今までの公演
#250 |
中村扇雀 「保険金」 |
今回のゲストは番組初の歌舞伎役者、中村扇雀さん。女形の芝居でも知られ、鶴瓶さんとは25年ほど前に舞台で共演して以来の仲であり、お互い手の内を知り尽くしているとも言える。また、父、坂田藤十郎、母、扇千景という名門中の名門出身でもある。設定は「不動産屋」。スタジオには町の小さな個人経営風の不動産店舗が作られた。
鶴瓶が所在なさげに座っているところに、浮かない顔で入ってきた中村。暗い表情の中村はソファのドスンと座り、「まただよ」と告げる。どうやらこの不景気であるマンションの入居者が続々と出て行ってしまっているらしい。鶴瓶はそのマンションを“自分がオーナーとして建てて、入居などの管理を中村にお願いしている”という芝居を始めたが、自分の芝居に集中してしまった中村の耳にはその台詞が入ってこないようで、鶴瓶と自分をこの不動産屋の共同経営者にしてしまう。いずれにしても、そのマンションも含め負債額も何億とあり、経営は行き詰まってしまっている。いくつか金策を考えるが、なかなか打開策も見つかない。すると中村が「俺ね、3億の生命保険入ってるんだよ」続けて「受取人はお前にしてあんだよ」と爆弾発言。受取人が鶴瓶・・・。すると鶴瓶も生命保険に入っていること、しかも受取人が中村であることを告げる。お互いに微妙な緊迫関係が生まれた。
お互い3億の保険金。しかも受取人が相手・・・。
どちらかに不幸な結末が訪れるのか・・・?
と、そこに中村から新たな展開がもたらされた。駅の向こうに出来た大手の不動産チェーン店から、この不動産屋の物件を預かってもいいという、買収の申し出があったらしい。今まで借金を棒引きにし、また新たなスタートが切れるかもしない。中村はこの申し出に希望の光を見出すが、鶴瓶は猛反対する。鶴瓶はあの大手チェーンのミツダという男にひどい目に合わされた過去があるらしい。今回の一件も彼が裏で糸を引いている可能性もあると断言する。鶴瓶が頑なに反対するのには、まだ別の理由があると踏んだ中村は、その隠された理由を聞き出そうとする。「そんな言いたない」とキッパリと断る鶴瓶。やはり何か秘密がある様子。そこで中村は厳しく追及する。
「かみさん?家?女?大阪で?こっち出てくる前?大阪で何かあったんだろ?言えよ!何隠してんだよ!!」速射砲の如く捲くし立てて、逆に鶴瓶の行く道を全て塞いでしまった。どこまでも前向きな中村は良かれと思い提案した道が、逆に道を遮断してしまったのだ。困った鶴瓶はその理由を言わない道を選んだ。というか選ぶしか無くなってしまった。
そして今度は先ほどの保険金受取人の展開から、中村の首を絞めて殺そうとしたが、どこまでも前向きな中村はこの鶴瓶の電波に気付かず、鶴瓶の背中(首を絞めやすくするために)を見せようとしない。
困った挙句、ラストの〆の台詞が飛び出した。
「あのな、俺これいうてしもたら、お前・・・死ぬことになるで・・・」
その一言で鶴瓶とミツダの間に深く黒い川が流れていることを知り、超前向きな中村ですら言葉を失ったのである。