鶴瓶に徳井が静かに口を開いた。「アキラの兄です」。

史上初、一人二役!

事情を聞こうとする徳井(アキラ兄)。鶴瓶は徳井の父に言われて、2人の様子を見に来たと告げる。だが、鶴瓶は徳井の父から、事情は全てアキラに伝えるように言われているので、アキラを呼んで来てくれないかとお願いする。ドラマとしては成立しているが、このままではコントの流れになると直感した徳井(アキラ兄)はやんわりと断る。しかし、そこは逃さない鶴瓶は尚も執拗にお願いする。「今更親父みたいな顔されても、僕ら会えると思いますか・・・」と言葉少なに再度断るが、「アキラさんが、アキラさんが、僕も間に入って辛い、アキラはカッとするから、アキラさんが、アキラさんが、どっかいったんですかね、アキラさん」とすごーくうるさいので、とうとう根負けした徳井は「わかりました、呼んで来ます」と観念した。

やったったー、という顔の鶴瓶のところへ「なんやー、まだおったんか!」とやってくる徳井(アキラ)。そこで全ての事情を話す鶴瓶。徳井の父はこのあたりを治めている親分で、門真から出てきて、歌舞伎町で店を出そうとしている徳井兄弟(アキラ兄弟)を影からサポートして、スムーズに開店させた経緯があるという。それを初めて知らされた徳井(アキラ)はこれまでの全てのことが腑に落ちたという。しかし同時に馬鹿にしとんのか!という怒りも沸いてきた。怒りがMAXとなった徳井(アキラ)に手が付けられないと判断した鶴瓶は冷静に話を進めるために、徳井(アキラ兄)を呼んで来てくれないかとお願いする。ドラマ的に十分成立している。しかし徳井(アキラ)と徳井(アキラ兄)。続けるとコント化する・・・。

「兄貴はええねん!」と当然のように突っぱねる。「情けない話や、親父見返そうとやってきて、全部親父の手のひらの上か!あのおっさんどこまでコケにすんねん!」とドラマを続けるが、お兄さんに会いたい、お兄さんを呼べの一点張りの鶴瓶に、コントモードを受け入れ徳井(アキラ)が去る。そして徳井(アキラ兄)が再登場。

「そういうことだったんですか・・・」

もうOKです。

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